猫の健康管理と病気への予防のひとつに挙げられる「混合ワクチン」による予防接種。毎年恒例の、猫にとっては嫌な注射かもしれませんが、伝染病に感染させないために、正しい知識をもって接種しましょう。今回は混合ワクチンの大切さについて解説します。

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「混合ワクチン」とは

「混合ワクチン」とは、猫の様々な伝染病を未然に予防するため、伝染病に対しての「免疫」をつけるための注射です。
1つの伝染病に対して、1種類のワクチンでしか有効ではありませんので、数ある伝染病に対して一度の予防接種で済ませるため、複数のワクチンを組み合わせて混合ワクチンと呼ばれています。

猫の免疫力と8週令規制について

猫は、産まれた時には母親の免疫力をゆずり受けており、通常の状態であれば生後2〜4ヶ月頃までは、母乳を飲むことによって、この免疫力を維持しています。この免疫力がある間は、病気にはかかりにくい状態なので、子猫は母乳から免疫力を受け継ぎ、伝染病に対しての抵抗力を付けているのです。

しかしながら、ペットショップに並ぶ子犬・子猫たちは、現在の日本の法律では「生後45日」過ぎの子犬・子猫が販売可能となっております。つまり、約1ヶ月半以上経過すると母猫から離しても良いとされております。
ちなみに、アメリカやイギリス、フランス、ドイツといったペット先進国においては、「生後8週令規制(生後56〜62日)」が定められており、日本では2016年2月にようやく札幌市だけが生後8週令規制が条例化されました。

この問題には、母親から譲り受ける免疫力(移行抗体)が、生後40日過ぎから減りはじめ、伝染病に対しての抵抗力が次第に無くなってしまうことから、伝染病に感染するリスクが高まってしまう事や、子猫の社会性を養う期間があまりに少なく、その後に問題行動を起こす等の問題が指摘されており、国内においても、こうした問題に本腰で取り組むことが急がれています。

子猫のワクチン接種

このように、子猫は45日以降に母猫からも離されるため、様々な伝染病からのリスクをへらすためにワクチンを接種します。
しかし、抵抗力をつけるためのワクチンは、母親から譲られた免疫力が子猫の体にある間は効果をなさず、免疫力が低下するのを見計らって接種する形になります。

この接種のタイミングは、子猫の産まれたタイミングによって変わりますが、通常であれば生後2ヶ月〜4ヶ月の間に3回のワクチン接種をします。こうして、子猫が伝染病に感染しないように免疫力を与え続ける役割をしているのが、混合ワクチンなのです。

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成猫のワクチン接種

子猫はこのようなタイミングでワクチンを接種しますが、飼育状況によっては成猫になっても伝染病に感染するリスクはあります。こうした伝染病から猫を守るために、子猫期とは違うワクチン接種を受ける必要があります。

ただし、成猫時のワクチン接種は年に1回で済みますので、子猫のように連続して接種するようなことはありません。年に1回の大事なワクチン接種なので、忘れずに受けるようにしましょう。

ワクチンの種類について

子猫と成猫が接種するワクチンに、違いがあることは上記の通りですが、具体的にはどういった違いがあるのでしょうか。

これには、飼育している猫が外へ出入りできる環境であるか、もしくは多頭飼育しているか等、猫の飼育環境によっても変わってきます。
猫の混合ワクチンは「3種」「7種」といったように、予防対象となる伝染病の数によって混合されるワクチンの種類が変わります。病院などでも接種するワクチンに若干の違いはありますが、一般的に子猫が接種するべきワクチンの対象となる伝染病は、

・猫カリシウイルス感染症
・猫ウイルス性鼻気管炎
・猫パルボウイルス感染症

以上の3種となります。これらの伝染病に対しての免疫力を上げるため、3種混合ワクチンを接種する必要があるのです。また、自宅内での飼育であれば、成猫であっても3種混合ワクチンの接種である場合もあります。
続いて、外に出歩く機会がある成猫の場合は、上記の3種混合ワクチンに加えて、

・猫白血病
・猫クラミジア感染症
・猫カリシウイルス変種Ⅰ
・猫カリシウイルス変種Ⅱ
・猫免疫不全ウイルス感染症

上記いずれかを加えた、5種ないし7種の混合ワクチンを接種することとなります。
ただし、これも病院によっても違いがありますので、動物病院に事前に確認してみると良いでしょう。上記に挙げた伝染病は、あくまでも一般的なワクチンの種類という事です。

ワクチンによるアレルギー

中には、リスクは低いものの、たくさんのワクチンを接種してしまった方がいいのでは?と思う方もいらっしゃるかもしれません。もちろん、様々な伝染病に対して免疫があるのは安心ではありますが、まれにワクチンを接種することで、アレルギー反応を示す猫もいます。

症状としては、顔が腫れ上がる事や元気の減退、ひどいものではアナフィラキシーショックを引き起こす場合もあります。しかし、こうしたワクチン接種によるアレルギー反応は、15000分の1とも言われており、そのほとんどは炎症や元気の減退などが見られるだけで、特別な治療を必要としません。

万が一、アレルギー反応がある場合は、数時間〜1日程度で症状が見え始めますので、様子を見つつ、あまりにひどいようならば、病院に相談してみると良いでしょう。また、次回のワクチン接種の際には、このようなアレルギー反応が起きた事を伝えるようにしましょう。

やみくもにワクチンを接種しても意味はありませんが、逆にアレルギー反応を恐れてワクチン接種を受けない事は、非常に危険な選択ではあります。伝染病にかかるリスクの方がはるかに大きいので、毎年のワクチン接種は必ず受けるようにしましょう。

伝染病に感染させないために

ワクチン接種後も気を付けることがあります。それは、ワクチンを接種しても約2〜3週間が経たないと、伝染病に対する抗体が体の中にできないため、ワクチンを接種したからといって、すぐに遊びに出かけさせてはいけないということです。

この間に、伝染病に感染するタイミングがあれば、ワクチンを打ってはいるものの、感染するリスクは非常に高いです。一番の予防策は、外に自由に出歩ける環境をやめ、自宅内のみでの飼育にするという事です。

外界ではどんな伝染病や寄生虫がいるかわかりません。ワクチンを接種したからといって、100%感染しないとは言い切れませんので、こうした病気のリスクを最大限にへらすためにも、家の中でだけ過ごせるような飼育にすることをおすすめします。

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