私達の身近で活躍する「職業犬」たち。今回ご紹介する聴導犬もその内のひとつですが、盲導犬と比べても、まだまだ理解が進んでいないのではないでしょうか。まずはサポートの一歩として、聴導犬について知ってみましょう。

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知名度が低い聴導犬

身体障害者の方をサポートする犬を「補助犬」と言い、補助犬は、「盲導犬」「聴導犬」「介助犬」の3種類です。今や、盲導犬は、映画やニュースなど、メディアで取り上げられることが多いため、耳にすることが多く、知名度も高いと思います。現に、平成28年4月の調べでは、盲導犬が日本全国に984頭いるのに対して、聴導犬の数は64頭しかおりません。すでにアメリカでは約5000頭、イギリスでも800~850頭の聴導犬が活躍していますので、日本ではまだまだ聴導犬の普及が進んでいないと言えるでしょう。

今回記事にさせて頂く聴導犬とは、2002年に制定された身体障害者補助犬法の下、聴覚障害者の方の命を守り、安全な生活を送りやすくなるようにサポートする犬のことです。今回は、聴導犬はどんな仕事をするのか、聴導犬になるにはどのような訓練をするのかなどを解説していきましょう。

聴導犬の仕事とは

聴導犬は、耳が不自由な利用者さんの代わりに耳となり、様々な音を利用者さんに届けます。例えば、家の中であれば、赤ちゃんの泣き声、玄関のチャイムの音、電話の音、目覚まし時計の音のような、利用者さんにとって生活していく上で必要な8つまでの音を覚えられます。その音がしたら音を確認し、利用者さんのことろへ行って前足でタッチなどの合図を送り、音がする方へ利用者さんを誘導するのです。

その他にも、外では自動車や自転車の音を知らせたり、手元から落ちたカギを拾ったり、病院や銀行のような公共施設での順番待ちでは、受付の人にベルや鈴を渡して、順番がきたらその音を鳴らしてもらうことで、利用者さんに知らせることもできます。また、ガスや火災探知機の警報器音、避難警報の音がしたら、タッチではなく伏せをして音を知らせます。仕事中の聴導犬は、オレンジ色の胴輪とリードを着用しています。

どんな犬が聴導犬になれるのか

盲導犬はラブラドール・レトリバーのような大型犬が多いですが、聴導犬は小型犬が多いようです。日本の場合は、家の広さなどの住宅事情や、電車に乗った時に抱き上げることもできるという理由で小型犬が選ばれています。基本的には犬種は問わず、性格重視で、人や他の動物に対して攻撃性が無いこと、音に対して臆病でないこと、興奮しないことなどが基準とされています。

聴導犬の候補生となれるのは、「動物愛護センターで保護された犬」「聴導犬の適正がある犬同士から産まれた犬」「耳の不自由な方が飼っているペットの犬」です。ペットの犬以外は子犬時期の2~10ヶ月間「ソーシャライザー」と呼ばれるボランティアさん宅で預けられ、子犬を愛情いっぱいに育てて、社会性や基本的なしつけ、人と信頼関係を持つということを教えます。その後、候補犬は6ヶ月~2年くらいの聴導犬の訓練を受け、認定試験を合格した犬だけが聴導犬となれるのです。

聴導犬の仕事は10歳前後で引退し、その後は利用者さんがそのまま飼い続けるか、指定の協会に返却するかを選ぶようですが、そのまま家族として飼い続ける利用者さんが多いようです。補助犬と言っても、それ以前に「家族」ということなのでしょうね。

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聴導犬の訓練内容

聴導犬の訓練は、「基礎訓練」「聴導動作訓練」「合同訓練」が行われます。
まず、基礎訓練は約60日間あり、「合図をしたら来る」「座る」「伏せる」「待つ」などの基本の動作を、声だけでなく、手の合図だけで従うようにすること、また、屋内だけでなく、バスや電車、タクシーなどの公共交通機関、スーパーなどの商業施設、病院や銀行などの公共施設や飲食店など、様々な場所へ連れて行き、どんな環境下でも落ち着いて従える訓練をします。

聴導動作訓練は約100日間あり、「音がした所を探す」「音がしたことを人に教える」「音がした所へ人を連れて行く」といった、音のある場所へ誘導する訓練を行います。聴導犬は、人の指示通り動くことを要求されるのではなく、それぞれの音を自分で判断して、自分で考えて行動することを求められます。

聴導犬の訓練には、「ファン・トレーニング(Fun Training)」という方法が用いられ、犬が楽しく学びながら訓練をすることを目的としています。犬をゲーム感覚で楽しませ、成功した時はご褒美を与えます。聴導訓練は、何度も同じ事を繰り返す訓練を行うため、犬が飽きてしまう訓練では、集中力も保てず、良い訓練ができません。また、その犬が何が楽しいか、何が好きかも把握することも大切です。

その後の合同訓練とは、聴導犬候補犬と聴覚障害のある利用者さんが対面して、相性の合う犬が選ばれ、今まで訓練した基礎動作と聴導動作を一緒に行う訓練をします。このように全てを終えてから聴導犬の認定を行う指定の法人の試験に合格すれば、晴れて聴導犬の誕生というしくみになっています。

聴導犬はペットではない

先日、聴導犬の啓発イベントが行われていた商業施設内において、イベント直後に、イベントが行われていたフロアーの飲食店で、聴導犬がまさかの入店拒否という残念なニュースがありました。利用者さんは、補助犬法の説明を従業員に伝えたようですが、それでも受け入れてもらえず、後日この商業施設から謝罪があったようです。

聴導犬のような補助犬は、2002年に身体障害者補助犬法が制定され、公共施設への介助犬同伴の受け入れが義務化されております。しかし、10年以上経った今でも、このように受け入れ拒否をする公共施設が多く、社会では理解されているとは言い難い現状です。聴導犬はペットではありません。聴覚障害者の方をサポートする補助犬です。今、私たちにできることは、補助犬に対する知識を少しでも周りに広げ、補助犬に関心を持つ人が一人でも増えてくれることではないでしょうか。

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