犬の心臓に異常が起きることで発症する「僧帽弁閉鎖不全症」という病気。いつもなら元気に走り回ったり散歩したりするのに、僧帽弁閉鎖不全症を発症すると、運動することを拒むようになります。今回は僧帽弁閉鎖不全症の症状と原因について解説していきます。

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僧帽弁閉鎖不全症とは?

愛犬とのいつもの散歩。時折、散歩に行くことを嫌がったり、散歩に行った後に咳き込む症状や疲れやすいなどの症状が見られる場合がないでしょうか。こうした症状が見られる場合には、もしかすると「僧帽弁閉鎖不全症」と呼ばれる、心臓の病気である事も考えられます。

僧帽弁閉鎖不全症の原因となる「僧帽弁」とは、心臓内の、左心室と左心房と呼ばれる4つの部屋を区切っている2枚の薄い弁の事を指しますが、この僧帽弁が血液の逆流を防ぐ働きをしています。

この僧帽弁に異常が起きることで、元気の減退や呼吸が苦しくなると言った症状が発生し、呼吸困難などの症状を引き起こしてしまうのです。

僧帽弁閉鎖不全症の症状について


僧帽弁閉鎖不全症を発症してしまうと、運動したあとや散歩の後などに咳込んでしまったり、夜中に咳き込むと言った症状が発生します。

また、非常に疲れやすくなると言った症状も見られるようになり、前までは大好きだったはずの散歩なども、自発的に行きたがらなくなるといった様子も見られるようになります。

また、症状が重症化してくるにつれ、呼吸困難の症状も見られるようになり、肺水腫などの症状も併発してしまいます。

散歩の時にもチェックしてみましょう

僧帽弁閉鎖不全の疑いがある場合には、散歩の際にも注意深く観察するようにしましょう。それまでラクラクと歩いていた散歩道も、すぐに疲れてしまったり、足が止まってしまうようなことは無いでしょうか。

僧帽弁閉鎖不全を含め、心臓にトラブルを抱えている犬は非常に疲れやすく、それまでの体力とは違って、すぐに息が上がってしまいます。稀に年齢のせいだと勘違いしてしまう方もいるようですが、急激にこのように疲れやすくなるわけではありません。

老化であれば徐々に老化が始まり、気がついた時には年齢を重ねていたという感じになりますが、心臓にトラブルを抱えている場合には急激に体力も衰えていったり、疲れやすくなりますので注意が必要です。

心臓に負担をかけないような生活を

このように、楽しみな散歩でさえもなかなか思うように歩かなくなるのが、僧帽弁閉鎖不全など、心臓にトラブルを抱えている病気の特徴ですが、状態によっては少し運動を控えなければいけない場合もあります。

動物病院に行って検査を行わなければなんとも言えないところですが、軽い散歩でさえも心臓には負担がかかってしまいます。よく相談の上でなければわかりませんが、場合によっては家の中で走り回る行為自体も注意される場合があります。

心臓に爆弾を抱えている状態なので致し方ないところではありますが、外の空気が好きな犬にとって散歩に行かないのはストレスがたまる原因にもなります。

この場合、体に負担がかからないよう、抱っこなどして外に出してあげることで、少しはストレス解消になるかもしれません。

肺水腫とは

生命を維持するのに、非常に重要な役割を果たしている「肺」ですが、肺は本来、血液中へと酸素を送り、また、二酸化炭素を排出させる重要な役割も果たしています。

この酸素と二酸化炭素を交換する働きをしているのが、肺の中にある「肺胞」と呼ばれる部分ですが、肺水腫はこの肺胞などに水が溜まってしまい、本来持つ肺の機能が果たせなくなってしまう状態になる病気なのです。

今回解説している僧帽弁閉鎖不全症などの心臓の病気を患っていると、心臓の働きが正常でないために血液の流れが滞ってしまい、結果として肺の中の肺胞を繋ぐ毛細血管の内圧が上昇してしまうことに繋がります。

そのため、水分が外側に押し出され、肺に水が溜まってしまって肺水腫が引き起こされてしまうのです。

肺水腫の症状


肺水腫が引き起こされると、咳が出てきたり、息が荒くなったりと言った症状があらわれはじめます。ゼーゼーとした息をするようになり、常に呼吸をすることが苦しそうになるでしょう。こうした状態が酷くなると、呼吸困難などの症状も見られはじめます。

