「麻薬探知犬」は、優れた嗅覚を利用し、厳しい訓練をくぐり抜けてこなければならない、非常に名誉ある犬の仕事の一つです。海外からの密輸や、犯罪を未然に根絶するために活躍する「麻薬探知犬」。今回はこの麻薬探知犬の始まりと、訓練について調べてみました。

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麻薬探知犬の仕事

空港や港等では、密輸などの犯罪や違法薬物の摘発を行うために「麻薬探知犬」が活躍していることをご存知でしょうか。麻薬探知犬は、カバンなどに隠されている麻薬の臭いを探知して、国内へと密輸されるのを未然に防ぐのに大きく貢献しています。

麻薬探知犬の仕事は、犬の持つ優れた嗅覚を利用した仕事の一つで、こうして犬の嗅覚を利用した仕事には麻薬探知の他にも「爆発物探知犬」や「銃器探知犬」「ガン探知犬」等の仕事も存在します。このように犬の習性を利用した仕事は、現在では多岐にわたるものです。

国内での麻薬探知犬は「ジャーマン・シェパード」や「ラブラドール・レトリバー」、「ゴールデン・レトリバー」「フラットコーテッド・レトリバー」等の犬種が活躍していますが、海外では「ビーグル」などの犬種が活躍しています。

国内初の麻薬探知犬「シェリー」

麻薬探知犬が初めて日本に配属されたのは昭和54年(1979年)のこと。1911年にオランダが導入し始めてから、各国でも麻薬探知犬の導入が進められていましたが、日本ではアメリカから導入された2頭の麻薬探知犬を皮切りに、翌年の昭和55年9月から国内での麻薬探知犬育成が始まりました。その翌年になる昭和56年4月には、国内初の麻薬探知犬第一号となる「シェリー」号が誕生しました。現在では日本の各地域の税関に麻薬探知犬が導入され、全国で約120頭の麻薬探知犬が活躍しています。

国内初の麻薬探知犬となった「ジャーマン・シェパード」の名犬シェリーは「奇跡の名犬」とも称され、数々の書籍や絵本にも描かれるなど、その生い立ちや活躍が注目されましたが、その理由には、元の飼い主が引っ越しのためにシェリーを手放すこととなり、保健所に送られる寸前に税関職員が引き取った事から、シェリーの麻薬探知犬としての活動が始まったという事が挙げられます。

シェリーは臆病な性格の犬だったようですが、昭和56年4月には日本初の麻薬探知犬となる快挙を成し遂げ、翌月の5月には2件の麻薬密輸を摘発するなど、生い立ちからのサクセスストーリーのみならず、実際の実務でも大活躍していたのでした。麻薬探知犬の引退はおよそ8歳前後となりますが、シェリーも7歳の頃に白内障を発症して引退、昭和62年12月にその生涯を閉じることとなりました。

現在でも続々とシェリーの後輩犬たちが輩出され、全国の税関などで活躍しています。

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訓練法と「麻薬の匂い」

一説で、麻薬探知犬は麻薬の臭いを嗅ぐために麻薬中毒となってしまい、麻薬欲しさに探知をしているという話や、麻薬中毒であるから寿命も短いという話があります。こうした話は全くのデマで、全く麻薬探知犬の事を理解していません。麻薬探知犬は、麻薬の臭いを覚えて探知しますが、麻薬中毒になることはありません。麻薬探知犬が必死に探すのは麻薬ではあるものの、「ダミー」と呼んでいるおもちゃなのです。

このダミーは、麻薬の匂いを付けたタオルをまいた物(麻薬探知犬にとっては玩具のひとつ)で、訓練の過程でこのダミーを使います。ダミーを発見した麻薬探知犬は、ハンドラーと呼ばれる訓練士さんにたくさん褒められます。麻薬探知犬は、ダミーを発見するとたくさん褒められるという楽しい体験に変わり、たくさん褒めてもらいたいからダミーを探します。このように、麻薬探知犬の訓練では「ダミー=麻薬の匂い」を結びつける訓練を行うのです。

麻薬中毒になって麻薬を探しているのではなく、麻薬探知犬は「おもちゃ」を探して、ハンドラーに「褒めてもらいたい」という欲求で探知を行っているので、麻薬探知犬にとっての麻薬探知は「楽しい遊び」の一つになっているんですね。また、麻薬探知犬が見つけられるのは麻薬だけにとどまらず、「覚醒剤」「ヘロイン」「コカイン」といった、麻薬よりも臭いの少ない物も訓練の中に入っています。これらも同じく、中毒で探すのではなく「遊び」の一つとして探知しています。

2種類の麻薬探知犬

麻薬探知犬は「パッシブドッグ」と「アグレッシブドッグ」の2種に分けられます。この2種は同じ麻薬探知犬でありながら、全く別の方法で麻薬の発見を知らせます。

「アグレッシブドッグ」は、英語の「アグレッシブ=積極的」からきており、麻薬の臭いを探知すると引っ掻いたり攻撃の姿勢を見せて、ハンドラーに知らせます。
一方の「パッシブドッグ」は、麻薬の臭いを探知するとその場に座り込み、ハンドラーにここにあるよと知らせます。

パッシブドッグは軍用犬などに用いられていた訓練法で、アグレッシブドッグだと爆発物などを引っ掻いてしまうと危険なため、パッシブドッグが導入されました。麻薬探知犬では、貨物の探知だけでなく、通行人や旅行客のカバンやポケットの臭いも探知するため、人間に危害を加えないようにパッシブドッグが使われているのです。

まとめ

麻薬探知犬は、盲導犬のように私達の身近な存在ではありませんが、私達の目の届かない所で、日本の安全や治安を守る、大事な仕事を行っているのです。まだまだ知らない部分も多い麻薬探知犬の仕事ですが、昨今では様々な事件も起きています。こうした事件を未然に防ぐためにも、これからも麻薬探知犬たちの力を借りていくこととなります。

決して身近な存在ではない麻薬探知犬の仕事ですが、私達も、こうした犬たちの存在や仕事を理解し、応援していきたいですね。

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