犬の病気、トキソプラズマ症は「ノミ」や「ダニ」をはじめとした「寄生虫」による病気や症状は様々なものがあり、寄生虫による被害をですが、予防策などはあるのでしょうか?今回は犬の寄生虫のひとつ「トキソプラズマ」による症状や予防法について解説します。

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寄生虫とは

「寄生虫」は、犬の世界でももちろん、猫や人間界でも存在するもので、この寄生虫が体内や体に「寄生」することで、様々な悪影響を体に及ぼすものです。
「ダニ」や「ノミ」など、この寄生虫には様々な種類が存在し、犬や人間にも様々な寄生虫を原因とした病気が存在します。
こうした寄生虫が、体のどこかを住処にするわけですが、そこは寄生虫にとっては食料の宝庫でもあり、繁殖の場でもあるわけですが、この寄生虫が増えていくことによって、やがて犬の体も衰弱していき、最悪の場合は命の危険も及ぼす影響を持ちます。
知れば知るほどに気持ちが悪くなるかもしれませんが、こうした寄生虫による悪影響を未然に防ぐためにも、しっかりとした知識を持ち、対策をとれるようになれば、寄生される心配もグッと減ります。
また万が一寄生された場合も、早期発見・早期治療を施すこともできます。

寄生虫「トキソプラズマ」とは

寄生虫の1種「トキソプラズマ」とは単細胞生物の病原体で、主に猫に感染する寄生虫として知られており、「ズーノーシス(人畜共通感染症)」としても知られる寄生虫です。
トキソプラズマは主に経口感染によって感染しますが、「オーシスト」と呼ばれる卵のようなものが、猫の糞便、食べ物、生肉などに感染している物を、犬が舐めたり食べたりしてしまうことで感染してしまいます。
ただし、犬はトキソプラズマに「感染」はしますが、「宿主」となることはありません。
トキソプラズマの最も適した宿主は「猫」であり、自然界における猫の行動サイクルが、トキソプラズマを成長させ、感染経路を広げてしまうのです。

トキソプラズマは妊娠初期には注意が必要


主に、トキソプラズマ症の影響を強く受けるのは、子猫や母猫、免疫力の低下している犬や成猫です。免疫力の弱い犬や猫が感染してしまうと、非常に危険な状態に陥る場合があります。
ただし、犬がトキソプラズマに感染するのはごく稀です。また、免疫力のある、健康な犬が感染した場合は、特に目立った症状が見られないことも多く、万が一症状が現れたとしても、発熱や筋肉痛程度の症状で収まります。
しかし、妊娠中の犬や、子犬、免疫力の低下している成犬が感染すると話は別です。免疫力の弱い犬や猫がトキソプラズマ症を発症してしまうと、肺炎や脳炎となる可能性もあり、妊娠中の犬に関しては流産・死産といった最悪の状態も招いてしまうのです。

トキソプラズマの成長

前述の通りトキソプラズマは、主に口から入ることで感染する「経口感染」が一般的ですが、経口感染をした後に猫の体を宿主とし、3つの形態を経て成長していきます。

【オーシスト】
感染後に小腸へと寄生し、有性生殖して個体へと形成します。この個体が卵のようなものとなり、感染した猫の糞便に混ざって排泄されます。トキソプラズマの感染後、2〜3週間はこのオーシストを排泄するので、排泄された糞便が、他の猫や動物への感染源となる可能性が非常に高くなります。また、オーシストは糞便中であっても、数ヶ月以上は生存することができます。

【タキゾイト】
タキゾイトは、先述のオーシストの中から虫が出てきたもので、細胞内に寄生し、1つの個体から更に生殖を繰り返していく無性生殖により、急激に生殖していきます。

【シスト】
タキゾイトの数千に及ぶ集合体で、細胞組織内に球体の壁を作って寄生しながら、無性生殖によって増殖したものを、シストと呼びます。

猫が最適な宿主である理由

猫にトキソプラズマ症が起きるのには、自然のサイクルが関係しています。
先述のとおり、トキソプラズマは3段階に分かれて成長していきますが、第1段階として、経口感染により猫に感染し、オーシストが作られ、排泄されることでオーシストが体内から体外へと移動します。
第2段階では、この排泄された糞便を、ネズミなどが食べることでネズミへと宿主を変え、ネズミの体内ではオーシストからタキゾイト・シストへと成長していきます。
第3段階では、この感染したネズミを猫が捕食し、ネズミの生肉を食べることで感染していくといったように、自然のサイクルを利用してトキソプラズマは成長し、感染経路を広げていくのです。
犬がトキソプラズマに感染するリスクが高いのは、散歩中かもしれません。
例えば、トキソプラズマに感染している猫の糞を、散歩中に舐めてしまっても感染しますし、糞を踏んだ猫の足跡を舐めても感染してしまいます。
また、トキソプラズマは、自然環境下においても数ヶ月にわたって生存することができ、土や水たまりといった場所にも潜むことができるのです。