さらに病状が進行していくと、酸欠状態になっていくために口腔内にチアノーゼの症状が見られるようになったり、泡状の鼻水が出てきたりもします。吐き気をもよおしたり、ヨダレの量も増えてくることでしょう。

こうして肺が正常に働かなくなってしまい、結果として命を落としてしまう結果を引き起こしてしまうのです。そのため、肺水腫は、早期に発見・治療を行わければ、最悪の事態にもなりかねない結果を招いてしまいます。

僧帽弁閉鎖不全症の原因とは

僧帽弁閉鎖不全症は、心臓内の僧帽弁に「粘液腫瘍変性」と呼ばれる変化が起きることで、僧帽弁が肥大したり、弁がしっかりと閉じなくなってしまったりします。これによって、心室の壁が厚くなる心肥大や、心室が広がってしまう心拡大といった症状を発症します。

通常であれば血液をポンプのように出し入れする所を、血液の逆流が起きてしまい、逆流してしまう量が増えてくることで心臓が肥大していってしまうのです。こうして心臓が肥大してしまうことで、心不全などの病気を引き起こしてしまうわけです。

このように、僧帽弁閉鎖不全を引き起こすと、症状が悪化することで様々な病気や症状を引き起こす要因となるため、出来る限り症状を抑える、早期に対処する事が大切となるのです。

僧帽弁閉鎖不全の好発犬種

こうした症状を引き起こすきっかけとなる粘液腫瘍変性の発生原因は明らかになっていませんが、僧帽弁閉鎖不全症を発症する好発犬種には、「キャバリア・キングチャールズ・スパニエル」「チワワ」「ボストン・テリア」「ミニチュア・シュナウザー」「ミニチュア・ピンシャー」「トイプードル」「ペキニーズ」「マルチーズ」「ポメラニアン」「ウィペット」などの小型犬が挙げられています。

また、遺伝的な部分も大いに関係しているとは言え、5〜6歳位から発症するケースも少なくありません。

上記に挙げた犬種以外でも発症するケースは十分にありますので、油断はできません。また、僧帽弁閉鎖不全症は年齢を重ねるとともに、症状も悪化していく場合が多いので、早期発見・早期治療が重要となるでしょう。

僧帽弁閉鎖不全症の治療に関して

僧帽弁閉鎖不全症を発症した場合の治療に関しては、外科手術によって心臓内を治療することは、非常に困難な治療となるため、投薬治療などによる内科治療が中心となるでしょう。

症状に応じて、対症療法が行われる他、体重の管理や食事の管理、生活の管理など、様々な点に関して対応していかなければいけなくなります。

残念ながら完治させる方法はありませんので、こうした治療や療法を中心にしていくようにし、激しい運動はさせないなどの生活上の制限も注意して行かなければいけません。

食欲や毛艶などにも注目


僧帽弁閉鎖不全を発症すると、運動を嫌がったり、食欲が低下してしまう症状が見られるようになります。今までは元気よく食べていたのに、近頃食欲がなさそうな様子が見られることはないでしょうか。

また、食欲が低下し、栄養が体に行き届かなくなると皮膚や被毛にも影響が見られ始めるようになります。体重の減少も同様に見られる症状ですが、毛艶が悪くなると見た目にもわかりますので、元気がない、食欲もない、毛艶も悪いと揃ってきたら注意したほうが良いでしょう。

僧帽弁閉鎖不全にかかわらず、なにかしらの原因があるために、こうした状態になっていますので、一度健康診断を行ってみても良いかもしれませんね。この際には、あまり様子ばかりを見ようとせず、おかしいなと感じた時にすぐに行くようにしましょう。

僧帽弁閉鎖不全症を予防するために

僧帽弁閉鎖不全症を予防することは難しいですが、出来る限り早期発見・早期治療を行うために、定期的な健康診断を行うようにしましょう。

特に好発する年齢に挙げられる5歳過ぎになったら、僧帽弁閉鎖不全症対策だけではなく、様々な病気のリスクも高くなってくる頃です。中高齢に入るこのあたりからは、年一回でも定期的に健康診断を行うほうが安心でしょう。

また、健康に気を使った食事を摂らせるようにし、適度な運動をして体力をつけることで、様々な病気への予防にも繋がります。少しでも長生きをしてもらえるよう、健康に気を使った生活環境を整えるようにしましょう。

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