犬の健康管理に欠かせないフィラリアの予防接種ですが、非常に怖い寄生虫でもあるフィラリアの予防には、どういったことに気をかける必要があるのでしょうか?今回はフィラリアの予防接種の大切さについて解説します。

スポンサーリンク

「フィラリア症」とは

fotolia_51617786_xs-min
寄生虫の種類は様々なものが存在するものの、昔から犬を苦しめる寄生虫の代表と言えば「フィラリア」の名前が挙げられるでしょう。
このフィラリアという寄生虫は「犬糸状虫(いぬしじょうちゅう)」とも呼ばれており、成虫で約20cm前後ほどの大きさになります。
名前からもわかるように、犬が宿主となる寄生虫ですが、蚊を媒介して他の犬はもちろん、猫などにも寄生することがわかっています。
毎年、蚊の活動時期となる春先から秋にかけては、このフィラリア症に感染するリスクが高くなり、感染すると死に至る場合もあることから、昔からフィラリアの予防接種をするようにと言われ続けています
しかしながら、未だに予防接種を受けない飼い主もいるのも事実で、まだまだ予防接種の普及率も100%とはいえない状況です。

フィラリアのサイクル

フィラリアに感染するまでの経路には、犬を宿主としたフィラリアがミクロフィラリアを産むことから始まります。順をおっていくと、

【1】フィラリアに感染している犬の体内で、フィラリアの成虫が幼虫を産むことで、やがて犬の血液中へと幼虫が浮遊するようになります。この血中を浮遊する幼虫が「ミクロフィラリア」です。

【2】蚊が、このフィラリアに感染している犬の血液を吸うことで、ミクロフィラリアは蚊の体内へと活動の場を移します。蚊の体内で成長するミクロフィラリアは、10日程で脱皮をし、感染幼虫へと変わります。

【3】感染幼虫を持つ蚊が、他の犬の血を吸う事により、今度は蚊の体内から刺した犬の体内へと移動・感染し、フィラリア感染が発生するのです。

【4】その後、寄生してから肺動脈へと到達するのに、おおよそ3〜4ヶ月を要し、その後成虫へと成長します。成虫になると、またミクロフィラリアを産み血中へと浮遊。

【1】へと繰り返していきます。

フィラリアに感染するまで

フィラリアはこうしたサイクルを送り、徐々に感染を増やしていき、犬や猫などの命を奪っていくのです。この連鎖を食い止めるためにも、フィラリアの予防接種が大事になってくるのです。
特に、フィラリアに感染するタイミングとしては【2】の段階から【3】の段階です。根本的には犬が蚊に刺される事を食い止めるというよりかは、フィラリアに感染している犬を増やさない事が重要となります。仮に、すべての犬がフィラリアの予防接種を受けていれば、蚊に刺されてもフィラリアに感染するまでには至らないのです。
とはいえ、すべての犬がフィラリアの予防接種を受けているわけではありませんので、最低限の予防策としてフィラリアの予防接種を受けることが大事となり、さらには蚊にさされないような予防策をする必要があるのです。
フィラリアの予防接種を受けることで、【3】の段階で100%駆除することが可能となりますので、毎年必ず受けるようにしましょう。

フィラリア症の症状とは

フィラリア症の症状ですが、犬がフィラリアに感染した場合、初期症状が非常にわかりにくいために気が付かない事も多いようです。
特徴としては、咳が出始める・呼吸が苦しそうといった器官系の症状から、食欲の減退や元気の減退といった症状が見られます。
この時点では、ちょっとした症状にはなりますので、あまり気が付かないのも無理はありません。
さらに症状が進むと、お腹が膨らむ(腹水)といった見た目の症状から、おしっこが赤くなってくるといった症状があらわれはじめます。
この時点になると、様子がおかしいと感じ始めるでしょう。やがて、喀血や失神を起こしたりと、次第の病状がひどくなってきます。
この状態に入ると、フィラリアの成虫を摘出するための外科手術が必要になります。
フィラリアは犬の心臓に寄生してから約5〜6年もの間生存し続けます。
この間に慢性的な咳などで苦しめられる事となり、また、寄生するフィラリアの数が多ければ、血管が塞がれることになり、肺動脈が詰まることで急死する恐れも出てきます。

フィラリアの治療について

フィラリア症の治療はまず、フィラリアの数をはかるために「抗原検査」が行われます。
また、症状の状態によって「慢性フィラリア症」と「急性フィラリア症」に分けられます。
急性の場合は、状態を放おっておくと数日で死に至る事が多くなるでしょう。
この場合は、外科手術によってフィラリア成虫を摘出する手術となりますが、外科手術が状態によって難しいと判断されれば、薬剤の投与による治療になるでしょう。
しかし、薬剤の投与による治療で、急激にフィラリアを死滅させてしまった場合、肺動脈などを詰まらせてしまう恐れもあるため、慎重な投与が必要になります。
慢性の場合、フィラリア症を発症することで他の臓器にも影響を受け、肝臓や腎臓といった臓器に異変を来す場合が多く、フィラリア症のみならず、こうした病気を併発することで死に至る事となります。
いずれの場合も、早期発見・早期治療が望まれますが、フィラリア症にならないためには、フィラリアの予防接種が一番の予防策となります。

