猫の健康管理で欠かせない、病気への予防や対策のひとつに挙げられる「フィラリア」の予防接種。一昔前では、犬の病気として知られていましたが、近年では猫のフィラリア症も油断できない状況です。今回はフィラリアの予防接種の大切さについて解説します。

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「猫フィラリア症」とは

犬のイメージも強い「フィラリア症」ですが、猫にもフィラリアは寄生します。ちなみに、犬のフィラリア症の場合は「犬フィラリア症」と呼ばれ、猫の場合は「猫フィラリア症」と呼ばれます。
あまり猫とフィラリアのイメージが結びつかないかもしれませんが、2010年の報告では、実に10頭に1頭が猫フィラリア症を発症しているというデータも出ているのです。
また、猫の場合は感染しても無症状、もしくは突然死してしまうという場合もあるため、犬に比べ発見が遅れる・発見することができない事が多いために、あまり理解が広がっていないのかもしれません。

フィラリアの検査について


猫がフィラリアに感染しているかを確認するためには、「抗原検査」が行われます。しかし、猫フィラリア症の場合、抗原検査にかけても発見することが非常に困難だと言われています。それは何故なのでしょうか。
犬に感染した場合は、フィラリアが増殖するために、抗原検査で90%以上の確率でフィラリアを発見することが可能となります。
ところが、猫に寄生するフィラリアは1匹前後と非常に少なく、抗原検査を行っても1匹前後となると、発見することが非常に困難となります。
このため、抗原検査以外にも「ミクロフィラリア検査」「レントゲン検査」「エコー検査」といった検査方法もあり、いずれかの方法でフィラリアを発見することができますが、フィラリアの進行状態や成長具合によっては、いずれの方法であっても見つけることが困難な場合があります。

犬から蚊へと感染経路を拡げるフィラリア

猫がフィラリアに感染するまでの経路には、「犬」を宿主としたフィラリアがミクロフィラリアを産むことから始まります。
フィラリアに感染している犬の体内で、フィラリアの成虫が幼虫(ミクロフィラリア)を産むことで、やがて犬の血液中へと幼虫が浮遊するようになります。そして、蚊がこの血液を吸うことで、ミクロフィラリアは蚊の体内へと活動の場を移します。
蚊の体内で成長するミクロフィラリアは、10日程で脱皮をし、感染幼虫へと変わります。そして、感染幼虫を持つ蚊が「猫」の血を吸う事により、今度は蚊の体内から猫の体内へと移動・感染し、猫フィラリア感染が発生するのです。
犬の体内で成長し、蚊に吸われる事で感染を拡げ、ついには猫にまで感染経路を拡げていくというわけです。

フィラリアに感染するまで

フィラリアが猫へと寄生してから肺動脈へと到達するのに、おおよそ3〜4ヶ月を要します。
この期間には、猫フィラリア症の初期症状となる「咳」や「下痢」「嘔吐」が見られます。また、「HARD(犬糸状虫随伴呼吸器疾患)」と呼ばれる喘息に似た症状があらわれはじめ、呼吸器以外の循環器にも影響を与えるようになります。
猫に寄生したフィラリアは、さらに猫の体内へと潜り、猫の肺動脈へと寄生しますが、その多くは肺動脈の末端部で死滅します。しかし、この時点で死滅したフィラリアは約5cm程度に成長しており、猫はこの死滅したフィラリア虫体に対してアナフィラキシーショックを起こす場合があります。「HARD」が発症する原因も、死滅したフィラリアによるものです。

猫フィラリア症の末期状態とは

そのほとんどが死滅するフィラリアですが、そのまま生き残り、肺動脈・心臓まで移動したフィラリアはここで成虫となります。この状態になると、猫は「慢性呼吸器疾患」を患うようになり、フィラリアの寿命となる2〜4年をほぼ無症状のまま過ごします。
そして、寿命とともに死滅したフィラリアの成虫は、心臓・肺動脈を詰まらせる原因となり、突如として呼吸困難やアナフィラキシーショックといった症状を発症、命を落とす結果となるのです。たとえ1匹のフィラリアに対しても、同様の症状を起こす可能性があり、非常に危険な寄生虫なのです。
また、猫の場合には、本来フィラリアが寄生する肺動脈以外にも寄生する事があります。これは犬には見られないフィラリアの寄生の仕方ですが、猫の中枢神経系に寄生することがあり、神経症状を起こす場合もあります。

フィラリアの治療

猫フィラリア症を発症してしまった時の治療法は、フィラリア症の症状となる咳などの対症療法となります。
犬の場合はフィラリアの駆虫薬投与がなされますが、猫の場合は、安易に駆虫薬によってフィラリアを死滅させてしまうと、前述の通り、肺動脈の末端部で死滅してしまう可能性もあるため、駆虫薬によるフィラリアの駆除は難しいのです。
猫の場合には、暗にフィラリアの駆虫を行うと、アナフィラキシーショックを発症する場合も考えられるため、駆虫薬を使用しての治療はまれとなります。そのため、猫フィラリア症の場合は投薬による治療が難しいため、状態によっては外科手術をすることもあります。
このように、フィラリアに感染してからでは、非常にリスクも高まるために、フィラリアの予防接種が非常に大事になってくるのです。