トキソプラズマの予防策

上記でも触れたような、トキソプラズマに感染してしまうリスクを少しでも減らすため、犬も猫も飼っている場合は、外に自由に出入りできるような環境で飼育しないことが一番の予防策となります。
外ではトキソプラズマに限らず、どんな寄生虫が潜んでいるかわかりません。そのため、トキソプラズマに絞って予防したところで、他の寄生虫に寄生される心配もあるのです。
すべての寄生虫・ウイルスを予防しつつ、外飼いを行うということは現実的ではありませんので、最低限の予防策として室内飼いを徹底するようにしましょう。
もちろん、散歩やキャンプなど、犬がどうしても外に外出する機会はたくさんあります。こうした場合にも、家に帰ってきた時にはしっかりと足を洗う事や除菌を行うこと、家屋の中に菌や寄生虫を持ち込まないような配慮をしっかりと行うように気を付けましょう。

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「生肉」は70℃で10分間


トキソプラズマは熱に弱いので、肉を食べさせる・食べる場合には、必ず「火」を通した肉をあげるようにしましょう。オーシストの状態では「70℃で10分間加熱」すると、死滅させることができます。
一方、人の場合は犬猫からの感染というよりは「豚」や「羊」からの感染が最も疑われる感染経路ですので、「生肉」を食べる際は、上記の要領で火を通した肉をたべるようにしましょう。
ただし、これらの動物に関しても「家畜伝染病予防法」が定められており、トキソプラズマの感染が確認された時点で、これらの動物への対策・措置がとられるようになっていますので、感染が認められた場合には、スーパー等に感染された肉が並ぶという事は、ほぼ少ないといえます。

トキソプラズマ症の治療について

犬がトキソプラズマに感染しても、妊娠中でなければ、そんなに脅威となることはありません。治療に関しても、抗生剤の投与による治療となります。
犬がトキソプラズマ症を発症した際の治療ですが、前述の通り、基本的には犬がトキソプラズマ症の強い影響を受けるわけではなく、稀に発熱などの症状を発する程度のものですので、治療に関してはこうした症状に対する対症療法が行われるでしょう。
ただし、免疫力の低下している犬、妊娠中の犬、子犬などがトキソプラズマ症を発症してしまうと、肺炎や脳炎など重篤な症状がみられるようになります。こうした場合の治療に関しては、抗生剤の投与による治療が行われ、症状に対する対症療法も行われるでしょう。
妊娠中の犬はトキソプラズマ症を発症してしまうことで、子犬に大きなダメージを与えてしまいますので、十分に気を付けなければいけません。流産や死産といった症状が主なので、治療のかいなく、子犬が命を落としてしまう可能性が高いのです。

心配があるようなら検査をしましょう

トキソプラズマ症は、健康体の犬であればあからさまな症状を表さずに、飼い主の健康を脅かすために近づいてきます。ほぼ無症状であるため、トキソプラズマ症を発症しているかどうか、トキソプラズマの宿主となっているかの判断は外見や様子からは判断が出来ないでしょう。
そのため、トキソプラズマ症の検査に関しては採血が行われ、判断されます。ただし、子犬や子猫、免疫力の低下している犬や猫であれば急性の症状も現れますので、症状が見られる場合には検便による検査が行われるでしょう。
症状から判断することは難しいので、散歩中に怪しい場所を歩いた場合や、拾い食いをしていた様子、キャンプなどで草むら等に入ってしまったなど、飼い主さんが不安に感じた事があれば、念のため検査を行ってみても良いかもしれません。

感染経路を理解して、感染リスクを軽減


寄生虫は、生活のいたる場面に潜んでいてもおかしくないものです。寄生虫による感染を未然に防ぐためにも、徹底した室内飼いや、犬・猫を飼育している場合には猫のトイレ、部屋を常に清潔に保つことが最善の策となります。
飼い主さんがしっかりと寄生虫の感染経路を理解するようにし、予防策を適切に講じ、感染のリスクを断つことが重要となります。
外飼いで猫を飼育している際には、ネズミなどの狩りを行っている様子は無いでしょうか、犬も猫も不衛生な草むら、水たまり、泥水を舐めると言った行動は取っていないでしょうか。
文字で書くと難しく感じますが、キャンプ場やドッグランにもこうした場所はありますので、念のため近づかないようにすることが、感染リスクを軽減することにつながるでしょう。

寄生虫に感染しない・させないために

人間の生活においても、通常の食生活では火を通す事は当たり前に行われていますし、外出した後のうがい・手洗い、食品の冷凍(24時間以上)、野菜や果物を洗うといった行動は、普段の生活において日常化されていると思います。
当たり前といえば当たり前の行動となりますが、基本的なこうした行動や予防策をとることで、ズーノーシスによる被害を最小限に留めることが可能となります。
危険な寄生虫ではありますが、神経質になりすぎず、「生肉」を食べさせない事を念頭におきながら、普段通りに清潔な生活を送っていれば、実際のところは感染することは考えにくいです。
犬の健康の為にも、我々、人間の為にも、常に清潔な生活を送るようにしましょう。

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