犬ではダックスフンドのような胴長犬種に多く発症する「椎間板ヘルニア」とはご存じでしょうか。実は、犬ほどではありませんが、胴長の猫などでも発症することで知られています。今回は椎間板ヘルニアに関して、症状や予防策について解説していきます。

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椎間板ヘルニアとその症状について

背骨にある「椎間板」とは、体の重みを支える背骨・脊椎の間にあるクッションの役割をしたゼリー状の組織のことで、「椎間板ヘルニア」とは、このクッションの役割をしている椎間板が破れてしまい、形が変形してしまうことで、他の部位が圧迫されてしまう状態のことを言います。この圧迫によって、痛みや痺れを引き起こし、歩き方がおかしくなってしまったり、歩くと痛がったりするという症状が見られます。

また、歩行障害だけではなく、症状が重症化してしまうことで下半身不随になることもあります。下半身不随になってしまうと、猫が自発的に立ち上がることはもちろん、排泄なども困難な状況になってしまうため、一生涯の介助が必要となるでしょう。そして、こうした障害だけではなく、痛みや痺れも伴うため、猫も飼い主さんも気が抜けない状況になってしまいます。

椎間板ヘルニアの好発猫種とは


猫の椎間板ヘルニアに関しては、犬に比べると発症例は少ないです。しかし、椎間板ヘルニアを発症しやすいと考えられている猫種はいくつか存在し、特に胴長や大型の猫種に発症することが多いと言われております。

最近では、ペットショップでも見かけることが多くなってきた「マンチカン」のような胴長の猫種や、「メインクーン」や「ノルウェージャン・フォレスト・キャット」などの大型猫種が好発猫種として挙げられます。

このような胴長や大型の猫種に椎間板ヘルニアが多いと言われる理由には、背骨への負担が他の猫種よりも多いと考えられているためです。このほか、「ペルシャ」や「ブリティッシュ・ショートヘア」などの猫種も好発猫種として挙げられています。

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椎間板ヘルニアの原因とは

椎間板ヘルニアは、交通事故などによって背骨への強い衝撃が加わることや、高所からの飛び降りなど、背骨に強い圧力がかかってしまうことで、椎間板が破れてしまうことで発症してしまいます。

また、肥満体型の猫も注意が必要です。通常の体重の猫に比べ、肥満体質である場合には、断続的に背骨に圧力が加わってしまうことになり、背骨への負荷が多いために椎間板ヘルニアを発症してしまうこともあるのです。

この他、老化による発症も少なくありません。適正体重であっても、猫が老化していくことによって「コラーゲン繊維」が減少してしまい、椎間板が破れてしまう、もしくは変形してしまうことで椎間板ヘルニアを発症してしまうのです。椎間板ヘルニアを発症する要因にも色々ありますが、基本的には強い圧力がかかってしまうことで、椎間板ヘルニアを発症してしまうのです。

非ステロイド系薬などで痛みを緩和

椎間板ヘルニアを発症してしまった場合、まだ症状が軽症である場合には、患部の痛みを緩和するため、痛み止めなどの対症療法が行われます。用いられるのは非ステロイド系の薬や抗炎症薬などで、これらの薬を使用し、痛みをできるだけ和らげていくのです。

こうした対症療法によって徐々に痛みを和らげていき、様子を見守ります。その後、痛みも減り症状が落ち着いてから、今度は椎間板ヘルニアを予防、もしくは再発させないための治療や対処が行われます。

この間、当然ですが激しい運動はもちろん、極力は症状が悪化してしまうような運動は避けなければいけません。また、痛みがある状態では何も出来ませんので、無理に運動をさせてダイエットを行うといった行動も避けましょう。

椎間板ヘルニアの治療について


椎間板ヘルニアの本格的な治療に関しては、椎間板ヘルニアを引き起こす要因となる肥満体質の改善など、原因となるものの解消を中心に行っていきます。前述の通り、痛みがある場合には痛みを緩和させてからとなります。

また、こうした治療でも成果が出ない場合には、外科手術を行い、痛みのもととなる部位の切除を行っていきます。しかし、症状が重い場合などは外科手術を行っても、完全に完治すると言うわけではありません。

術後は、圧迫されていた神経系統の回復を促すために、リハビリを行う必要があります。リハビリもしっかりと行わなければ、その後の愛猫が苦労することになるでしょう。また、場合によってはうまく回復しない場合もあるため、長い目で見る事も必要になります。

完治することはない椎間板ヘルニア

前述の通り、椎間板ヘルニアは外科手術を行なったからと言って完治させることは出来ません。そのため、術後も油断せずに飼い主さんがしっかりとケアを行う必要があります。中でも体重のコントロールは重要になるでしょう。

また、重度の椎間板ヘルニアである場合には、猫が単独で歩いたり、立ち上がることもできない状態になるでしょう。そのため、排泄の世話などの介助が必要になります。また、神経が圧迫されることで、自力で排泄が出来ないといったケースもあります。

こうした場合には、排便を促すようにお腹をマッサージしたりといったがケアが必要になったり、尿を排出させるためのカテーテルを通し、強制的に排尿させるといった介助が必要になってきます。

椎間板ヘルニアの治療費について

猫の椎間板ヘルニアに関する治療費ですが、おおよそ20万円程度は覚悟したほうが良さそうです。

まずは椎間板ヘルニアかどうかを検査する際にも費用が発生しますが、実際に治療が開始されてからも検査費用は発生するため、入院費や手術代も含めて20万円ほどの治療費が予想されます。

症状の状態にもよりますが、軽症であれば完治させるまでに1ヶ月前後を要しますので、その間の検査費用も考えておきましょう。また、重度である場合にはリハビリや術後のケアも必要になってきます。場合によっては上記に挙げた金額以上に費用も発生することもあるでしょう。

金銭面的にも大変になりますが、最も大変なのは猫本人です。なんとか症状を軽くし、元の生活に戻れるよう、飼い主さんも頑張らなければいけませんね。

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椎間板ヘルニアにならないために

前述の通り、胴長や大型の猫種はもちろん、老齢の猫に関しては、適正な体重維持を心がけるようにして、激しい運動や飛び降りといった行為はなるべく避けるようにしましょう。

肥満体質は椎間板ヘルニアに限らず、様々な病気を引き起こしてしまいます。体重が重くなることにより、体を支える背骨や関節にも多くの負担がかかったり、猫自身も体重の増加によって動くことが面倒になってしまい、肥満の悪循環を招いてしまうのです。

椎間板ヘルニアを予防するためにも、まずは適切な食生活を心がけることが重要です。症状が出てからでは遅いので、肥満体質にならないように、愛猫がまだ若い頃から気を付けるようにすると良いでしょう。肥満は椎間板ヘルニアに関わらず、様々な悪影響を及ぼすものです。

家庭内の飼育方法も見直してみましょう


愛猫を椎間板ヘルニアから守るために出来ることは、まだまだあります。そのひとつが自宅内での飼育方法の見直しです。

可能であれば、自宅内の床にも気を使いたいところです。特に猫の性質上、犬と比べると、壁や家具を登ったりなど、高いところから飛び降りたりするといった機会も多いと思います。

ですので、通常の硬い床よりも、クッションフロアーのような柔らかい床にすることで、腰や関節の衝撃をいくらか和らげてくれますので、こうした部位に負担がかからないような生活を送らせてあげることが大切です。

また、可愛いからと言って愛猫を抱っこばかりするのも良い習慣とは言えません。このような行為は猫の足腰を軟弱化させるだけですので、しっかりと歩かせ、必要な筋肉量を維持するように心掛けましょう。

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