犬の種類には様々な特徴や性質、気をつけなければいけない事など、犬を飼う上では犬種別に特徴を理解することが必要になります。今回は「ワイヤー・フォックス・テリア」について、飼っている方もこれから飼いたいと思っている方もチェックしてみましょう。
ワイヤー・フォックス・テリアとは
ワイヤー・フォックス・テリアの体型は、背中が短く、体高と体長がほぼ同じで、横から見るときれいなスクエア型になっており、この均整の取れたスマートなスタイルから、「テリア界の貴公子」とも呼ばれ、現在はCMや映画でも大活躍です。
あのノーベル賞受賞作家の川端康成も、ワイヤー・フォックス・テリアの愛犬家だったことで知られています。
では、ワイヤー・フォックス・テリアとはどんな犬種なのでしょう。
ワイヤー・フォックス・テリアのルーツ
ワイヤー・フォックス・テリアは、とても古くから存在していた犬種で、そのルーツは定かではありませんが、ウェールズ地方の剛毛の毛質の「ブラックアンドタンテリア」が祖先犬となっていると考えられています。
18世紀末頃、貴族の間で流行したキツネ狩りに使用されていたため、「フォックス・テリア」と呼ばれるようになりました。
この頃、フォックス・テリアには、白毛の「スムースヘア」と茶色の「ワイヤーヘア」がいましたが、ワイヤーヘアがキツネ狩りをする際、キツネと間違えて誤射してしまうことがあったため、ワイヤーヘアは、白毛のスムースヘアと掛け合わせて、白毛に改良されたと言われています。
その後、1876年にはフォックス・テリアのスタンダードが規定され、1885年にはアメリカの愛犬家団体「AKC」に公認されましたが、100年後の1985年までは、スムースヘアとワイヤーヘアは同犬種として扱われており、交配も一緒に行われていたようです。現在では、「ワイヤー・フォックス・テリア」と「スムース・フォックス・テリア」として別犬種で登録されています。
ワイヤー・フォックス・テリアの性格
飼い主さんには従順で、家族にも愛情深く、友好的な性格ですが、家族以外の人や動物に対しては、とても警戒心が強く、縄張り意識が強いので、攻撃的になることがあります。本来の狩猟犬の気質から、ケンカっぱやいところや、小動物を追っかけたりすることがありますので注意が必要です。
ワイヤー・フォックス・テリアは、とても賢く聡明で、学習能力も高いので、自分なりに楽しみながら訓練を行いますが、その反面、独立心が強く、頑固な一面もあり、自分で納得しないことに関しては、言うことを聞かない傾向にありますので、幼少期からきちんとした上下関係を作り、しつけをしていかないと、成犬になった時に手が付けられなくなるということもあります。
また、テリア特有の気の荒さも持ち合わせていますので、しつけと称して、暴力を振るったり、罵声を浴びせていると、飼い主さんに対して不信感を抱き、攻撃的になることがあります。叱る時は叱り、褒める時は褒め、メリハリを付けながら上手にトレーニングをしていきましょう。
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ワイヤー・フォックス・テリアの特徴
ワイヤー・フォックス・テリアの特徴となるのが、スタイルの良いがっしりとした体型です。胴は短めで、前足に対して後ろ足はやや長め。また、全体的にはがっしりとした印象を与える細身の体つきで、バランスが取れた形をしています。
性格的な面がワイヤー・フォックス・テリアの最大の特徴となりますが、そのスタイルの良さに加え、硬い被毛と長いマズルもワイヤー・フォックス・テリアの特徴となっています。
体重は7kg〜9kgほど、体高は最大でも39cmほどとなります。耳はV字型ですが、先端がやや垂れているのが美しいとされています。ショードッグに出すわけでなければ何の問題もありませんが、あくまでも犬種としての理想は、先端がやや垂れているボタンイヤーと呼ばれるものです。
ワイヤー・フォックス・テリアの被毛
ワイヤー・フォックス・テリアは、ワイヤー状に硬い「オーバーコート(上毛)」と、柔らかく密生した「アンダーコート(下毛)」の二層構造からなる「ダブルコート」の被毛の持ち主です。
被毛自体はそんなに長く伸びるわけではありませんが、最低限の被毛ケアは必要となります。ブラッシングなど、週に2〜3回は行うようにしましょう。ブラッシングは被毛のケアとしても大事ですが、皮膚に刺激を与えて健康な皮膚・被毛を保つためにも大事なケアなのです。
ワイヤー・フォックス・テリアの被毛のカラーは、ホワイト地に「ブラック」や「ブラック&タン」のマーキングがあります。「ブリンドル」や「レッド」、「レバー」や「スレート・ブルー」のマーキングは好ましくありません。
ワイヤー・フォックス・テリアのトリミング
一般的に飼育されてるワイヤー・フォックス・テリアのトリミングは、クリッピング(バリカンで毛を刈られること)されていることが多く、毛質が柔らかい子が多いです。
中には、ストリッピングといい、ワイヤー・フォックス・テリア本来の硬い毛や色を保つためや、毛量を増やすために、頭や背中毛を完全に抜くトリミング方法もあります。これは、オーバーコートを抜くことで毛質が良くなり、アンダーコートを抜くことで通気性も良くなり、皮膚にも良いとされています。
