犬が持つ嗅覚や様々な能力は、時に人の想像を超えることがありますが、今回ご紹介するアメリカの忠犬「ボビー」は、4,800kmもの距離を辿って主人の元へと戻ったという、まさに私達の想像を超える偉業をやってのけた犬でもあります。
動物の持つ不思議な能力「帰巣本能」
日本ではひたすら待ち続けた忠犬ハチ公が代表ですが、アメリカからは、信じられない距離を移動して家路へと戻った忠犬「ボビー」をご紹介します。
記憶や習慣とは別に、元の住んでいた場所へと戻る本能を「帰巣本能」と呼びますが、身近で代表的な例で言えば、ミツバチが元の巣へ戻ったり、伝書鳩が家へと戻ってこられる事などが挙げられますね。こうした動物全般の帰巣本能に関しては未だに解明されているものではありません。
犬も同じく帰巣本能を持つ動物ですが、「感覚地図説」や「地磁気説」「方向細胞説」など、化学的にも色々な角度で動物の帰巣本能についての仮説が立てられていますが、謎は深まるばかりという状況です。個体差はあるものの、少なからず飼っている愛犬にも帰巣本能はあるはずなのです。
そして、今回紹介するボビーは帰巣本能に優れた動物の中でも、特に秀でた能力をもつ犬なのだということがわかる、偉業を成し遂げた犬として有名な犬です。
4,800km離れた自宅へと帰ったアメリカの忠犬「ボビー」
1923年、オレゴン州に住むフランクさんは、生後6ヶ月の子犬「ボビー」を連れて、インディアナ州のウォルコットへと休暇に訪れていました。しかし、そんな時です。ボビーは低速ながらも、走行中の車から飛び出してしまい、迷子になってしまいます。
フランクさんは数日間に渡って付近を捜索、地元の新聞局などにも情報を呼びかける広告を出すなどしましたが、ボビーが見つかることはありませんでした。失意の内に、フランクさんはオレゴン州シルバートンの自宅へと帰宅することとなります。
その6ヶ月後、なんとボビーはフランクさんの営むレストランに帰ってきました。6ヶ月間に渡って自宅を目指し、見事に帰宅したボビーはボロボロに汚れ、ひどく痩せてしまっていました。それもそのはず、ボビーが迷子になったのは2月の厳しい冬、移動してきた道のりには険しいロッキー山脈や砂漠、大きな川などもあったのでした。
数々の証言で明らかになった、ボビーの旅路
ボビーの奇跡の帰還劇はシルバートンの地元紙「the Silverton Appeal」に掲載され、多くの人々が知る事となります。こうしてボビーは一躍、有名な名犬として世間に知られることとなるのでした。そして、こうしてボビーが話題になるにつれ、ボビーの目撃情報も多く寄せられるようになりました。
オレゴン州の動物愛護団体は、ボビーの足取りを調査するため、実際にボビーに餌を与えたり、寝る場所を与えてきたりといった、帰路を目指すボビーと触れ合った人々の証言を集めることとなります。
そして、数々の証言の中、ボビーの帰路を目指す足取りは直線的なものではなく(オレゴン州シルバートンからインディアナ州ウォルコットまでのほぼ直線距離となるのが約3,400km)、インディアナ州から始まり、イリノイ州、アイオワ州、ミズーリ州など8つもの州をまたいで移動、自宅のあるオレゴン州シルバートンまでの道のりは4,800kmにも及ぶものだったということがわかったのです。
気になりグーグルマップで調べてみましたが、日本の最北端、北海道の宗谷岬から日本の最南端に位置する沖縄の平和の塔までが、おおよそ3,119km。日本横断以上に長い距離を歩いてきたことになります。このボビーの偉業は書籍化され、1926年に「Bobbie:A Great Collie of Oregon」というタイトルで出版されました。
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語り継がれるボビーの偉業
壮大な旅を終えた3年後となる1927年、6ヶ月間で4,800kmを旅した名犬ボビーは、息を引き取りました。ボビーが亡くなった後、オレゴン州ポートランドの市長からはボビーの偉業を称える賛辞が送られ、オレゴン州の動物愛護団体のペット墓地へと埋葬されました。
ボビーの偉業は今も語り継がれ、ボビーが亡くなった数年後にはシルバートンでパレードが開催されたり、シルバートンにある企業の壁には、ボビーの壁画が描かれています。因みに、初めてのパレードはボビーの息子「Pal」が先導を務めたのだそうですよ。
動物の持つ帰巣本能は不思議なものがありますが、ボビーの帰巣本能の高さには脱帽しますね。犬は時に様々な能力を発揮して、私達に素晴らしい感動を与えてくれる事が多いですが、忠犬や名犬と呼ばれる犬たちの中でも、ボビーは突出して驚くべき偉業を成し遂げた犬と言えるでしょう。
私達が突然、ぽつんとこんな距離の離れた所に置いて行かれたら、速攻で迷子になってしまいますね。ボビーの能力の高さも驚きですが、何よりも、ボビーが飼い主であるフランクさんに心を寄せていたことや、帰りたいという気持ちの強さが、こうした偉業を支えたのだと思います。素晴らしい犬ですね!
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