猫に限らず、人間も感染する恐ろしい伝染病で、発症するとほぼ死亡する「狂犬病」。この狂犬病ですが、いつ日本で感染が確認されてもおかしくはない事をご存知でしょうか。今回は、この狂犬病の現状と症状ついて解説していきます。

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狂犬病とは?


「狂犬病」という病名を、犬や猫を飼っていない方でも、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。ズーノーシス(人畜共通感染症)であることでも知られる狂犬病は、命にもかかわる非常に恐ろしい病気のひとつです。

また、現代の医学においても、狂犬病を発症した際に有効とされる治療法は見つかっておらず、致死率も99.9%と言われています。これは、犬や猫にとっても、人にとっても同じ確立で、すべての哺乳類に感染リスクがあります。

日本国内においては、狂犬病の予防接種も「ほぼ」義務化されているため、1957年以降に狂犬病は発生しておりませんが、これも日本がただ島国というだけで、世界の各地では今もなお狂犬病の恐怖にさらされている国も存在します。

狂犬病の感染

数あるズーノーシスの中でも、最も恐ろしい病気として知られる狂犬病ですが、その死亡率も前述のとおり、ほぼ100%と言っていい数字になっており、狂犬病の感染から死に至るまでの症状も悲惨なものがあります。

狂犬病は人を含めた多くの哺乳類が感染してしまう感染症で、犬はもちろん猫も感染経路となり得るのです。

日本での狂犬病についてのアナウンスは、犬だけの深刻な病気とも捉えられなくもない形となっていますが、猫に対してもほぼ同様の症状が起こり、犬に限らず猫やその他の哺乳類も感染が認められる、非常に感染リスクの高い病気が狂犬病なのです。

いくら日本では狂犬病が発生していないとは言え、まだまだ安心するのは危険なのです。

狂犬病の感染経路とは

日本では主に犬が感染経路と考えられていますが、猫以外にも、海外ではキツネやアライグマ、コウモリ、マングース、スカンクといったように、自然界に生息する動物が狂犬病の感染経路として認識されています。

現在の日本においては、多くの人がペットを飼育しており、日々、様々なペットとなる動物が海をわたってきている状況です。こうした動物たちは日本に入国する前に厳重な検疫をくぐり抜けてはいますが、問題となるのは密輸です。

希少動物なども密輸によって入国している事実があるため、狂犬病に感染した動物が密輸などによって入国してもおかしくはないのです。そのため、日本でもいつ狂犬病が発生してもおかしくはない状況ではあります。

こうしたことから狂犬病の予防接種は、万が一の蔓延を防ぐためにも必要な予防策でもあり、飼い猫や飼い主の身を守るためにも、毎年必ず接種すべき予防接種なのです。

英国で起きた猫からの狂犬病の感染

狂犬病は、狂犬病に感染している動物に咬まれる、もしくはひっかかれることで、ウイルスが体内へと侵入し、感染していきます。

現に、2011年のアメリカで、少女が狂犬病に感染している猫にひっかかれ、狂犬病を発症した例が報告されています。幸いにもこの少女は狂犬病の新治療法によって一命を取り留めましたが、2010年にバリ島に住む13歳の少女が猫に噛まれ、狂犬病に感染してしまった際には、命を落としてしまいました。

このように、猫からの狂犬病感染も油断ができない状況であり、後述しますが猫の場合には、狂犬病の症状として狂躁型である場合が多いため、こうして咬み付いたり引っ掻いたりしてくるケースが多いのかもしれません。

狂犬病の潜伏期間は

狂犬病は感染後、すぐに症状が現れるわけではありません。狂犬病に感染している犬や猫などに噛まれたりすることで感染が起きますが、ウイルスはその後、体内に潜伏し、感染した動物はキャリア状態となります。

狂犬病の潜伏期間は、犬が「約2週間〜2ヶ月程度」なのに対し、猫の場合では「2〜3週間程度」と、犬よりも少ない潜伏期間を経て、狂犬病の症状を発症し始めます。

ちなみに、人間の場合は1〜3ヶ月程と言われていますが、これは感染した箇所から脳までの距離にもよるのだそうです。例えば、足先から感染するのと、腕から感染するのとでは、腕のほうが脳までの距離が近いために、発症するのが早いということです。

ウイルスのこのような潜伏期間を経て、狂犬病を発症。なお、症状としては「狂躁型」と「麻痺型」という2つのタイプに分けられます。

狂犬病発症後の進行について


「麻痺型」と呼ばれるタイプは、早い段階で麻痺症状となり、わずか数日で死に至るタイプで、狂犬病特有の凶暴性をあらわすこと無く命を落とします。一方の「狂躁型」は、「前駆期」「狂躁期」「麻痺期」の3つの段階を経て、やがて命を落とすタイプで、狂犬病に見られる凶暴性が特徴となるタイプです。

犬の場合には、およそ75%が狂躁型を占めるものの、麻痺型も少なからずみられますが、猫の場合に限っては90%が狂躁型を占めており、突然飛びかかってきたり、引っ掻いたりといった行動が見られるため、大変危険です。以下が、狂犬病発症後の3つの段階です。

