犬の「糸球体腎炎」という病気。症状がわかりにくく、発見が遅れがちです。初期の症状にはタンパク尿が認められますが、軽度である場合にはまだまだ判断がつきにくい病気です。今回はこの糸球体腎炎の症状と予防策について調べてみました。

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無症状でわかりにくい「糸球体腎炎」


一見、無症状なので病気になっているのかが非常にわかりにくい「糸球体腎炎(しきゅうたいじんえん)」と呼ばれる病気。初期症状も軽度なので、病気と気がつくまでは時間がかかるかもしれませんが、症状が悪化してくると腎臓にダメージを与えてしまう病気なので、注意が必要な病気でもあります。

腎臓は一度ダメージを受けてしまうと、元通りに再生することが出来ない臓器のため、状態が深刻化してしまうと「急性腎不全」や「慢性腎不全」の症状も見られるようになります。では、まずは「糸球体腎炎」を発症してしまった場合に見られる症状について見てみましょう。

糸球体腎炎の症状について

糸球体腎炎の症状には「尿の量が減少する」事や「尿が出にくくなる」、もしくは「多尿になる」といった症状に加え、「元気が無くなる」「嘔吐」「体重が落ちる」「食欲の低下」「むくみが見られる」「脱水症状になる」といった症状が見られるようになります。

この中でも、初期の症状にあたるのが「たんぱく尿」が出る症状です。犬の糸球体腎炎の最大の特徴となるのがこのたんぱく尿なのですが、たんぱく尿が見られても軽度である場合には糸球体腎炎とは認められない事もあります。

通常であればタンパク質は、腎臓で濾過されるために尿中にはあまりタンパク質が見られませんが、腎臓の機能が正常ではない場合に、タンパク質が尿中に混ざってしまうのです。

日頃の観察をしっかりと

糸球体腎炎の初期症状に挙げられるたんぱく尿ですが、激しい運動や体調が回復したばかりの時にもタンパク尿が増えたりと、体のちょっとした変化でもタンパク尿が認められるため、タンパク尿が認められたからとすぐに病気だと疑うのは難しい判断になります。

また、タンパク尿は糸球体腎炎以外にも、肝臓の病気「ネフローゼ症候群」や「糖尿病」等の腎臓の病気にも見られる症状のため、糸球体腎炎とすぐに判断することが難しいのです。

まずは日頃の食事の状態、運動量、愛犬の状態をしっかりと観察し、平常時と異なる行動はなかったかどうかを確認することが大切です。そのためには、日頃から愛犬をしっかりと観察しておくことも大切になってくるわけです。

糸球体腎炎の症状が悪化すると

糸球体腎炎が悪化してくると、「腹水」が見られたり、血液の巡りが悪くなってしまうために「血栓」ができやすくなります。その結果、血の塊が血管に詰まって血流障害を引き起こす「血栓塞栓症」を発症する事もあります。

血栓塞栓症を発症してしまうと、手や足などに麻痺が起きてしまったり、場合によっては命の危険も伴う事にもなりかねません。この他、高血圧の状態になるために「眼底出血」や「網膜剥離」といった症状も見られるようになり、場合によっては失明する可能性もあります。

腎臓のトラブルは1つダメージを受けると、次々とダメージが連鎖していってしまい、腎臓以外のトラブルを引き起こしてしまう場合もあるのです。

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糸球体腎炎を予防するためには日頃のケアが重要


糸球体腎炎が悪化すると上記に挙げた病気の他にも、「急性腎不全」もしくは「慢性腎不全」を引き起こす場合もあり、これらの病気を発症した場合にはより深刻な事態になるでしょう。

前述の通り、腎臓は一度ダメージを受けると完治することはありません。糸球体腎炎から引き起こされた腎不全をきっかけに、さらに様々な病気を併発する可能性も出てきてしまうのです。

糸球体腎炎の症状はゆっくりと進行していくために、悪化している状態に気が付かずにこうした症状を発症してしまうこともあるのです。再三繰り返すようですが、糸球体腎炎を予防するためには日頃から愛犬の状態を把握できるようにする必要があります。

では具体的に、どういった点に注意を行えばよいかを見てみましょう。

糸球体腎炎を予防するには

糸球体腎炎の症状を見つけるには、日頃から愛犬の尿の状態を把握することにあります。

ペットシーツ等でおしっこをする犬であれば、尿の色も把握し易いですが、散歩中におしっこをする犬であれば、尿の回数等で把握するようにしましょう。いつもの尿の色に比べ、濃い色、もしくは薄い色が続いているようであれば、用心が必要になるかもしれません。

