犬にも多く見られる「ヘルニア」。ヘルニアにもいくつかの種類があり、それぞれ年齢によるものや事故によるもの、先天的な疾患である場合など、ヘルニアの種類によっても症状や原因が異なります。そんなヘルニアを治療するにはペット保険の加入が必須となりますが、中には補償の対象にならないヘルニアも存在します。今回はヘルニアとペット保険の補償について解説していきたいと思います。
ヘルニアとペット保険
ヘルニアにもいくつかの種類があり、それぞれに発生する箇所や症状、治療方法も変わってくる上に、年齢や犬種によっても注意すべきヘルニアの種類も異なります。中には軽度の症状のヘルニアもありますが、場合によっては手術が必要になるヘルニアがほとんどで、高額な治療費が必要となるのです。
また、先天的な疾患である場合もありますので、いくら予防策を講じても、ヘルニアを発症してしまうケースも少なくありません。そんな万が一の事態に備えることが出来るのがペット保険の存在です。
ペット保険に加入することで、治療費の一部が補償されるため、高額な手術が発生しても治療費を気にせず、十分な治療を受けさせることが出来るでしょう。しかしながら、ペット保険にも補償が適用されないヘルニアも存在します。そこでまずは、ヘルニアの種類について見ていきましょう。
ヘルニアの種類について
そもそも「ヘルニア」とはどのような症状の疾患を指すのでしょうか。
ヘルニアを広い意味で捉えると、体内の組織や臓器が本来の位置から外れる、もしくはずれてしまった事により、他の場所へと悪影響を与えてしまう事を指します。この「ずれて」しまった場所や状態によって、病名も変わってくるわけですが、大きく分けると「消化器系のヘルニア」と「筋骨格系のヘルニア」に分けることが出来ます。
【消化器系のヘルニア】
・横隔膜ヘルニア
・臍ヘルニア
・鼠径ヘルニア
・会陰ヘルニア
【筋骨格系のヘルニア】
・椎間板ヘルニア
この中でもよく聞かれるヘルニアが「椎間板ヘルニア」ではないでしょうか。椎間板ヘルニアは胴長短足の犬種に多く見られる疾患と考えられていますが、実は胴長短足な犬以外にも発症する可能性は十分にあるヘルニアとなっています。
椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアは背骨と背骨の間でクッションの役割をしている「椎間板」と呼ばれる組織が損傷してしまうことで発症するヘルニアです。症状には歩き方がおかしくなることや、場合によっては半身不随になってしまう可能性のあるヘルニアです。
胴長短足の犬種は胴が長く背骨にも負担が掛かってしまうので、椎間板ヘルニアを発症するリスクが高いと言えますが、肥満傾向の犬も椎間板ヘルニアを発症しやすいと言えます。また、年齢による椎間板の劣化で高齢犬にも発症のリスクが高いことが指摘されます。
この他、激しい運動を重ねている犬や、背骨や腰などに強い衝撃が加わることでも椎間板ヘルニアを発症してしまう可能性がありますので、結果としてどの犬にも発症するリスクがあるということが言えるでしょう。
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横隔膜ヘルニア(食道裂孔ヘルニア)
犬の横隔膜には「食道裂孔」と呼ばれる穴がもともと存在しているのですが、この食道裂孔が先天的に大きいために、穴から胃が飛び出してしまうヘルニアを横隔膜ヘルニア(食道裂孔ヘルニア)と言います。
横隔膜ヘルニアの原因となるのは先天的なものになりますので、予防することが出きません。症状としては嘔吐や食欲のない様子が見られ、他の子犬よりも発育が悪いといった様子が見られます。また、状態が悪いと心臓や肺と言った臓器を圧迫することになるため、高いリスクも伴います。
横隔膜ヘルニアを完治させるためには外科手術しかありません。治療費としては動物病院によっても変わりますが、おおよそ10万円〜20万円程度と考えておいたほうが良いでしょう。
臍(さい)ヘルニア
臍ヘルニアは、一般に言う「でべそ」のこと。へその緒で繋がっていた穴がしっかりと閉まらず、その穴(腹壁)から脂肪や臓器が飛び出してしまうヘルニアです。
軽度の症状であれば、ポコッと飛び出している部分を押し込むことで、臓器を穴の奥に押し込め、その後は特に問題にならない場合も多いですが、場合によっては穴から飛び出した臓器がうっ血状態になり、壊死を招いてしまうなど、危険も伴うヘルニアです。
多くは生後1年未満の子犬に見られるヘルニアで、生後半年すぎには自然と穴も塞がる場合も多いですが、1歳以降になっても穴が閉じない場合には、外科手術を行なう場合もあります。この場合、治療費は5万円〜10万円といったところでしょう。
