私達も健康診断を受けた際「コレステロール値が高かった」「中性脂肪が基準値を超えた」という声を耳にする事がありますよね。食生活が乱れている場合に起こしてしまう「高脂血症」。これは猫にも同じ事が言えます。では「高脂血症」について解説しましょう。

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肥満体型が引き起こす「高脂血症」


愛猫の体型は肥満体型ではないでしょうか?人間の体が肥満体型である場合、様々な病気が引き起こされるのは猫も同じこと。猫も肥満体型のままで生活し続けてしまうと、今回ご紹介する「高脂血症」を始めとする、様々な病気が引き起こされるリスクがぐっと高くなってしまいます。

この高脂血症と呼ばれる病気は、猫の血液中に溶け込んでいる脂質の「コレステロール」と「トリグリセリド(中性脂肪)」、もしくはこのいずれかの濃度が高くなってしまっている状態のことを言います。

コレステロールも中性脂肪も、猫だけでなく人間の栄養管理としても、聞き馴染みのあるものですよね。これが人間であれば食事に気を付けたり、使う油を変えてみたりと方法がありますが、猫は人間と同じようにするわけには行きません。

飼い主の意識を変える事も大事

猫が高脂血症を引き起こしてしまうと、その症状として下痢や食欲の減退、元気の消失、嘔吐と言った症状が見られるようになります。さらに状態が悪化してくると、今度は神経症状のほかにも、「膵炎」や「動脈硬化」といった症状へと進行していきます。

これらの病気は命に関わる病気と言っても過言はないもので、状態を頬っておくことで、場合によっては命を落としてしまう可能性もある恐いものです。

SNSやテレビなどでも肥満体型で面白おかしく取り上げられるデブ猫達ですが、事態は深刻である可能性も高く、笑ってもいられない、いつ何が起きてもおかしくはない状況なのです。

体に爆弾を抱えてしまっているような状態ですので、そんな事で楽しんでないで一刻も早い処置をしなければいけません。きつい言葉かもしれませんが、まずは飼い主の意識を変える必要があるでしょう。

脂質と代謝のメカニズム

高脂血症の原因となる、コレステロールとトリグリセリドと呼ばれる脂質は、血液中では「蛋白質」と結びついた「リポ蛋白」という形で、通常は体内に運ばれていきます。

このリポ蛋白と呼ばれるものは、大きく4つの種類に分類され、腸から吸収された脂質を肝臓へ運ぶ役割を持つ「カイロミクロン」、その後、肝臓に運ばれた脂質は「超低比重リポ蛋白(VLDL)」「低比重リポ蛋白(LDL)」「高比重リポ蛋白(HDL)」と呼ばれる3つの種類ものに変換されます。変換された後は、猫の体内へと運ばれ、様々な組織の代謝へと用いられるようになるのです。

ちなみに、「LDL」とは悪玉コレステロール、「HDL」が善玉コレステロールのことです。HDLは血管や組織に溜まった余分なLDLを取り除いて回収し、肝臓へ持ち帰る働きをしています。

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病気や肥満が引き起こす高脂血症の原因

通常であれば、猫の体内ではこのようにして脂質が変換され、体を形成するものへと吸収されるのですが、高脂血症を起こしている場合、リポ蛋白と結合できずに遊離した状態の脂質が血液中に増加したり、単独あるいは複数種のリポ蛋白が増えてしまう状態に陥ります。

高脂血症の原因には「遺伝的な要因」や、特別に原因が見当たらないのに発症する「原発性高脂血症」、何らかの疾患に続発する「続発性高脂血症」と、いくつかの可能性が考えられ、原発性高脂血症である場合には「リポ蛋白リパーゼ欠損症」や「特発性高カイロミクロン血症」が要因となって引き起こされていると言われています。

腎不全や糖尿病が原因に


続発性高脂血症を続発させる要因としては、「糖尿病」や「甲状腺機能低下症」「クッシング症候群」「慢性腎不全」「ネフローゼ症候群」「蛋白喪失性腎症」などの基礎疾患に加え、肥満も高脂血症を起こす要因と考えられています。

通常の高脂血症である場合、食事をした後の10時間以内は一般的な高脂血症の状態ですが、これが食後12時間以上も経っているのにも関わらず、高脂血症の状態が続いている場合は、何か他の原因があると疑った方が良いかもしれません。