しかし、ストリッピングは皮膚も赤くなり、見た目にも痛々しくなってしまうだけでなく、トリミング費用も高額になるなど、デメリットも多い方法です。
実際のところ、日本でペットとして飼育している際にはあまりストリッピングしているワイヤー・フォックス・テリアを見かけないかもしれませんが、ドッグショーに出陳する際は、ストリッピングをする場合が多いようです。
ワイヤー・フォックス・テリアは寒さに弱い
ワイヤー・フォックス・テリアは寒さにあまり強くはない犬種です。そのため、日本の気候はやや苦手なところもあるでしょう。基本的に室内飼いにし、日向・日陰がある部屋で飼育するようにしましょう。
また、年間を通じて温度差が少ないようにするようにしましょう。夏場は暑いからと言ってクーラーを効かせすぎないように、冬は日中に暖房を入れすぎて、夜との寒暖差が激しくならないように工夫しましょう。
ベッドやブランケットなど、自分で温度調整出来るようなものを用意しておくと、自分で温度管理を行うようになりますので、あまり暖房機器やクーラーだけに頼らないようにするのが大事です。
皮膚疾患の多い犬種でもあるので、乾燥やジメジメといった環境は苦手です。ブラッシングを行いつつ、皮膚の健康管理を行うようにしましょう。
ワイヤー・フォックス・テリアがかかりやすい病気
【膝蓋骨脱臼】
膝蓋骨脱臼とは、後ろ足の膝蓋骨(膝のお皿)が正常な場所から、内側か外側にずれてしまう(脱臼する)状態になる病気です。最初のうちは気付かない場合も多く、放置していると、どんどん悪化していきます。愛犬が散歩中スキップしたり、足を上げて歩くような素振りを見せた場合は危険信号です。
膝蓋骨脱臼を予防するためには、まず膝に負担をかけないことです。フローリングなどの硬く滑る床には、カーペットやラグを敷きましょう。また、後ろ足を掴んだりするようなことも、絶対にしてはいけません。
【二重睫毛】
二重睫毛とは、まつげが二重に生えることで、内側に生えたまつげが眼球を傷付けてしまう病気です。常に眼球にまつげが刺さっているので、違和感があったり、痒くなって目をこすってしまい、目の表面だけでなく、角膜にも傷を付けることになり、さらに炎症を引き起こしてしまいますので、日頃から愛犬の目のチェックは欠かさず行いましょう。
ワイヤー・フォックス・テリアのしっぽについて
テリア特有の気の強さを持つワイヤー・フォックス・テリア。その気の強さは、ペットとして飼育する際にも苦戦する場合もあるでしょう。狩猟を目的とした一般的なワイヤー・フォックス・テリアは断尾を行いますが、これは昔からの慣習によるもの。
というのも、断尾された尻尾は僅かに掴める程度が残されますが、これはスイッチの入ったワイヤー・フォックス・テリアを引っ張るために残されたと言われています。
小動物など、穴に入っていった獲物を追いかけている際に、飼い主の呼び戻しの声も聞こえずに追いかけてしまうため、穴に入ったワイヤー・フォックス・テリアを引っ張り出すのに、断尾する際には少し残していると考えられているのです。
ワイヤー・フォックス・テリアの特徴でもある、気の強さとハンティング能力を表している話ですね。ペットとして飼育する際には、断尾する事もなくなりつつあります。
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ワイヤー・フォックス・テリアはしつけが大事
ワイヤー・フォックス・テリアは、何かがきっかけになってスイッチが入ると、周りが見えなくなるほど興奮しやすいところがあります。
狩猟犬としてなら、この高い集中力が役に立つのですが、一般のペットとして飼育している場合、このスイッチが入ると、飼い主さんの声も届かなくなり、ケガや事故を招く場合もありますので、飼い主さんの一声で冷静になれるような訓練が必要になるでしょう。
ワイヤー・フォックス・テリアは、テリア気質が強く、あまり飼いやすいとは言えない犬種かもしれません。性格も頑固で、短気で興奮しやすく、一筋縄ではいかないことも多いでしょう。
そのため、幼少期からのしっかりとしたしつけが大事になると言うことを理解しておきましょう。初めて犬を飼うという方は、少々レベルが高い犬種ですので、避けたほうが良いかもしれません。
ワイヤー・フォックス・テリアと暮らすために
小型犬ながらパワフルなワイヤー・フォックス・テリアは、多めの運動量が必要になります。1日2回くらい、30~1時間くらいの長めの散歩の他にも、ドッグランなど足場の良いところでの自由運動をしたり、ゲームをして遊ぶなど、頭や体を刺激するような運動を取り入れると良いでしょう。
この犬種は、運動欲求を満たしてあげないと、ストレスが溜まって、吠える、噛む、物を壊すなど、犬特有の問題行動を引き起こすことがありますので注意が必要です。
しかし、この犬種は、家族に対してとても愛情深く、家族が喜ぶことを進んでやり遂げようとします。少し手がかかるかもしれませんが、長い目で見て、時間をかけてしつけしていきましょう。必ず、最高のパートナーとなりますよ。
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