鼠径(そけい)ヘルニア
鼠径ヘルニアは、足の付け根(太もも)部分に隙間が生じて、臓器が飛び出してしまうヘルニアです。場合によっては腸閉塞などの症状を引き起こしてしまうため、注意が必要なヘルニアでもあります。
鼠径ヘルニアの原因となるのは先天的な場合と、外傷などによる後天的な場合になります。症状も軽度であれば様子を見るだけで済む場合もありますが、場合によっては危険が及ぶため、外科手術を行う場合も多いです。
鼠径ヘルニアの治療費に関しては、5万円前後といったところでしょう。とはいえ、動物病院によっては治療費も前後しますので、あくまでも参考値としておきましょう。
会陰(えいん)ヘルニア
会陰ヘルニアは肛門周りの筋肉が衰えてしまうことで、脂肪や臓器が押し出されてしまい、肛門周りが膨らんでしまうヘルニアです。会陰ヘルニアの多くは高齢のオス犬ですが、去勢済みのオス犬にはあまり見られません。
初期症状であれば内科治療で症状を緩和させることが出来ますが、根本的には完治させることが出来ないため、完治させるためには外科手術が必要となります。
治療費としては10万円前後が目安となりますが、高齢に多いヘルニアであるため、犬の体力も合わせて検討する必要があります。
臍ヘルニア、鼠径ヘルニアは補償外が多い
ペット保険の補償範囲の基本となるのは、保険開始から発生した疾患や怪我に対して補償がされるという事です。ですので、後天的な要因でヘルニアを発症してしまった場合には、補償の対象となります。
しかし、基本的に「先天的な疾患」に対しては補償の対象とはなりません。上記に挙げたヘルニアの中でも、各ペット保険会社が取り上げて補償外と指定しているヘルニアが
・臍ヘルニア
・鼠径ヘルニア
です。
この2つのヘルニアに関しては、多くのペット保険でも「疾病にあたらないもの」として、約款でも特筆して補償の対象外としているため、残念ながらペット保険で補償される事はないでしょう。
ペッツベストは穴場のペット保険かも
調べた中でも、ペット保険会社の「ペッツベスト」に関しては、他のペット保険とは少々、内容も変わっています。
というのも、多くの保険では先天的な疾患に対して補償が適用されることはないのですが、ペッツベストに関しては先天的な病気に対しても、少額ながら補償の対象となっているのです。
ただし、「椎間板ヘルニア」に関しては、一部の犬種のみ、新規加入条件で不可と定めてられているので、該当する場合には加入することが出来ませんが、その他の犬種であれば、加入することも可能となります。
ペッツベストに関しては多くの病気に対して補償されますが、保険料としては他よりも少し高めであるプランもあります。愛犬の状況に合わせて、ペッツベストを選択するか、もしくは先天的なヘルニアの治療費を諦めるかを考えてみましょう。
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プロ目線から見たヘルニアに適したペット保険
ペット保険の加入の際には、必ず「約款」が渡され、保険契約の条件等については必ず約款の中にまとめられて記載されています。なかなか読む機会も少ないですが、念の為、一度は目を通しておいたほうが良いでしょう。
例えば上記で紹介はしませんでしたが「陰嚢ヘルニア」と呼ばれるヘルニアがありますが、通常であれば補償の対象となるこのヘルニアも、実は「鼠径ヘルニア」が要因となっている場合、陰嚢ヘルニアも補償の対象外となるのです。
このように、その「病気」にだけ補償の有無を確認するのではなく、その病気を引き起こした「要因」も重要なポイントとなることを覚えておきましょう。その要因によっては補償の対象外となることもありますので、注意する必要があります。
まとめ
ヘルニア一つとってもこのように、様々な種類のヘルニアが存在し、さらにそれぞれの要因や症状も異なるため、ペット保険の補償内容も変わります。
ペッツベストのように先天的な疾患もカバーできる保険は存在しますが、保険料や相対的な内容を考え、先天的なヘルニアに関しての治療費を諦めて、他の疾病に対して保険をかけておくというのも一つでしょう。
犬の病気は一つではありません。ヘルニアは時として命の危険も及ぼすものですが、早期発見ができれば、簡単な治療で回避できる場合もある病気です。まずはヘルニアの特徴を理解し、それぞれどんなヘルニアがあるかを知っておきましょう。
ペット保険に加入する際には、病気に対してピンポイントで考えるのは難しいので、愛犬の種類や年齢、特徴によって考えていくのがポイントとなります。
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