犬の種類には様々な特徴や性質、気をつけなければいけない事などがあり、犬を飼う上では犬種別に特徴を理解することが必要になります。今回は犬種の一つ「イングリッシュ・コッカー・スパニエル」についてチェックしてみましょう。

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イングリッシュ・コッカー・スパニエルとは

「わんわん物語」のアメリカン・コッカー・スパニエルの方が知っている方も多いのではないでしょうか。

イングリッシュ・コッカー・スパニエルは、アメリカン・コッカー・スパニエルの祖先にあたり、姿かたちもよく似ているのですが、アメリカン・コッカー・スパニエルよりも体が若干大きく、頭が尖っていて、鼻先も長いというのが特徴です。

日本やアメリカでは「コッカー・スパニエル」と言えば、アメリカン・コッカー・スパニエルが頭に浮かぶ方が多いとは思いますが、その他の国ではイングリッシュ・コッカー・スパニエルの方が有名なようです。

イングリッシュ・コッカー・スパニエルのルーツ

イギリスで古くから狩猟犬として飼育されていた「ランド・スパニエル」が、イングリッシュ・コッカー・スパニエルだけでなく、多くのスパニエル種の祖先であると考えられています。

イングリッシュ・コッカー・スパニエルは、17世紀頃からイギリスのウェールズ地方でヤマギシなどの鳥猟犬として飼育されていましたが、当時同じく鳥猟犬でランド・スパニエルの子孫でもある、「イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル」と体の大きさは違うものの、同犬種とされていました。

しかし、1892年にイギリスの愛犬家団体「KC(ケネル・クラブ)」は別犬種として区別するために、イングリッシュ・コッカー・スパニエルを1品種として公認することになったのです。

その後、イングリッシュ・コッカー・スパニエルはアメリカへと渡り、猟犬らしさを無くして、愛玩犬として改良されることになります。

イングリッシュ・コッカー・スパニエルとしての特徴を出すために

アメリカへと渡ったイングリッシュ・コッカー・スパニエルは、それまでとは違う特徴を出すために、口吻は小さく、頭は丸く、サイズはより小さく改良されていきました。

この改良に対してイギリスは猛反発し、結局アメリカ・イギリス両国間での意見の折り合いがつかなかったため、アメリカで改良された犬種はアメリカン・コッカー・スパニエルとして、イギリスで改良された犬種はイングリッシュ・コッカー・スパニエルとして、それぞれ独立することになったのです。

アメリカではアメリカン・コッカー・スパニエルこそが本来のコッカー・スパニエルであり、1935年にアメリカの愛犬家団体「AKC(アメリカン・ケネル・クラブ)」に公認されたのですが、イングリッシュ・コッカー・スパニエルは、それよりも遅い、1946年にAKCにより正式公認されました。

イングリッシュ・コッカー・スパニエルがアメリカン・コッカー・スパニエルを作出するきっかけとなったのに、順番が変わってしまった珍しいパターンですね。

ちなみに、イングリッシュ・コッカー・スパニエルという名前の由来は、元が鳥猟犬で、鳥に静かに忍び寄り、上手に猟をすることから「ヤマギシ(woodcocker)猟」に最適とされ、「コッカー=ヤマギシ」「スパニエル=猟」にちなんで、コッカー・スパニエルと名付けられました。

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とても明るいイングリッシュ・コッカー・スパニエルの性格


とても愛情豊かで、短い尻尾をいつもフリフリしているイングリッシュ・コッカー・スパニエルは、とても友好的で人見知りもなく、子供や他のペットとも仲良く接することができます。

一緒に遊ぶといった行為や、一緒にコミュニケーションを取るという事が好きな犬種なため、一人でいるよりかは、遊び相手が居るような家庭のほうが向いている犬種とも言えるでしょう。

また、イングリッシュ・コッカー・スパニエルは、飼い主さんや家族に対して愛情深く、忠誠心もあるので、とても躾がしやすい犬種としても知られます。

共にコミュニケーションをとり、飼い主さんと一緒に居ることに喜びを憶える犬種ですので、旅行なども一緒に行けるような、そんな家庭で育つと、イングリッシュ・コッカー・スパニエルとしての才能も、大きく伸びることでしょう。

イングリッシュ・コッカー・スパニエルは猟犬としての性格・特徴も

天真爛漫で家族思いなイングリッシュ・コッカー・スパニエルですが、元は猟犬としての素質もあるため、時折気性が激しくなる場合もあります。

基本的には子供や、先住犬とも仲良くやっていけるような性格を持ちますが、反面、非常に賢く、リーダーとなる飼い主さんの行動や様子をしっかりと見るという性格も持ち合わせています。

かわいいからといって、いつも優しすぎたり、怒らなかったりすると、気がつけば自分がリーダーであると勘違いしてしまうこともあるのです。そのため、飼い主さんは、しっかりと「群れ」のリーダーである自覚を持たなければいけません。

子犬の頃からしっかりと躾をして、日頃からスキンシップを取り、信頼関係を築きあげれば、飼い主に従順で温厚な子になるでしょう。

イングリッシュ・コッカー・スパニエルの被毛

イングリッシュ・コッカー・スパニエルの被毛は、絹のような滑らかな「オーバーコート(上毛)」と柔らかく密生した「アンダーコート(下毛)」の二層構造からなるダブルコートの被毛で覆われています。