フィラリアの予防接種

フィラリア症は、手遅れの状態になる前に「フィラリアの予防接種」によって簡単に防ぐことができる寄生虫です。また、病院によって若干の変動はあるものの、金額的にもそこまで高くはない金額で受けられますので、蚊が活動し始めるシーズンには、必ず接種するようにしましょう。
蚊が活発に活動し始める時期は、気温が15℃以上になった時であるため、地域によっても蚊が活発に活動する時期が違います。フィラリアを予防するためには、蚊の活動時期をしっかりと把握する必要があり、どの地域でも年中いつでも予防を行えば良いというわけではありません。
かかりつけの病院があれば、毎年はがき等が送られてきますし、かかりつけ医がいなければ、近くの病院に行って摂取タイミングを確認してみましょう。

1年中予防が必要な沖縄

蚊が活発に動き出すのが15℃以上と説明してきましたが、地域によっては年間で数ヶ月しか15℃以上にならない地域も存在します。
その代表となるのが北海道ですが、北海道では年間平均気温が約9℃ほどで、15℃以上に気温が上昇するのは6月〜9月頃までと、わずかに3ヶ月ほどしかありません。北海道でも近年、フィラリア症の報告が上がっていますが、他の地域に比べると合っという敵にフィラリアに寄生される心配は少ないのです。
一方、沖縄に関しては年間平均気温が23℃ということもあり、蚊は1年中活発に活動しているということになります。そのため、沖縄においては1年中フィラリアの予防を行う必要があり、常にフィラリアに寄生されるリスクがつきまとっています。

フィラリアを予防する時期とは?

このように地域によっても大きく予防が必要な時期が違いますが、北海道に関しては7月〜11月を目処に、関東〜九州に関しては5月〜12月を目処にフィラリアの予防を行うようにしましょう。
しかし、あくまでもこれは目安となる時期であり、その年の気温や気候によっても変わるものですので、一概にこの限りではありません。また、フィラリアの予防接種に関しては、蚊の活動期にプラス1ヶ月で接種させるのが基本です。
これは、フィラリアが万が一寄生したことを想定したもので、最後のひと月で仮に寄生された際に、その月で予防を辞めてしまうと体内にフィラリアが残ってしまうためです。一般的には、蚊の活動期には毎月の投与とし、ダメ押しの1ヶ月分を投与するといった形で予防接種をしますが、薬のタイプなどによっても変わります。

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フィラリア予防接種の種類


現在では、錠剤のタイプに加え、年一回の接種で済む「注射タイプ」、お菓子のような「チュアブルタイプ」、背中に液体を垂らすスポットタイプなど様々なフィラリア予防薬が開発されています。
飲み薬タイプの予防薬は、効果が約1ヶ月となるので毎月投与する必要がありますが、気軽に投与出来る反面、猫は食べ物に対して神経質な子が多いので、口にしないことも考えられます。
スポットタイプと呼ばれる予防薬が、猫のフィラリア予防薬としては一番有力なものとなります。スポットタイプは背中に液体を垂らすだけで済むもので、非常に簡単に予防接種が受けられます。効果としては一ヶ月ですので、必要な月に毎月接種となります。
注射のタイプは年に1回で済むため、一回接種するだけで1年は安心して過ごすことができるものですが、中には副作用のリスクもあるため、沖縄など特にフィラリア予防が必ず必要な地域に住む猫にオススメとなります。

フィラリア以外の予防も出来る予防薬

このように、フィラリア予防接種で使用する薬については、いくつか種類がありますので、病院の先生とよく話し合って、最適だと思われる予防薬を投与するようにしましょう。
中には猫がフィラリアに寄生される可能性が低いために、予防接種は必要ないという考え方もありますが、フィラリアの予防接種では、フィラリア以外の虫の感染や寄生を予防することも可能となります。
「ダニ」や「ノミ」といった虫をはじめ、お腹の虫でもある「猫鉤虫」や「瓜実条虫」「猫条虫」などにも効果があるスポット薬もありますので、こうした虫に対してのリスクを減らすためにも、フィラリアの予防接種は行なったほうが良いのではないかと考えます。
猫は犬に比べ、圧倒的にフィラリアに感染するリスクが低いものの、0%ではありません。万が一ということも考えておきましょう。

フィラリアに感染しないために


私達も室内で寝ている時に蚊に刺されるように、たとえ、自宅内にいても夏場は安心ができません。外に遊びに出さないからと行って、安心ができないのがフィラリア症ですので、猫を危険な目に合わせないためにも、こうした予防接種は忘れずに取るようにしましょう。
また、庭先などの「水たまり」ができる場所も気をつけましょう。根本的に蚊を繁殖させないような対策も必要になりますので、こういった蚊が繁殖しやすい場所は、極力無くすようにするのが安心です。こうした場所があると、蚊の活動期を過ぎてもなお、繁殖する可能性もありますので、できるだけ減らすようにしましょう。
毎年、しっかりと予防接種を受け、こういった蚊の繁殖しそうな場所を減らしていくだけでも、フィラリアに感染するリスクも相当低くなります。楽しい夏を過ごせるようにするためにも、予防接種はできるだけ受けるようにしましょう。

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