犬の種類には様々な特徴や性質、気をつけなければいけない事などがあり、犬を飼う上では犬種別に特徴を理解することが必要になります。今回は「ジャーマン・シェパード」について、飼っている方もこれから飼いたいと思っている方もチェックしてみましょう。
ジャーマン・シェパードとは
ジャーマン・シェパードは、利口で厳しい訓練でも耐えうる犬種のため、警察犬や軍用犬、麻薬探知犬や番犬など、あらゆる分野で活躍しています。また、この犬種の何が何でも命令に応えようとする勇敢さや忠誠心に、多くの兵士が敬意を表しているということでも知られています。
こんな優秀なジャーマン・シェパードですが、実は一度信頼した飼い主さんにしか見せない、甘えん坊で優しい表情も持ち合わせています。また、打たれ弱いところもあり、怒られると長い時間いじけて、拗ねてしまうところもあるようです。
ジャーマン・シェパードのルーツ
ジャーマン・シェパードのルーツは、ドイツの山岳地帯のチューリゲン、バーデン、ヴェルテンベルクで牧羊犬として飼育されていた犬が祖先とされています。
1899年に、ドイツで「ジャーマン・シェパード協会」が設立され、この時「オールド・ジャーマン・シェパード・ドッグ」を牧羊犬としてだけでなく、勇敢な性格や優れた運動神経や服従能力、高い知性を持つように改良されたものが「ジャーマン・シェパード」であり、この犬種の改良に関しては、犬の歴史上、他に類いを見ない程であると言われています。
その後、ジャーマン・シェパードは第一次世界大戦時に、ドイツ軍において爆弾の運搬、負傷兵の救出、通信や伝令などが主な任務になり、軍用犬として欠かせない存在となりました。
この時、この犬種の能力に感心したアメリカ人やイギリス人の兵士がジャーマン・シェパードを自分の国に連れ帰ったことでこの犬種の人気を博したのですが、アメリカの愛犬家団体「AKC」では「ジャーマン・シェパード・ドッグ」を「シェパード・ドッグ」に(後にジャーマン・シェパード・ドッグに戻ります)、イギリスでは大戦後の反独感情により、「アルザチアン・ウルフ・ドッグ(アルザスのオオカミ犬)」という名前に改名しました。
ちなみに、「ジャーマン・シェパード・ドッグ」とは、ドイツの「羊飼い」という意味から来ています。
ジャーマン・シェパードの性格
ジャーマン・シェパードは、オオカミに似た容姿を持ち、恐ろしく危険なイメージがありますが、実際はとても愛情深く、生涯どんな場面においても飼い主さんに対して忠実であり、飼い主さんや家族を守る番犬、護衛犬としての素質があります。また、一度信頼関係を築き、警戒心を解いた時、飼い主さんに対して、とても甘えん坊で人懐っこい一面も持ち合わせています。
しかし、幼少期にきちんと訓練されないと、支配欲が強くなり、とても攻撃的な性格になります。また、一度このようになってしまった場合、再教育することが難しい犬種でもあるので、初心者の方の飼育には向かないかもしれません。賢く優秀な犬種だからこそ、飼い主さんを自分より下と見下した場合、コントロールができなくなります。
ジャーマン・シェパードは、警察犬や軍用犬としてはとても優秀ですが、盲導犬としては使われないことが多いようです。これは、この犬種の高い忠誠心のせいで、幼少期にパピーウォーカーに育てて貰った後、飼い主さんと引き離される際に、分離不安に陥ることがあるためです。一度大事に育てて貰った恩は決して忘れないという、シェパードの性質なのでしょうね。
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ジャーマン・シェパードのしつけに関して
厳しく的確な服従訓練が必要となるジャーマン・シェパードは、成犬になると成人男性でも敵わなくなりますので、必ず愛犬とアイコンタクトを取りながらトレーニングし、飼い主さんに「従う」ということを理解させる訓練をしましょう。子犬のうちに、訓練の学校へ通わせるのも、一つの手かもしれません。
軍用犬や警備犬、番犬のイメージが強いジャーマン・シェパードですが、本来は愛情深く、友好的で子供好きのため、育て方や接し方次第では、穏やかで従順な家庭犬にもなります。どんな厳しい訓練にも耐えうる性質を持ち合わせていますが、愛情を持って信頼関係を築いた上で接することが大前提です。
ただ厳しいだけでも、甘やかすだけでも良い躾とは言えません。この犬種の良さを生かすも死なすも飼い主さん次第です。
優秀な番犬、護衛犬とするのか、穏やかな家庭犬とするのか、今一度飼育する前にしっかりとした飼育方法を考える必要があるでしょう。
ジャーマン・シェパードの被毛の管理
ジャーマン・シェパードは、「ダブルコート」の被毛を持ち、硬く短い毛の「オーバーコート(上毛)」と柔らかく密生した「アンダーコート(下毛)」の2種類の被毛で覆われています。
ジャーマン・シェパードの被毛の手入れは比較的簡単で、汚れた時は、固く絞ったタオルで拭く程度で良いでしょう。また、定期的にブラッシングをすることが望ましいですが、換毛期を迎えた時には、よりこまめにブラッシングをするようにし、常に清潔な体を維持させるようにしましょう。
年に2回の換毛期の間は、沢山の毛が抜けるために犬アレルギーの人がいる家での飼育はあまりお勧めできません。ダブルコートを持つ犬種は、換毛期には大量の抜け毛が発生しますので、ジャーマン・シェパードに限らず、注意が必要になります。
白いジャーマン・シェパードもいる?