フィラリアの予防接種


フィラリア症は、手遅れの状態になる前に「フィラリア予防薬」によって簡単に防ぐことができる寄生虫です。また、病院によって若干の変動はあるものの、金額的にもそこまで高くはない金額で受けられますので、蚊が活動し始めるシーズンには、必ず接種するようにしましょう。
かかりつけの病院があれば、毎年はがき等が送られてきますし、かかりつけ医がいなければ、近くの病院に行って接種するタイミングを確認してみましょう。具体的には、蚊が活発になるタイミングに合わせて毎月投与する形になりますが、住んでいる地域によってもその時期は変わります。
このように、日本全国で予防接種のタイミングは一律というわけではありませんので、住んでいる地域や気候などを知ることも、愛犬の健康管理には欠かせない要素でもあるのです。

沖縄と北海道ではタイミングもまるで違います

日本の一番北に位置する北海道と、一番南に位置する沖縄。北海道と沖縄ではフィラリアの予防接種のタイミングに、どのような違いがあるのでしょうか。
蚊が最も活発に動き出すと言われているのが、気温15℃以上と言われています。そのため、気温が15℃に達する頃には、フィラリアの予防接種を打っておきたいところです。
沖縄の年間平均気温は23℃ほど。15℃を下回るということは稀ですので、沖縄に関しては1年中を通して蚊が活発に活動しているということになります。そのため、沖縄は年中フィラリアの予防接種を受けておく必要があるのです。
一方、北海道に関しては年間平均気温が8℃〜9℃。気温が15℃に到達するのが6月頃となるため、フィラリアの予防接種を打つタイミングとしては7月〜11月が最適となります。

フィラリアに感染する確率について

上記以外の地域に関しては、だいたいが5月〜12月が予防接種に最適なタイミングとなっていますので、再度、お住いの地域の接種タイミングを知っておくようにしましょう。
また、地域以外にも、お住いの地域の気候や自然環境によっても違ってきます。例えば、森林が多い地域もあれば、都市部の地域もあると思いますが、蚊が生息できる環境が整っていれば、気温にかかわらず生息している確率は高いのです。
一般的には都市部ではフィラリアの発症率が低いと言われておりますが、油断はできません。蚊の発生率が高い都市部周辺で調べられたある調査では、フィラリアの予防接種を行わずにいると、1年目の夏には4割程の感染率ですが、3年目を迎える頃には9割もの犬がフィラリアに感染するというデータも出ているのです。

フィラリアの予防接種の種類

前述の通り、フィラリアの感染は飼い主さん一人ひとりの対策が、すべての犬を助ける事にもつながるため、フィラリアの予防接種は非常に大切な事だということがわかりました。
そんなフィラリアの予防接種ですが、年一回の予防接種で済む「注射タイプ」や、お菓子を食べさせる事で予防接種ができる「チュアブルタイプ」、背中に液体を垂らすスポットタイプなど、様々なフィラリアの駆虫薬が開発されています。
予防接種と言っても、実はフィラリアの予防接種は「駆虫薬」であり、フィラリアを予防するものではなく、フィラリアを駆虫する目的のものとなります。ですので、あくまでもフィラリアの予防接種とは、万が一フィラリアが寄生していた場合の駆虫を行う薬なのです。

フィラリアの予防接種の与え方

フィラリアの駆虫薬の与え方ですが、一般的には蚊が活発に活動しているタイミングの月は毎月の投与となり、さらにその後にダメ押しの1ヶ月分を投与するといった形で予防接種をしますが、薬のタイプなどによってはその限りではありません。
予防注射であれば、年に1回の接種で済むため、薬の与え忘れもなく安心して1年を過ごすことができますが、中には注射を嫌がる犬もいるため、チュアブルタイプなどの薬も存在しています。また、効能に関しても年中は必要ないという地域もありますので、適正、薬を選択することとなるでしょう。
使用する薬については難しいことを考えず、動物病院の先生とよく話し合って、最適だと思われる予防薬を投与するようにしましょう。

犬の健康管理に欠かせない?【フィラリアの予防接種について!】のまとめ


私達も室内で寝ている時に蚊に刺されるように、たとえ、自宅内にいても夏場は安心ができません。その上、散歩やレジャー、キャンプ、ドッグランなど、犬とともに遊びに行ける場所はたくさんあります。このような場所にも必ず蚊はいますし、フィラリアに感染するリスクも0ではありません。
また、庭先などの「水たまり」ができる場所も気をつけましょう。根本的に蚊を繁殖させないような対策も必要になりますので、こういった蚊が繁殖しやすい場所は、極力無くすようにするのが安心です。こうした場所があると、蚊の活動期を過ぎてもなお、繁殖する可能性もありますので、できるだけ減らすようにしましょう。
毎年、しっかりと予防接種を受け、こういった蚊の繁殖しそうな場所を減らしていくだけでも、フィラリアに感染するリスクは低くなります。
楽しい夏を過ごせるようにするためにも、予防接種は確実に受けるようにしましょう。

スポンサーリンク