オス犬の「停留睾丸」という症状。病気ではありませんが、将来的に腫瘍になるリスクもある症状なので、オス犬を飼っている方は、オス犬の体の作りと停留睾丸について、少し理解を深めてみても良いかもしれません。

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「停留睾丸」とは?

オス犬に起きる症状の一つに「停留睾丸(ていりゅうこうがん)」という症状があります。この停留睾丸は、主に子犬の時期に判明するものですが、生殖器にある、いわゆる「たまたま(睾丸)」が、「陰嚢(いんのう)」に降りてきていない状態の事を指します。

通常であれば、生後30日前後には陰嚢内に降りてくるはずの睾丸ですが、何らかの理由で睾丸が降りてこないことはまれにあり、実は珍しい症状でもないのがこの「停留睾丸」、もしくは「睾丸停留(こうがんていりゅう)」です。人間でも、「片玉」と呼ばれているものが、この停留睾丸です。

また、片側の場合や両方降りてこない場合もあり、生後8ヶ月頃までに停留睾丸の状態が続いていると、その後は睾丸が降りてくる可能性も低いと言われています。見た目にはすぐにわからない場合も多いため、そのままになってしまいがちですが、停留睾丸である場合、精巣腫瘍になりやすいという事が判明しています。その確率も、実に10倍以上とも言われています。

停留睾丸だと、精巣腫瘍になりやすい理由とは

では、なぜ停留睾丸だと精巣腫瘍になる確率が高いのでしょうか。それには、睾丸が「降りる」理由に関係しています。睾丸の中には「精巣」と呼ばれる「精子」を蓄える場所がありますが、この精子は熱に弱いため、体内ではなく陰嚢(いわゆる袋)へと降りていきます。
この陰嚢は体内ではなく、外に出ている形になるので、体内よりかは幾分温度も低い状態に保てるという理由です。

ところが、停留睾丸の場合には、陰嚢に降りてこれなかった睾丸が体内にあるため、陰嚢に降りている場合よりも精巣内は高い体温に置かれているわけです。そのため、精子を作り出す機能は徐々に弱っていき、繁殖能力は無くなっていってしまいます。(片方だけ降りている場合には、完全に無くなるわけではないようです)

そして、やがてはこの精巣が通常の温度ではなく、高い温度であり続けてしまうために、精巣腫瘍を引き起こす可能性が高くなってしまうのです。

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命の危険もある精巣腫瘍

精巣腫瘍の原因に挙げられる細胞の種類には、「セルトリ細胞腫」「精上皮腫(セミノーマ)」「間質細胞腫」の3種が挙げられており、この内、特に停留睾丸によって精巣腫瘍を引き起こす割合が高いのが「セルトリ細胞腫」です。

簡単に説明すると「セルトリ細胞腫」とは、腫瘍化した細胞から女性ホルモンを多く分泌してしまうために発症し、女性ホルモンの作用が働いてしまうために精巣内の萎縮等の症状が起き、体内に残された睾丸には肥大が起きるために、他の組織も圧迫していってしまうのです。

また、腫瘍はリンパ等にも転移してしまうため、早期に発見し摘出しなければ、非常に危険な状態になるでしょう。老犬に多く発症が認められるので、高齢期のオス犬で停留睾丸である場合には注意が必要になります。

停留睾丸は何故起きるのか

停留睾丸は、遺伝性の症状であることが指摘されています。そのため、停留睾丸であった犬を繁殖に利用するのは危険が伴うでしょう。前述の通り、片側だけ降りてきている場合には、繁殖することも可能なので、繁殖を考えている場合には注意が必要です。

停留睾丸が遺伝的に多いと言われている犬種には「チワワ」「ポメラニアン」「ミニチュア・シュナウザー」「ジャーマン・シェパード」「ボクサー」が挙げられます。また、精巣腫瘍の好発犬種には「トイ・プードル」「ポメラニアン」「ヨークシャー・テリア」が挙げられます。

これらの犬種は特にですが、子犬の時期、遅くとも半年過ぎには睾丸がちゃんと降りてきているかの確認をするようにし、実際に触診して確かめてみるようにしましょう。

停留睾丸の対処法について

では、実際に停留睾丸である場合にはどのような対処法が取られるのでしょうか。初めにも書きましたが、通常であれば生後1ヶ月〜1ヶ月半頃には睾丸も陰嚢へと降りてきています。この時期から心配するのはちょっと早い気もしますが、半年が過ぎても触診して睾丸が確認できない場合には、予め動物病院の先生に相談しておくようにしましょう。

また、同時に考えておきたいのが「去勢手術」について。将来的に繁殖を考えていないのであれば、病気のリスクを下げるためにも去勢手術を考えてみても良いかもしれません。というのも、去勢手術の適正時期は半年〜1歳頃。また、停留睾丸で手術を行うとしても半年〜が理想とされています。

いずれにしても半年まではどうにもできないですし、半年の時点では、必ず睾丸が降りてこないかというと絶対ではありません。そのため、早くに見つけても慌てる必要は無いでしょう。また、停留睾丸であった場合でも、必ず精巣腫瘍になるかというと、そうではありません。あくまでもリスクが高くなるという事と、腫瘍化する多くは高齢期であることがわかっています。

ですので、半年を過ぎても降りてきていない場合には、病院の先生と相談しつつ、状態を見守るようにしましょう。8ヶ月を過ぎた辺りでも降りてこない場合には、去勢手術を行うかどうかという選択に変わってくるので、それまでにはしっかりとした考えを持っておくと良いでしょう。とはいえ、病気のリスクを考えると、去勢手術を行ったほうが安心ではありますね。

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