犬の膝の「前十字靭帯断裂」とは、大腿骨と脛骨を繋ぐ靭帯が、何らかの理由によって断裂してしまう病気です。今回は、あなたの愛犬も他人事ではない、「前十字靭帯断裂」について、症状や治療法、予防や対策などを調べてみましょう。
膝の前十字靱帯断裂とは
犬の膝には、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(スネ)を繋ぐ太い靱帯が5つありますが、この中の1つである、膝の中で十字に交差している靱帯が「前十字靱帯」と言います。この前十字靱帯は、脛骨が大腿骨よりも前へ飛び出さないようにしたり、内側へねじらないようにする働きがあります。
その前十字靱帯が、何らかが原因となって、部分的に切れてしまったり、完全に断裂してしまったことを「膝の前十字靱帯断裂」と言います。小型犬から大型犬まで犬の大きさ問わず発症する病気で、老化や肥満が原因となることが多く、発症すると、後ろ足を上げた状態で歩いたり、引きずって歩くなどの症状が現れます。
それでは、今回は、「膝の前十字靱帯断裂」について、症状や原因、対策などを解説していきましょう。
膝の前十字靱帯断裂の症状について
膝の前十字靱帯断裂の症状には、大きく分けて「急性断裂」と「慢性断裂」があります。基本的には、「急性断裂」が重症化してしまったものが、「慢性断裂」と考えても良いかもしれません。
「急性断裂」では、膝に痛みが伴うため、後ろ足を上げたままケンケンして歩いたり、後ろ足を地面に付けなくなったり、痛い方の足に体重をかけなくなるなどの様子が見られるようになります。
しかし、数日すると痛みが引いてしまうことがあり、一見すると症状は落ち着いたように見えるでしょう。ただし、実際にはこうした症状の再発を繰り返すようになり、そのまま放って置くと慢性化してしまいます。
さらに、部分的に切れていた靱帯は、完全に断裂してしまうこともあります。こうした状態になってしまったものを「慢性断裂」と言います。
激しい痛みを伴う前十字靱帯断裂の慢性断裂
完全に前十字靱帯が慢性断裂してしまった場合には、急性断裂でみられたような、足を引きずるような症状の他にも、立ったり座ったりと言った基本的な動作でさえ、痛みを伴うようになってしまうため、その様子も辛く見えるでしょう。
そして、次第に膝の半月板が損傷するなどして、激しい痛みを伴うようになります。愛犬の体型が肥満気味の子は、こうした症状の他にも「変形性骨関節症」を併発し、さらに症状が悪化することがあります。
膝の前十字靱帯断裂は愛犬の体型とも関係しているものであり、肥満体型の犬に多く見られる病気の一つでもあるのです。そのため、日頃からのボディーチェックや、食事の管理が大切になってくるのです。併発による変形性骨関節症とはどのような症状なのでしょうか。
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変形性骨関節症とは
変形性骨関節症とは、関節が変形することで痛みが生じる病気で、何らかの疾患が原因で、二次的に発症することが多い病気です。例えば、「股関節形成不全」や「膝蓋骨脱臼」などの遺伝的な骨や関節の疾患、「前十字靱帯断裂」などの外傷性の関節の疾患、他にも老化や肥満が原因となって発症することもあります。
変形性骨関節症を発症すると、犬が歩きたがらなくなったり、階段の昇り降りを避けたりといった様子が見られるようになります。また、足を引きずって歩く、座り方が不自然になるといった症状も現れます。こうした症状に合わせて、痛みや腫れも伴うようになります。
膝の前十字靱帯断裂の原因とは
前十字靱帯は、脛骨が大腿骨よりも前へ飛び出さないようにしたり、脛骨が内側へねじらないようにする働きがありますので、膝を勢いよく伸ばして膝に強い負荷がかかったり、激しく膝をねじったりすることで靱帯に損傷を受けます。
