犬も人間と同様に「痴呆症」という病気がありますが、犬の脳や神経が関係が関係している病気です。犬の老齢化が進んでいる近年では、この痴呆症の犬も多く見られるようになりました。今回は犬の「痴呆症」について考えてみましょう。
老化による痴呆症
近年では、犬の長寿化が進み、昔に比べると長生きをする犬が増えてきたのではないでしょうか。これは、家の中で家族同然として共に暮らす子が増えたため、それに伴い、愛犬の体調の変化にも気付きやすくなったとも考えられます。
しかし、犬の平均寿命が延びた一方で、愛犬の老化に対する対策も必要になってきたのも事実です。犬も人間と同様、高齢化が進んだことで痴呆症や認知症の犬が増えてきています。痴呆症になると、初めのうちはゆっくり進行しますが、飼育環境の変化や病気など、何らかが原因となって急激に悪化することもあります。
それでは、どうして痴呆症になるのか、どんな症状が現れるのか、痴呆症の対策などはないのか、愛犬の痴呆症について考えていきましょう。
痴呆症の原因
痴呆症とは、愛犬の老化に伴い、脳の神経細胞の減少や自律神経が機能しなくなることが原因で、愛犬の感情が乏しくなったり、運動能力が低下して、今まで学習したことを忘れたり、家族とのコミュニケーションが取れなくなってしまう状態のことを言います。
また、脳梗塞や脳出血などの脳の病気から起こる痴呆や、精神的ストレスが原因で、脳内における酸化物質が蓄積し、痴呆症を発症するということもあります。
痴呆症は、個体にもよりますが、11~13歳くらいから発症することが多く、特に柴犬などの日本犬や日本犬系の雑種が痴呆症になりやすい傾向にあると言われています。
夜泣き対策
痴呆症は、昼夜が逆転して、昼間に寝て、夜に起きて活動することが多くなり、夜中に意味もなく大声で鳴いたり、家の中を徘徊して家具に挟まって出られなくなる等の症状があります。
愛犬が昼夜逆転しているなら、なるべく昼間に体を動かしてあげることです。こまめに声を掛けて寝かせないようにしたり、少しでも外へ連れ出して散歩をしたり、日光浴をさせて、体内時計を正常に戻してあげましょう。
また、少しだけ体を疲れさせる事でも、夜にしっかりと眠ってくれるようになるでしょう。そのためにも、昼間は体を動かす事が大事になります。いつまでも昼夜逆転しているのを放おっておくと、ずっとそのままになってしまいますので、大変ではありますが、少しずつもとに戻してあげるようにしましょう。
痴呆症の症状とその対策
また、今まで学習したことができなくなったり、飼い主さんの顔を認識できなかったり、名前を呼んでもボーッとして無反応になることもあります。さらには、感情のコントロールがうまくできなくなり、喜怒哀楽が激しくなって、極端に甘えてきたかと思えば、急に攻撃的になることもあります。
これは、愛犬の傍に寄り添い、日頃から名前を呼んであげるなど、優しく声を掛けてあげることが大切です。そして、夜に眠る際は添い寝をして安心させてあげましょう。
添い寝が難しい時は、飼い主さんの匂いが付いた衣服などを置いてあげるのも良いでしょう。犬は、聴覚と臭覚に優れた動物なので、聴覚(飼い主さんが呼ぶ声)と臭覚(飼い主さんの匂い)を刺激してあげることによって、脳に刺激を与え、痴呆の症状が起こりにくくなります。
痴呆の症状を軽くするには
痴呆症は、放って置くとどんどん進行が進み、残念ながら今の医学でも治すことが難しいのですが、症状を軽くしたり、遅らせることはある程度可能であると言われています。
痴呆症に効果があるのは、脳に刺激を与えることが大切であり、毎日外へ散歩に行くことは、愛犬の心や脳を刺激するだけでなく、足腰の運動機能を維持することにも役立ちます。毎回同じ散歩コースではなく、違うルートに変えると、愛犬の好奇心や探究心が刺激されてさらに効果的です。
このように、日頃からちょっとした事でも同じような行動をせず、変化に富んだ生活を送らせるようにしましょう。愛犬に刺激を与えることは、愛犬の脳に刺激を与えることにも繋がりますので、日頃からすぐできる簡単な症状を遅らせる方法としておすすめです。
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痴呆症を予防・対策のための食事
また、毎日の食事にカボチャやほうれん草、ニンジンやリンゴ、小松菜やブルーベリーなど、抗酸化栄養素を含んだ食事に切り替えたり、EPAやDHAなどのサプリメントを与えることも痴呆症を予防したり、症状を軽減する役割があると言われています。
痴呆症は、飼い主さんが仕事などで忙しくて、愛犬とのコミュニケーションが少なかったり、普段の生活が単調な子がなりやすいとも言われているため、普段から愛犬に話しかけたり、沢山スキンシップを取ってあげることで、愛犬にとって脳に刺激が与えられ、痴呆予防にもなるのです。
脳にとってよい栄養を摂取させて、しっかりと愛犬とコミュニケーションを摂ることで、より一層に症状を軽減させることに繋がります。
柴犬は痴呆症になりやすい?
