オス犬の生殖器の病気として知られる「前立腺肥大」という病気。主に、細菌感染によって発症し、特に抵抗力のない高齢の猫が発症すると、なかなか治りにくい病気でもあります。今回は、あなたの愛猫も他人事ではない、「前立腺炎」について調べてみましょう。
前立腺炎とは
「前立腺炎」とは、細菌感染などが原因で、前立腺に炎症を引き起こす病気で、症状が悪化すると、動けないくらいの激しい痛みを伴います。
前立腺とは、猫の膀胱の真下に存在し、尿道を取り囲むようあるオスのみにある生殖器です。前立腺の役割としては、前立腺液を分泌し、精嚢から分泌された精嚢液を、精巣で作られた精子と混合して精液を作ったり、射精時には収縮したり、尿の排泄を手伝います。
前立腺炎を発症することで、様々な病気を併発し、やがて取り返しのつかない事態になるということも考えられますので、早期発見・早期治療が大切です。
それでは、前立腺炎について、症状や原因、予防法などを考えてみましょう。
前立腺炎の症状について
前立腺炎は、尿をするたびに痛ったり、尿が出にくくなる、発熱や嘔吐という症状から始まり、食欲不振や元気消失といった様子が見られます。また、激しい痛みによって、動くことが苦痛になるので、寝ていることが多くなります。その他に、下腹部を触られることも嫌がるようになります。
やがて、病状が進行すると、尿が濁ってきたり、血尿が見られたり、尿の臭いもきつくなってきます。そのまま放っておけば、「膀胱炎」や「前立腺膿瘍」を引き起こす可能性もあります。
「急性前立腺炎」を発症した場合、重度の症状が起こります。前立腺部分に激しい痛みを伴うため、背中を丸めてうずくまっているような様子が見られるので、飼い主さんも気付きやすいでしょう。しかし、「慢性前立腺炎」を発症した場合は、急性前立腺炎ほどの痛みを伴わないので、発見が遅れることもあります。
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前立腺炎により併発する病
前立腺炎を発症することで、他の病気を併発するリスクが高まります。その一つは、「膀胱炎」です。細菌感染などの要因によって、膀胱に炎症が起きてしまう泌尿器の病気です。
膀胱炎を発症することで、排尿の回数が増えたり、回数の割には尿の量が少ない・出ていないといった症状が見られ、膀胱炎の病状が進行していくと「尿道結石」や腎臓の病気を引き起こすきっかけとなりますので、注意が必要な病気です。
また、前立腺が化膿して膿が溜まってしまう、「前立腺膿瘍」という病気を発症することもあります。前立腺膿瘍は、放っておくと膿が溜まり過ぎたために、前立腺が破裂し、全身の血液に病原菌が分散して敗血症を引き起こすこともあり、最悪の場合命を落とすこともあります。
このような病気を併発させないためにも、早期発見・早期治療ができるように、日頃から愛猫の健康管理ついて観察しすることが重要です。
前立腺炎の原因について
前立腺炎の原因は、細菌が尿道から前立腺へ感染することで発症します。細菌による感染なので、年齢に関係なく感染しますが、老齢猫は若い猫に比べると抵抗力が落ちているため、特に発症しやすくなっています。
原因菌として多いのは、大腸菌、ブドウ球菌、ストレプトコッカス、プロテウス属、エンテロバクター属、ヘモフィラス属、シュードモナス属、パスツレラなどがあります。
基本的に、細菌が尿道から前立腺へ感染するのですが、稀に何らかの病原菌が血液に乗って全身を巡り、前立腺へ感染する血行感染や、膀胱内の尿や精液からの前立腺へ感染することもあります。
あまり考えられないですが、病院で何らかの治療を行った際に、偶発的に前立腺に細菌が入ってしまうことで、前立腺炎を発症してしまうことがあります。例えば、陰嚢に針を刺す手術の時や、尿道にカテーテル管を通す時などに、誤って細菌が入り込んでしまうなどです。
前立腺炎の治療について
前立腺炎の治療法は、検査で原因となる細菌を特定して、一番効果のある抗生物質を投与して治療を行います。
もし、前立腺膿瘍となって前立腺の症状が深刻化していたり、抗生物質で効果が見られず、症状が悪化している場合は、状況に応じて前立腺の摘出手術を行います。
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前立腺炎を予防するために
前立腺炎は、年齢関係なく発症する病気ですが、高齢猫が発症した場合、自然治癒力も下がりますので、病気が治りにくい体質になります。また、高齢期ともなると、外科手術が必要になった時、手術に耐えられるだけの体力があるのかも不安な点として懸念されるでしょう。必ず発症するわけではないにしろ、高齢期に発症し、外科手術を受けるリスクを考えるのであれば、若年期に去勢手術を行うことも考えても良いかもしれません。
去勢手術を行うことで、前立腺炎を予防できるだけではなく、生殖器系の様々な病気のリスクを減らすことが可能となります。生殖器系には前立腺のほか、睾丸の腫瘍といった病気もあるため、高齢期に備え、こうした病気のリスクを回避することも重要です。また、マーキングやスプレーなど、オスならではの発情期の異常行動を未然に防ぐことも可能となります。飼い猫が若年であれば、高齢期の予防策として、去勢手術を取り入れる事を一度、検討してみてはいかがでしょうか。
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