【前駆期】
発症後の1〜3日はこの前駆期に入ります。猫においては、執拗に人にまとわりつくようになり、愛情表現をしめしてくるようになるようです。この期間は、攻撃的な症状はみとめられません。

【狂躁期】
前駆期の後、長くとも発症後4日以内にはこの狂躁期へと移行します。一転、非常に攻撃的な状態となり、人も含め何に対しても攻撃を仕掛けるようになります。また、不眠で鳴き続けるようになり、よだれを垂らしはじめます。
この他、瞳孔が散大、発熱、鼻や唇、掌球が紅潮するといった症状が見られます。また、後ろ足の麻痺が見られる場合もあります。

【麻痺期】
狂躁期の後、凶暴性は息を潜めるようになり、よだれをたらし、意識も低下、そのご呼吸麻痺を起こすことで死亡してしまいます。

世界的に蔓延する脅威

このように、狂犬病は非常に恐ろしい病気であり、一度発症してしまうと治療法はないため、ただ苦しみ、死にゆく姿を見守るだけとなってしまう狂犬病。2012年の報告では、世界で年間55,000人もの人が狂犬病の犠牲となっており、中国・東南アジア諸国・アフリカ諸国においては、犬の狂犬病が流行しています。

日本人に関しても、2006年にフィリピンに滞在中に犬に咬まれ、帰国後に狂犬病を発症し、死亡した例があります。このように、狂犬病は他人事ではなく、いつその脅威にさらされるかわからない病気なのです。

義務化されていない、猫の予防接種

非常に危険な感染症であることは、説明の通りですが、日本においては犬の狂犬病予防接種は義務化されている一方、猫に関しては予防接種の義務化はされておりません。

犬の場合、生後91日以上の子犬は狂犬病予防接種を受けなければならず、「狂犬病予防法」によって狂犬病のワクチン接種と鑑札を付けることが義務付けられています。しかし、猫の予防接種や、猫に関しての狂犬病の情報については非常に少なく、厚生労働省のホームページでも、人と犬の感染と被害についての情報しか掲載されておりません。

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忍び寄る、狂犬病の脅威

現状、犬に対しての条例しかないことや、犬の感染例についての情報の方が圧倒的に多いのが実情ですが、前述の通り、いつ日本に狂犬病に感染した動物が輸入されてきてもおかしくありません。

例を挙げると、子どもたちにも人気の「ハムスター」。ハムスターも哺乳類であるため、狂犬病に感染するリスクはありますが、情報によると2003年の数字で、約50万匹ものハムスターが日本へと輸入された実績を持ちます。もちろん、検疫をクリアした個体が入ってきているので、狂犬病感染の心配はないものの、万が一という事を考えるとゾッとしてしまいます。

また、北海道においても、狂犬病の流行地で知られるロシアからの船に同乗していた犬が、北海道に寄港した際に、不正に上陸したことも確認されています。狂犬病感染の話はでておりませんが、北海道にはたくさんの野生のキツネもいますので、感染し始めると大変な事にななりかねません。

アメリカの狂犬病と猫の感染率

先述でも海外諸国の狂犬病感染について触れてきましたが、大国であるアメリカもまた、狂犬病発生国として知られます。といっても、狂犬病の非発生国は一桁台であるため、圧倒的に感染国のほうが多い状況です。

アメリカにおいての、犬からの狂犬病感染は年間でも20件〜30件ほどという数字です。日本では考えられないほどに多い数字ですが、驚くことに、猫からの狂犬病感染は年間で200件〜300件にものぼるのだそうです。

イメージとしては狂犬病は犬からの感染が多いイメージですが、猫からの感染が犬よりも圧倒的に多く、10倍もの数字となっているのです。野良猫の問題も深刻ですが、先述の通り、猫は狂躁型である場合が多いことも、この数字からうなずけます。

猫に狂犬病の予防接種は必要か


以上のように、狂犬病はあらゆる動物に感染するリスクがあり、猫は中でも感染してしまうと非常に危険な感染源となってしまうことがわかりました。

狂犬病の予防接種についても触れてきましたが、実際のところ、自宅内で飼育している猫に関しては、狂犬病の予防接種を受ける必要はないでしょう。むしろ、予防接種を受けることによる副作用の心配のほうがリスクが高いかもしれません。

しかし、外飼いをしている猫はどうでしょうか。日本でも、いつどこで狂犬病に感染するか、実際はわからないところがあります。アメリカのような確立にはならないにしろ、0%の確立というわけにはいかないような気もします。

こうした場合には、猫への狂犬病の予防接種が必要と考えてしまいますが、そもそもの飼育環境を変えることが、一番の予防策となるのではないでしょうか。

狂犬病に感染しないために

このように、日本国内においても、いつ狂犬病は発生してもおかしくない状況ということを知っておきましょう。

猫に関しては、外に自由に出入りできる環境下では、狂犬病に限らず何かしらの感染症に感染してもおかしくはありません。手遅れの状態になる前に、こうした飼い方をしている場合は、改めるようにし、自宅内でのみ飼育するようにしましょう。それだけでも、病気に感染するリスクは大きく減らすことができるでしょう。

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