犬の痴呆症のなかでも、犬種による発症率の違いがあることがわかってきています。中でも人気犬種の「柴犬」は痴呆症になりやすい犬種として知られており、80%以上もの割合で柴犬が痴呆症を発症するという研究結果も出てきているほどです。
なぜ柴犬だけ痴呆症?と不思議に感じてしまいますが、日本犬である柴犬は長い歴史の中で、日本食を食べて生活してきたと言うことが一つの要因に挙げられています。もちろん、日本食が痴呆を招くのではなく、柴犬が日本食を食べなくなったことで痴呆症を招いていると考えられているのです。
ご存知の通り、日本食は魚中心の食事であり、魚には痴呆に対して効果が期待できるDHAやEPAが豊富に含まれています。柴犬は長い歴史の中で、このように日本食を食べてきた犬種のひとつなのです。
DHAやEPAの効果
近年では犬にドッグフードを与えることが当たり前となっていますが、ドッグフードは動物性タンパク質を含んでいるものの、その主原料は主に「肉」がメインとなっているものがほとんどです。
上記の柴犬の例で行くと、これまで魚を食べてきたであろう柴犬はドッグフードを食べることによって、本来、摂取していたはずの「魚の栄養」が不足してしまっていることが、柴犬に痴呆が多い原因と考えられています。
この逆を考えると、やはりEPAやDHAなどの不飽和脂肪酸と呼ばれる成分は、犬の痴呆に対して良い効果を与えるものだということがわかりますね。
肉中心の食事が悪いのではなく、魚を織り交ぜた食事のほうが、より痴呆に対しての予防効果が期待できるのです。
初期症状が見られたら
愛犬の様子がいつもと違ったり、認知症の症状が疑われる場合には、念の為動物病院で検査を行ってみましょう。まさかと思いながら毎日を過ごしているより、しっかりと認知症であることを認識しなければ、愛犬の痴呆症の進行を早めてしまうことに繋がってしまいます。
悲しいことではありますが、現実的に病気を受け止めて、少しでも痴呆症の症状を遅らせることに注力しましょう。完全に完治させることは難しいかもしれませんが、現状をできるだけ維持させることは十分に可能です。
痴呆症は身近な方法でも十分に対抗することは出来ますので、まずはストレスの少ない環境を作り、食事の管理を適切に行い、刺激に富んだ生活を送らせるようにしましょう。
家庭内で介護する際のポイント
愛犬が痴呆症を発症してしまったら、家庭内の家具の配置や歩きやすい道を確保してあげなければいけません。誤って頭をぶつけてしまったり、棚と棚の間に挟まって動けなくなってしまうこともありますので、細かな部分にも十分に配慮するようにしましょう。
また、愛犬用に「柵」などを新たに用意するのも一つです。痴呆症の症状には、ぐるぐるとその場を回るような症状も見られます。一部屋潰してしまうことになりますが、ぐるっと柵で愛犬を囲っておくのも一つの方法です。特に留守中などはこうした方法で置いておかなければ、思いもしない事故に繋がりかねません。
出来る限り愛犬が運動できるようなスペースを確保し、かつ事故が起きないような状態にしてあげることが大切なのです。
さいごに
痴呆症は、医学が発達した現代でも治すことが不可能であると言われている病気です。しかし、早期発見であればある程、進行を遅らせたり軽減することができ、老化を迎えても普段と変わらない生活を送ることができることもあります。先述したような症状が現れた時は、早急に獣医の先生に診察してもらうことが大切です。
「うちの子は、まだまだ若いから大丈夫!」
そう言う飼い主さんもいると思います。
しかし、若い子では7歳くらいから痴呆症を発症する子もいるのです。また、初めのうちはゆっくり症状が進行するため、発見が遅れてしまうことも多いようです。先述したように、単調な生活を送らない、散歩のルートをたまに変えてみるなどの工夫をしてみることが大切です。
今現在、愛犬が痴呆症ではないという飼い主さんも、痴呆症に対する予備知識を頭に入れておくことで、今後愛犬が痴呆が起きてしまった場合でも適切な対応ができるでしょう。
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