この絹のような被毛を維持するためにも、定期的なブラッシングは必要ですが、この被毛は年に2回の換毛期があり、その間は沢山の毛が抜けるため、よりこまめにブラッシングをするようにし、常に清潔な体を維持させるようにしましょう。

また、室温の十分な管理も必要となります。イングリッシュ・コッカー・スパニエルに限らず、ダブルコートの犬種は寒さに強く、暑さに弱いという特徴を持ちます。

しっかりとブラッシングを行ない、夏場はムダ毛などで体が蒸れてしまわないよう、熱をしっかりと逃がすことができるように、被毛の管理は欠かせません。

イングリッシュ・コッカー・スパニエルの毛色


イングリッシュ・コッカー・スパニエルの被毛のカラーは、「ブラック&ホワイト」「ブラック」「レッド」「チョコレート」「セーブル」といったソリッド(単色)のカラーの他にも、「ローン」と呼ばれる、地色の他に模様が混ざる、イングリッシュ・コッカー・スパニエル特有の毛色も存在します。

ローンには、最も多いカラーの「ブルーローン(ホワイトの地色にブルーが入る)」「オレンジローン」「レバーローン」「チョコレートローン」に加え、ブルーローンにタンが入る「ブルーローンタン」などがあります。

親戚とも言えるアメリカン・コッカー・スパニエルには、このローンと呼ばれる毛色は存在せず、イングリッシュ・コッカー・スパニエル特有のものになっています。一方で、アメリカン・コッカー・スパニエルにも、特有の呼び方をするカラーも存在しています。

イングリッシュ・コッカー・スパニエルがかかりやすい病気

イングリッシュ・コッカー・スパニエルがかかりやすい病気とされているのが、「進行性網膜萎縮」であり、網膜が萎縮して正常に働かなくなる遺伝性による目の病気です。まず、視力が低下して夜に目が見えなくなり、そのうち日中も見えなくなり、最終的には失明します。

日頃から、愛犬が何かにつまずいている様子はないか、大好きだった散歩を嫌がっていないかなど、少しの変化にも注意して観察しましょう。

また、「股関節形成不全」という骨の病気にも気を付けなければいけません。股関節が正常に形成されなかったり、変形されることで、歩き方に支障をきたす病気です。
肥満体型は、股関節形成不全を引き起こすきっかけとなってしまいますので、子犬の頃から肥満にならないように、食事の管理は徹底するようにしましょう。

そして、イングリッシュ・コッカー・スパニエルの耳は垂れ耳で、立ち耳の犬種に比べ通気性が良くないため、耳の中が蒸れたり、カビや雑菌などが繁殖しやすく、「外耳炎」などの原因になります。
暑い夏や湿気が多い季節は特に気を付けて、こまめな耳掃除が必要です。

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イングリッシュ・コッカー・スパニエルの販売価格は?

イングリッシュ・コッカー・スパニエルは、ペットショップ等ではそんなに並ぶことのない犬種の一つです。

全くいないわけではありませんが、アメリカン・コッカー・スパニエルと比較してもその差は大きく、ペットショップにいるとやや珍しい犬種として扱われるかもしれません。

相場としては、おおよそ25万円前後くらいが平均の価格となっており、高くとも30万前後程度でしょう。

価格の差としては、イングリッシュ・コッカー・スパニエルの豊富な毛色によっても大きく違ってきます。中でも人気の高いマールの毛色では、カラーに加えてカラーの入り方によっても価格が変わる場合も。

一方で、マールの毛色を持つイングリッシュ・コッカー・スパニエルは、遺伝子異常を持つ事も多いため、迎え入れる際にはしっかりとしたヒアリングも必要となるでしょう。

イングリッシュ・コッカー・スパニエルはブリーダーからがおすすめ


イングリッシュ・コッカー・スパニエルの遺伝子異常は、マールの毛色だけでなく、ソリッドカラー(単色)であっても先天的疾患である「レイジ・シンドローム(激怒症候群)」という脳の病気を稀に引き起こすことがあったりもします。

全てのイングリッシュ・コッカー・スパニエルが必ず疾患を持っているわけではありませんが、保証はあるに越したことはないですね。

そのため、イングリッシュ・コッカー・スパニエルのブリーダーから子犬を迎え入れる際には、ブリーダー側でしっかりと検査が行われているか、遺伝性疾患を持つ親で繁殖をしていないかなど、しっかりと確認する必要があります。

ペットショップでは、こうした事を確認するのが難しい場合が多いため、イングリッシュ・コッカー・スパニエルのように遺伝性疾患の確率が高いような犬種は、ブリーダーから迎え入れたほうが、何かと安心かもしれません。

イングリッシュ・コッカー・スパニエルと暮らすために

イングリッシュ・コッカー・スパニエルは、アメリカン・コッカー・スパニエルよりも猟犬としての性質を残しているため、運動量は多めにとる必要があります。「ボール投げ」や「追いかけっこ」など、狩猟犬の本能を生かした遊びを取り入れながら運動するのも良いでしょう。

また、イングリッシュ・コッカー・スパニエルは遺伝性疾患を持つ子が多い犬種としても説明してきました。迎え入れる際には、飼い主さんも十分な知識を持つようにし、遺伝性疾患についての理解や確率についても知っておくと良いでしょう。

こうした疾患の心配はありますが、イングリッシュ・コッカー・スパニエル自体は非常に家族思いで優しく、特にお子様がいる家庭では明るい毎日が送れそうな犬種でもあるので、疾患の心配をしすぎず、より自分の家庭に合っていそうな犬種を選ぶようにしましょう。

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