例えば、高い所からの落下や事故、他にも、走っている時に、急激なターンやダッシュを繰り返すことで発症することもあります。
その他にも、老化によって劣化した靱帯に急激な負荷がかかったり、肥満の場合も、膝関節に大きな負担がかかっていますので、膝の前十字靱帯断裂を引き起こしやすくなる原因となります。
肥満による膝への負担
膝の前十字靱帯断裂は激しい運動を行う事でも負担がかかることですが、何よりも肥満体型による日頃の膝への負担が、膝の前十字靱帯断裂を引き起こしています。
肥満は膝の前十字靱帯断裂に限らず、様々な病気を引き起こすものです。内臓疾患などもこの内ですが、何よりも膝の前十字靱帯断裂などを引き起こしてしまうと、十分な運動も行うことができなくなってくるため、より一層に体や内臓への負担が増してきてしまうのです。
食事の管理に加えて、適正な運動を行うことが出来ればダイエットも効率よく行うことが出来ますが、膝の前十字靱帯断裂を引き起こしてしまうとそうは行きません。日頃からの体重管理や食事の管理が、いかに大切かがわかります。
膝の前十字靱帯断裂の好発犬種とは
膝の前十字靱帯断裂の好発犬種は、「ゴールデン・レトリバー」「ラブラドール・レトリバー」「バーニーズ・マウンテンドッグ」「ロットワイラー」「ビーグル」「ウェルシュ・コーギー」「ミニチュア・ダックス」などの、小型犬から大型犬まで大きさ問わず発症することが多いようです。
その他にも、「膝蓋骨脱臼」を発症している子が、膝の前十字靱帯断裂を併発することがありますので、「トイ・プードル」「ヨークシャ・テリア」「ポメラニアン」「チワワ」「マルチーズ」などの、膝蓋骨脱臼を好発する犬種も注意が必要と言えるでしょう。
膝の前十字靱帯断裂の治療について
膝の前十字靱帯断裂を発症した子の体重や年齢、症状や経過、普段の運動量によっても治療法が変わってきます。10kg以上の中型犬や大型犬、内科的治療で改善されなかった場合は、外科手術で靱帯を再建する手術や、人工靱帯を関節の外に取り付ける手術など、症状に適した治療を行います。
10kg以下の比較的運動量が少ない子や、外科手術に対応できないような高齢犬の場合は、痛み止めの鎮痛剤や抗炎症剤の投薬治療を行い、運動制限や体重制限をしながら、安静にして様子を見るという内科的治療が行われます。
小型犬の場合は、この方法で症状が緩和され、運動機能が回復することが多いようですが、改善されない場合は、外科手術を行います。
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膝の前十字靱帯断裂の手術について
前十字靱帯断裂の外科手術に関してはいくつかの方法がありますが、前述の通り、人工靭帯を使うことで前十字靱帯を作り直す方法の他にも、他の靭帯を使って作り直す方法などもあります。
この他、靭帯の代わりとなるものを関節の外側から装着することで、関節を安定させると言った方法もあります。そして、骨を変形させて固定すると言う方法もあり、大腿骨のズレを防ぐために脛骨を変形させ、大腿骨のズレを固定する方法も。
こうした方法は、愛犬の症状や患部の状態によっても変わるものですが、ケースバイケースで術式も変わり、それぞれにメリットやデメリットを含んでいる事を理解しておきましょう。外科手術も日々、進化していっていますので、こうした術式よりも更にデメリットの少ない方法も、徐々に開発されていっているのです。
膝の前十字靱帯断裂の予防と対策について
膝の前十字靱帯断裂の予防と対策に関しては、飛んだり、跳ねたりなどの激しい運動を避けることや、関節に負担をかけないために、肥満に気を付けるなどの愛犬の体重管理を行うことが大切です。
また、フローリングのような滑る床は膝に負担がかかりますので、カーペットを敷くなどの生活環境を見直すことも飼い主さんの大事な役割となるでしょう。
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