また、一番効果的となるのが動物病院による「定期検診」でしょう。尿の濃度を計ることもそうですが、この糸球体腎炎という病気は感染症から引き起こされる場合も多いようです。

ですので、1年に1回の混合ワクチンは、非常に重要なものとなります。中でも特にあげられるのが「フィラリア症」や「ライム病」といった感染症。こうした感染症は予防接種で未然に防ぐ事が出来ますので必ず接種するようにしましょう。

糸球体腎炎の原因とは

残念ながら糸球体腎炎を発症する明確な原因は、未だに解明されていません。しかし、上記に挙げたような感染症や、「子宮蓄膿症」「クッシング症候群」「リンパ球性白血病」「膵炎」などの病気からも、糸球体腎炎を発症するということがわかっています。

また、遺伝によるものと考えられている事もあり、好発犬種には「サモエド」「イングリッシュコッカースパニエル」「ブルテリア」「ドーベルマン」「ロットワイラー」「ゴールデンレトリバー」「ミニチュアシュナウザー」「ミニチュアダックスフンド」といった犬種が挙げられます。

まだまだ解明が急がれますが、6歳〜7歳に好発するということも指摘されておりますが、感染症や他の病気からの併発も考えられるため、一概にこの年齢での発症と断定できるわけではありません。

糸球体腎炎の治療について

糸球体腎炎の治療に関しては、まずは元となる病気の治療が急がれます。また、糸球体腎炎を発症したことで進行してしまっている病気への対処療法も行われます。

血栓塞栓症などの病気がある場合には、血栓を溶かす治療が行われたり、ホルモン剤の投与を行ったりという治療が施されるでしょう。また、犬の体力を維持するために、タンパク質を避けた食事や栄養補給も必要になってきます。

糸球体腎炎の治療に関してはこれといった方法ではなく、まずは糸球体腎炎を発症させている根本を突き止め、その原因を治療していかなければなりません。原因を特定できなければ、いつまでも糸球体腎炎の症状を食い止めることは出来ませんので、第一に病院で検査を行い、原因の特定を急ぐようにします。

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糸球体腎炎と食事療法


糸球体腎炎を予防・治療するためには食事療法も有効的な手段となります。まずは日頃から与えているドッグフードの成分を確認してみましょう。

糸球体腎炎をはじめ、腎臓のトラブルを引き起こした時には「リン」「ナトリウム」「タンパク質」の量に注意する必要があります。40%を超えるような高タンパク質すぎるドッグフードは腎臓にも負担をかけてしまいますので、ドッグフードを切り替えてあげる必要があるでしょう。

また実際に糸球体腎炎を引き起こしているようであれば、動物病院で販売されている療法食を選択するのがベストと言えるでしょう。療法食は様々な病気に合わせた種類がありますので、獣医師から提案、もしくは確認してみると良いでしょう。

ステロイドが要因となるケースも

アレルギー性皮膚炎の治療や胃腸炎、腫瘍など何かしらの治療でステロイドを処方され、服用する場合がありますが、このステロイド剤が腎臓に負担を掛ける場合もあります。

ステロイドは副作用があり、長期間ステロイドを服用箚せ無ければならない時は特に注意が必要なのですが、基本的には指示された服用回数を厳守していれば問題はありません。しかし、素人判断でステロイド剤を服用させているようであれば要注意です。

中には腎臓の疾患で知られる「クッシング症候群」を引き起こす場合がありますが、この場合には「医原性」と呼ばれる状態で、ステロイドの服用を減らすことで症状を緩和させることが出来ます。

クッシング症候群から糸球体腎炎を引き起こす場合もありますので、間接的とは言え注意が必要ではあります。

まとめ

じわじわと進行していく糸球体腎炎。明確な原因もわからないため、まずは日頃からの健康維持、予防接種が大事になってくるでしょう。

また、極端にタンパク質に偏った食生活も危険が伴うでしょう。バランスの取れた食事を心がけるようにし、日頃からの愛犬の尿チェックも欠かさないようにしましょう。

大切なのは免疫力の維持や健康的な生活を送らせることです。ストレスの少ない生活を送らせ、健康的な食生活を心がけること、適切な運動を行い丈夫な体を維持すること。これだけでも糸球体腎炎だけでなく、多くの病気を予防することに繋がります。

日頃からの健康管理はいざという時にも病気に対して有効な対抗策となります。常に健康状態を意識し、病気を予防・病気と戦う体力をつけておくことが大切です。

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