ジャーマン・シェパードの被毛のカラーは、比較的多く見られる「ブラック&タン」や「グレー」「ウルフ」のほか、全身が真っ黒な「ブラック」といった毛色があります。また、「ホワイト」の被毛のカラーもありますが、これは「ホワイト・スイス・シェパード(ホワイト・シェパードとも)」として、別犬種として認定されています。
ホワイト・シェパードは、基本的にはジャーマン・シェパードから生まれる毛色なので、性格や能力に関してはジャーマン・シェパードと同じですが、ジャーマン・シェパードよりも気質が大人しめで温厚、攻撃性なども抑えられている個体が多いようです。
1917年以前と、1930年以降には処分の対象として扱われていたホワイト・シェパードですが、根強い愛好家も多く、1969年に「ホワイト・ジャーマン・シェパード クラブ オブ アメリカ」が発足してからは、ホワイト・シェパード単体としての存在を強くしてきました。なんとも、白い毛が美しいジャーマン・シェパードですね。
ジャーマン・シェパードがかかりやすい病気
ジャーマン・シェパードがかかりやすい病気とされているのが、大型犬に多い「股関節形成不全」です。この股関節形成不全は、股関節が正常に形成されなかったり、変形されることで、歩き方に支障をきたす病気です。
肥満体型は、股関節形成不全を引き起こすきっかけとなってしまいますので、子犬の頃から肥満にならないように、食事の管理は徹底するようにしましょう。
また、「胃捻転」という病気も、ジャーマン・シェパードは気を付けるべき病気とされています。「胃捻転」とは、胃の内容物が発酵し、発生したガスで胃がパンパンになり、その胃が捻転してしまう病気で、大型犬に多く見られ、致死率も高い病気です。ついさっきまで元気にしていると思ったら、急にぐったりとするなど、早急に処置をしないと、最悪の場合死に至る病気です。
予防としては、食後しばらくは安静にさせることや、水のがぶ飲みは避けること、早食いさせない事など、十分に気を付けてあげましょう。
そして、大型犬の多く発症する「骨肉腫」にも注意するべきでしょう。骨肉腫は、命の危険が極めて高いガンの一種です。このガンは足に発症することが多く、足に激しい痛みが生じて、足を引きずったり、患部の骨が腫れるなどの症状があります。
また、骨肉腫はとても進行が早く、転移しやすいので、発見した時点で、90%以上の確率で肺に転移していると言われています。
足を引きずったり、いつもと歩く感じが違うと感じたら、すぐ病院へ連れて行きましょう。
ジャーマン・シェパードの寿命は?
大型犬のジャーマン・シェパードの寿命は、おおよそ12年ほど。大型犬種としても平均的な寿命になっています。
ジャーマン・シェパードにより長生きしてもらうためには、日頃からの健康管理が何と言っても大事になってきますが、中でもしっかりと運動を行わせる事は、ジャーマン・シェパードにとっても大事なポイントとなりそうです。
前述の通り、ジャーマン・シェパードは肥満体型になってしまうと股関節形成不全を引き起こしてしまい、運動することすら困難になってしまうと、その分寿命も短くなってしまいますので、肥満にならないような食事の管理と、丈夫な肉体を維持するために運動は必須といえます。
また、毎日しっかりとスキンシップをはかり、変わったところは無いかなど、触れ合いながら異変がないかのチェックを行うのも大事になります。
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ジャーマン・シェパードのブリーダーは?
ジャーマン・シェパードは、ペットショップ等ではほぼ見かけることがない犬種の一つと言えるでしょう。そのためジャーマン・シェパードを迎え入れる際には、ブリーダーからの直販が基本ルートとなりそうです。
ブリーダーからの直販では、親の情報や遺伝的な病気は無いかなどを確認することも出来るため、ペットショップよりも安心して迎え入れる事もできるでしょう。また、ホワイト・シェパードを探す際には、ブリーダーに直接問い合わせなければ見つけることも困難でしょう。ペットショップではまず見かけることもありません。
少ないながらも全国に数カ所は、ジャーマン・シェパードを繁殖しているブリーダーも存在しておりますので、ブリーダー探しにはそこまで手間取ることもないでしょう。
ジャーマン・シェパード販売価格は?
ジャーマン・シェパードのおおよその相場価格は15万円以上。高くとも30万前後ほどでしょう。また、ホワイト・シェパードに関しては希少性があるために、30万〜40万ほどの価格で取引されることも多いです。
ジャーマン・シェパードはペットショップ等で扱われる事も稀なため、ディスカウントされているという事もほぼありませんが、ブリーダー直販であっても、月齢によっては10万円を切るような価格で取引されることもあるようです。
ジャーマン・シェパードを迎え入れる際には価格だけにとらわれないようにし、しっかりとジャーマン・シェパードを迎え入れられる飼育環境を整え、性格や気質を十分に確認してから、飼い主さんと気が合いそうな子を探して飼うようにしましょう。
ジャーマン・シェパードと暮らすために
ジャーマン・シェパードは、かなりの運動量を必要とするため、運動不足や愛情不足によるストレスから、破壊行動に出ることもありますので、日頃から愛犬とスキンシップを取り、ゲームをしながらの運動を取り入れるのも良いでしょう。
また、飼い主さんと愛犬の健康維持のため、ジョギングに付き合ってもらうのも良いかもしれませんね。愛犬とコミュニケーションも取れて、楽しみながら運動ができるので一石二鳥になるでしょう。
警察犬としてのイメージも強く、賢いイメージや強いイメージがあるジャーマン・シェパードですが、家庭犬として飼育するにはしっかりと躾をいれる必要もあり、飼い主さんの飼い方次第では、飼うことも難しい犬種ともなります。迎え入れる前には、今一度しっかりと飼い方について考えていくようにしましょう。
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