猫の高脂血症はなかなか目立った症状も見せず、静かに忍び寄ってくる不気味なものです。そのため、飼い主さんが愛猫の症状や、発見が遅れてしまうこともしばしばなのです。

高脂血症の症状とは

高脂血症が引き起こされることで、猫の食欲が消失したり、腹痛や下痢、嘔吐といった症状が見られるようになり、神経障害もみられる場合もあります。

しかし、高脂血症は「サイレントキラー」と呼ばれる病気のひとつでもあり、全く症状に現れず、知らないうちに症状が進行してしまうこともあります。

高脂血症の症状が進行すると「膵炎」や、稀ではありますが「動脈硬化」を併発してしまうことも。膵炎は、膵臓が自ら作り出す膵液中の消化酵素によって膵臓が消化され、炎症を起こす病気で、最悪の場合は膵臓の組織が壊死、結果として命を落としてしまうこともある怖い病気です。また、動脈硬化は、放置すると脳梗塞や心筋梗塞を起こしてしまうこともあります。

高脂血症の治療について

高脂血症の治療に関しては、高脂血症を引き起こしている原因によって変わってきます。

「糖尿病」や「甲状腺機能低下症」などの基礎疾患がある場合には、まず基礎疾患に対しての治療を優先的に行います。元となる病気を緩和することで、高脂血症の症状を断つ方法です。

一方、原発性高脂血症の場合は、食事の見直しや生活習慣の見直しを行う必要があります。獣医さんに低脂肪のフードを処方してもらいましょう。

肥満が原因である場合は、軽い運動を取り入れるなどして、体重管理を行うことも大切です。先述したように、肥満は高脂血症を引き起こす原因と考えられますので、高脂血症を予防するためにも、まずは食事の見直しが必要になります。愛猫は自分の食事のコントロールはできませんので、食事の管理は飼い主さんの大切な役割となるのです。

質の良い食事の知識を

猫の高脂血症が低品質なフードによるものである場合、ただやみくもに食事制限やフードの切り替え、脂肪の摂取を制限するといった単純な問題なのではなく、質の良い脂肪を選んであげると言う事が大切なのです。

例えば、魚の油などに含まれるオメガ3脂肪酸の「DHA」や「EPA」などは高脂血症に効果のある脂肪と言われており、血中の脂肪を低下させ、動脈硬化を予防するのにも期待が持てる脂肪なのです。

猫の高脂血症を治療するためには、こうした質の良い素材・食事を摂取させる食事療法が中心となりますので、飼い主さんもある程度は知識を付けるようにし、愛猫と2人3脚で病気を克服していくことが大切になってきます。はじめは大変かもしれませんが、栄養管理のコツさえ掴めば、すぐに慣れてしまうことでしょう。

早期発見の大切さ

高脂血症は高齢期の猫ちゃんが引き起こすことが多い病気の一つでもあります。愛猫がシニア期に入ったら念の為にも、年に1度程度の健康診断は必ず受診するようにしましょう。

こうした定期検診は、高脂血症だけでなく、他の病気の早期発見にも繋がります。病気は早期発見・早期治療を行なうことで、症状も重篤にならずに完治させられる可能性も大きくなりますが、発見が遅くなると重篤な症状を引き起こしてしまい、気がついた頃には手の施しようがない状態になってしまう可能性も高いです。

愛猫が一日でも元気で長生きできるように、栄養バランスがしっかりしているキャットフードを選び、肥満にならないように毎日の運動を心掛け、健康管理には十分に気を付けてあげましょうね。

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質の悪いキャットフードとは


猫の高脂血症は、質の悪い脂肪を使用したキャットフードや運動不足、肥満が原因で起こると言われており、最近では高脂血症を引き起こす猫が増えているというデータも。

質の悪いキャットフードとは、十分ではない栄養バランスで、脂質やタンパク質が極端に多いようなキャットフードが挙げられます。場合によっては「あえて」こうした栄養バランスに偏らせているフードもありますが、それとこれとは問題が違います。

比較的、質の悪いキャットフードは製造コストも低いため、非常に安価な価格で販売されているものがほとんどです。パッケージの可愛らしさや、キャットフードの粒の可愛らしさ、キャッチコピーの良さなどに惑わされず、しっかりと成分表を確認して選ぶようにしましょう。

さいごに

見た目こそ可愛らしいデブ猫たちは、一見するとただ太って動きが鈍いだけで、特に病気もなく元気に見えますが、実際に健康診断をした際に、血液検査で高コレステロールや中性脂肪が高く、高脂血症を起こしている可能性も十分に考えられるのです。

肥満体質は病気を引き起こすというのは、人間でも猫でも同じこと。しっかりと運動を行い、健康的な生活を送っていなければ、病気は静かに近づいてくるのです。

先述したように、「サイレントキラー」とも呼ばれる高脂血症は発症していても症状に現れない場合もあります。「ブサカワ」「ぽちゃカワ」など、かわいい体型と思って油断しておらず、深刻な事態に陥る前にしっかりと健康管理には気をつけるようにしましょう。

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