「狆」と一緒に暮らすために、「狆」はどのような特徴や性質で、飼育上どのような事に気をつけなければいけないのでしょうか?犬を飼う上では犬種別に特徴を理解することが必要になります。今回は犬種の一つ「狆」について、飼っている方もこれから飼いたいと思っている方もチェックしてみましょう。

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狆とは

「狆」とは、「犭(けものへん)に中」と書きますが、実際古くから完全室内で大切に飼育されてきた座敷犬です。
また、中国原産であるパグやペキニーズと似た見た目や名前から、一見中国の原産と思われがちですが、日本原産となる犬種です。

ちなみに、「狆」という名前の由来は、「ちいさいいぬ」が「ちいさいぬ」になり、「ちいぬ」、「ちぬ」やがて「ちん」と、呼び名が詰まって付いたと言われています。
昔は小型の犬のことを、姿や形に関係なく「狆」と呼んでおり、庶民には「ちんころ」などと呼ばれていたこともあったそうです。

狆のルーツ


狆の原産は日本とされていますが、祖先は紀元前からチベットの寺で長い間飼育されていたチベタン・スパニエルやペキニーズではないかと考えられています。

「続日本紀」によると、奈良時代の732年に新羅から日本の聖武天皇へ「蜀狗(蜀=現在の四川省、狗=犬)」を一頭献上したと言われています。
また、この当時の日本では中国や朝鮮に派遣された使者が、日本に多くの狆を持ち帰ったという記録もあります。

17世紀の江戸時代に入ると、「生類憐れみの令」を発令した、第5代将軍の徳川綱吉は、江戸城にてこの狆を室内愛玩犬として飼育されており、狆御殿を作り、狆専用の医者まで存在したようです。
また、大名をはじめ、大奥でも寵愛され、上流社会の女性のたちの間で「抱き犬」として人気を博したと言われています。このことから、狆は皇室や将軍、資産家たちにより、とても贅沢な暮らしをさせられていたことが分かります。

狆が最初にイギリスに渡ったのは、1853年にアメリカのペリー提督が日本へ来航した際、4頭の狆をアメリカに持ち帰り、そのうちの2頭のつがいの狆をイギリスのビクトリア女王に献上したことがきっかけです。その後、多くの貿易商人により、沢山の狆がヨーロッパやアメリカで売買されるようになりました。

1862年にはイギリスの展覧会において、「ジャパニーズ・パグ」という名称で紹介され、1870年にイギリスの愛犬家団体「KC(ケネル・クラブ)」で公認されており、狆は日本原産犬種で、初めて海外の犬種団体に公認された犬種となりました。

狆の性格

狆は「抱き犬」として長く愛され続けた犬種だけあって、飼い主さんの膝の上に乗って一緒に過ごしたり、ゲームをして遊ぶことが大好きです。また、見知らぬ人や犬でも友好的に接することができ、子供との良い遊び相手にもなる模範的な家庭犬となるでしょう。

深い愛情と忠誠心を持つ狆は、常に飼い主さんを喜ばそうと一生懸命努力します。また、感受性が豊かで、飼い主さんの気持ちに敏感なところがあり、飼い主さんが少しでも悲しんでいる様子を感じると、そっと傍へ来て寄り添うところがあります。

狆は、プライドが高く、強情な面も持つため、服従関係がつきにくく、甘やかし過ぎると言うことを聞かなくなることもあります。褒める時は大袈裟に褒め、叱る時は強く叱らず、根気良く躾けていきましょう。

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狆の被毛


狆の被毛は、シルキータッチとも言われ、とても滑らかで柔らかく、長い被毛で覆われており、耳、首、大腿、下腿、尾には豊富な飾り毛があります。

狆の被毛のカラーは、「ブラック&ホワイト」「レッド&ホワイト」があり、顔の斑は目の周辺から耳全体にかけて、左右対称が好ましいとされています。特に、マズル(鼻先から口にかけた部分)から頭頂にかけて、幅の広い白のブレーズがあることが望まれています。

狆がかかりやすい病気

狆のように眼が大きい犬種に多いとされる、「乾性角結膜炎」という病気があります。要は「ドライアイ」のことです。原因は、狆のように眼球の表面積が大きいこと、遺伝によるもの、涙腺や第三眼瞼腺に異常があるために発症します。
常に涙が出ていたり、まばたきが多かったり、角膜が白く濁っていないか、日頃から目のチェックをしてあげましょう。

また、狆は「膝蓋骨脱臼」という病気も気を付けなければいけません。この病気は、後ろ足の膝蓋骨(膝のお皿)が正常な場所から、内側か外側にずれてしまう(脱臼する)状態になる病気です。

最初のうちは気付かない場合も多く、放置していると、どんどん悪化していきます。愛犬が散歩中スキップしたり、足を上げて歩くような素振りを見せた場合は危険信号です。
膝蓋骨脱臼を予防するためには、まず膝に負担をかけないことです。フローリングなどの硬く滑る床には、カーペットやラグを敷きましょう。

狆と暮らすために


狆を飼育する上で気をつけなければならないのが、狆の特徴でもある「短吻種(目の前から口までの長さが短い犬のこと)」である言う事です。短吻種の犬種は、体の構造的に呼吸器の機能が弱く、麻酔を行う場合は若干リスクが高くなるので配慮が必要です。

また、短吻種の犬種は「体温調整が苦手」な犬種でもあります。熱中症には十分気を付けましょう。そして、熱や気圧の変化にも弱いことから、飛行機での輸送を断られる場合がありますので、飛行機を利用して旅行へ行く際は、予め航空会社で確認をするようにしましょう。

狆は運動量も少なくて良く、留守番も上手にでき、ストレスを溜めて問題行動を起こすようなこともないため、忙しい方や初心者でも飼育できる犬種と言われています。だからと言って、ゲージに入れっぱなしで、コミュニケーションも取れないような環境で飼育するのではなく、気分転換がてら、外の空気を吸わせに、外へ連れ出すことも必要です。

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