非常に知能の高いインコとして知られる「ヨウム」。このヨウムの中でも世界的に有名なヨウムが今回紹介する「アレックス」です。アレックスは、100以上もの単語を理解し、応用して伝えることができました。では、アレックスについて見てみましょう。

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「ヨウム」ってどんな鳥?

鳥の中でも大型インコ種となる「ヨウム」。体長は33cm程にもなり、体重も400g程まで成長するインコです。ヨウムは非常に知能の発達している鳥としても知られており、電話の音等の生活音を覚えるだけではなく、人の様々な言葉を「意味を理解した上で」覚えることができる鳥でもあります。

こうしてヨウムの良い部分だけを聞くと、犬などにも代わる楽しそうなペットと感じるかもしれませんが、ヨウムの平均寿命は約50年ほどと、実際に飼い始める年齢が遅いと私達よりも長生きする場合もあるため、飼う場合にはしっかりと飼育できる環境を整える必要がある鳥でもあるのです。

しかしながら、実際に飼っている方の話しを聞いたりすると、反抗期があったりと飼育するのに大変な部分もあるようですが、飼い主の事を観察することが好きな鳥でもあるので、非常に愉快な鳥でもあり、かけがえのないパートナーにもなる鳥でもあるのです。

高い知能を持つヨウム「アレックス」

そんなヨウムの中でも世界的に有名なヨウムが居ることをご存知でしょうか。そのヨウムの名前は「アレックス」。1976年に生まれたアレックスは、ヨウムの中でも少し短命となる31歳の若さで亡くなってしまいましたが、彼が残してきた功績は、人々のヨウムに対する理解を変えてきただけではなく、世界中に感動を与えるものでもありました。

アレックスは、アイリーン・ペパーバーグ博士という比較心理学の女性博士の研究の為に飼われていたヨウムで、頭の良い鳥として知られるヨウムの中でも、とりわけ知能の高いヨウムとして知られていました。アレックスの知能は「2歳児の感情と5歳児の知性」を持つと言われ、「50の物体」「7つの色」「5つの形」「数を6まで理解していた」というように、普通には理解しがたいような鳥でした。

自らの欲求を言葉として伝えることができたアレックス

「50の物体」「7つの色」「5つの形」「数を6まで理解していた」と言われてもピンと来ないかもしれませんが、例えば「色」と「数」を合わせて答えを出す事や、「形」と「色」をあわせるといったように、1つ1つの物を覚える事に加えて、その物の意味を理解していたのです。また、この他にも100以上の単語を覚えてもいました。

それを証拠に、自らが覚えている言葉を応用し、「〜したい」といった言葉を伝えることができ、博士に「水を飲みたい」という欲求を言葉で伝えることも出来ました。このように自分の欲求を伝えるだけではなく、「トウモロコシは黄色い」という事や、たくさんの形や色、種類が異なる物体を無作為に並べていても、特定の種類・色・数を答えることが出来ました。

1歩歩くとすぐに物を忘れるといった例えに「鳥頭」という言葉が使われますが、この鳥頭とは真逆の能力がある事を、アレックスは自ら証明してみせたのです。

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「0」の概念を理解していた

アレックスは数を数えるだけではなく、「0」や「無い」という概念も理解していました。例えば、異なる色の、異なる形の物体を数えたりすることは当たり前のようにこなしていましたが、それが「異なる色」「同じ形」「同じ大きさ」という条件から、「大きいのはどれ?」という質問を投げかけた時にはどう答えたのでしょうか。

アレックスが導き出した答えは「ない」という答えでした。

このアレックスの答えによって、物の大きさを正確に理解し、「色」と「形」を混同せずに理解していたことが立証され、動物にもこういったことが理解できるという研究結果が得られたのでした。

実はこの「0(ゼロ)」という概念、人間でもある程度の年齢にならなければ理解できない考え方であり、アレックスが5歳児の知能を持っていたという説も、こういった事が理由として挙げられます。現時点では人間以外で数を合計し、数を導き出すことができるのはチンパンジーとヨウムのアレックスだけ。

ヨウムを研究した理由とは

ペパーバーク博士がアレックスを研究の対象としたのには、この当時に行われていた動物実験に対する有り方でした。この頃、動物は「オートマトン(認知・思考の能力が無く、機械仕掛けのようなもの)」であるという考え方が定説となっていましたが、ペパーバーク博士は子供の頃から話しをする鳥を飼育していたため、こうした定説には懐疑的でした。

そこで、動物のコミュニケーション能力について研究を始める事となりますが、動物にストレスを与えず、ペパーバーク博士独自となる方法でヨウム(鳥)の研究を進めていくこととなりました。その方法とは特別な方法ではなく、実験動物として接さないというものでした。1羽の鳥として常に対等なやり取りを繰り返し、地道に信頼関係を築いていくというものだったのです。

しかし、研究費や研究室の確保から始まり、論文を突き返されたりと、ペパーバーク博士の研究は苦労の連発だったようです。
後編では、ペパーバーク博士がどのようにしてアレックスと接し、アレックスがどのようにして能力を開花していったのかを見ていきたいと思います。

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