ヘルニアは人間だけではなく猫にも発症する病気で、いくつかの種類があるヘルニアのうち、今回は「鼠径(そけい)ヘルニア」の症状や原因、対応策について解説していきたいと思います。
「鼠径ヘルニア」とは
人間の病気としてもよく耳にする「ヘルニア」ですが、実は猫の世界でも発症する病気です。そもそもヘルニアとは、通常であれば体内に収まっているはずの内臓や脂肪組織が、本来体内のあるべき場所から、別の場所へ飛び出してしまう状態のことを言います。
そして、今回記述させて頂く「鼠径ヘルニア」ですが、「鼠径(そけい)」とは、足の付け根のことを言います。この鼠径部には、血管や神経の他、オスなら精巣に繋がる管が、メスなら子宮を支える靱帯などが繋がっている大事な部分です。
「鼠径ヘルニア」とは、本来腹部内にある脂肪や腸、大網が鼠径部にある「体腔」と呼ばれる隙間のような所から皮下に飛び出てしまう病気です。鼠径ヘルニアを放置していたり、症状が悪化してしまうと子宮や膀胱まで出てしまうこともありますので注意が必要です。
発見しやすいヘルニアの症状
鼠径ヘルニアの症状は、体内にある臓器が皮下へ飛び出してしまっているのが特徴なので、お腹の皮膚の一部からポコッと何かが飛び出していたりと、飼い主さん自身も見て分かる状態の症状が見られます。
そのため、鼠径ヘルニアは普段から愛猫とコミュニケーションを取っていれば、容易に気が付くことができる病気と言えるでしょう。感触としては柔らかく、ちょっとした脂肪のようにも感じますが、何かしらの異変だなということはわかるでしょう。
多くは犬に見られると言われる鼠径ヘルニアですが、猫でも発症することがありますので油断はできません。ヘルニアの症状を放っておいてしまうと、命の危険にもなりかねない状態になる事がありますので、注意が必要です。
鼠径ヘルニアの症状
鼠径ヘルニアを発症すると、初期のうちでは鼠径部分に小さな腫れができる程度で無症状である場合がほとんどです。特に痛がったりなど、変わった症状が出ることはありませんので、様子を見ているだけではわからないかもしれません。さらに、指で患部を押してみると引っ込んでしまうでしょう。
しかし、症状が進行すると、小さかった腫れも次第に大きくなって、すぐに引っ込んでいた患部も、指で押しても引っ込まなくなります。
鼠径部分に腸が飛び出せば、便秘や下痢などの症状をはじめ、元気が無くなったり、すぐに休んでしまうといった様子が見られるようになります。さらに悪化すると、膀胱が飛び出ることもあり、オシッコが出にくいなどという排尿困難になることもあります。
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腸閉塞などを引き起こすこともある鼠径ヘルニア
鼠径ヘルニアの症状は症状が悪化していくに連れて、食欲が落ちてしまい、嘔吐の症状なども引き起こされます。先述したように、痛みが伴うこともありますので、鼠径部分を触られることを嫌がるようにもなるでしょう。
鼠径ヘルニアは、鼠径部分の腫れの大きさが、症状の大小を左右していると言っても過言はありません。とはいえ、症状が無いからと放っておいてしまうのは危険です。やがては小腸などもヘルニアに入り込んでしまい、腸閉塞などを引き起こしてしまうこともあるのです。
鼠径部分の腫れが大きければ、よりこうした症状へと移行する可能性も大きくなるため、何かしらの対策が必要になるでしょう。基本的には発見しやすい病気の一つですので、出来る限り早めに発見し、処置を行うのが理想的です。
鼠径ヘルニアを引き起こす原因とは
なぜ、鼠径ヘルニアを引き起こしてしまうのでしょうか。
鼠径ヘルニアには「先天性」「後天性」と、原因に考えられる事は様々ありますが、主に後天性の場合は、高い場所から落ちてしまうような事故や、ケンカなどで強い衝撃を受けたり、妊娠や肥満などによって腹部にダメージを受けてしまい、鼠径ヘルニアを発症してしまうことがあるようです。
一方、先天的な要因でヘルニアを引き起こしてしまう場合には、先天的に鼠径部分に何らかの疾患があったために、鼠径ヘルニアを発症してしまうことがあるようです。
このように、鼠径ヘルニアには何かしらの原因がありますが、鼠径ヘルニアの多くは、先天的に発症することがほとんどのようです。
鼠径ヘルニアの治療について
鼠径ヘルニアの治療に関してですが、鼠径部分の腫れが小さい場合には、様子を確認しながら、特別な治療を施さずに経過を観察していくということが多いです。
ただし、鼠径部の状態によっては、遅かれ早かれ症状が悪化してくる場合が多いので、早い段階で手術を行うこともあります。多くは年齢とともに鼠径部の体腔も小さくなり、鼠径ヘルニアも気がつけばなくなっているということがほとんどですが、いつまでたっても体腔が狭まらない場合には、手術を行うこととなるのです。
一方、鼠径部分の腫れが大きくなってしまったり、元気がない・痛がるなどの症状が現れ始めている場合は、鼠径ヘルニアの症状も悪化していって事が考えられるため、外科手術が必要となるでしょう。
鼠径ヘルニアの手術について
鼠径ヘルニアは、肥満になったり妊娠したりすると、ヘルニアも大きくなってしまう可能性があるため、将来的に繁殖を考えている場合には、早い段階での手術を考えたほうがよいでしょう。
また、ヘルニアが小さく、経過観察を行っている場合も、肥満体型にならないような配慮が必要となります。
鼠径ヘルニアの手術を行う際には、一緒に避妊・去勢手術を行う場合も多いようです。あくまでも飼い主さんの判断になりますが、先天的な鼠径ヘルニアは、幼少期に発症することが多いということと、避妊・去勢を行うのも早いほうが良いと言う考えから、一度の開腹で済ませてしまおうということです。
猫にとっては1度の手術、1度の麻酔も体には負担がかかるものです。できるだけ手術の回数は減らしたほうが、猫のためにも良いでしょう。
鼠径ヘルニアの費用について
猫の鼠径ヘルニアの費用に関しては、動物病院によって差はあるにせよ、思っているよりも費用がかかってくるものです。
まず、鼠径ヘルニアの手術費用に関しては、おおよそ4万〜5万といった治療費を覚悟する必要があるでしょう。入院費等も含め、状態が安定しない場合には10万〜といった金額も発生してくる可能性もあります。
一方、鼠径ヘルニアの診察だけであれば、レントゲン費用で5000円程度、診察代で3000円前後ほどとなります。コレに加えてCT検査なども入ってくれば、数万円の費用も発生してきます。
鼠径ヘルニアに関しては、体腔が塞がってくれることを祈るのみといったところなので、子猫の段階からですとどうにかすることも出来ません。経過観察と言われれば、そこまで重症ではないと考えられますが、中にはすぐに手術が必要なケースもありますので、油断せずにまずは検査を行うようにしましょう。
鼠径ヘルニアを予防するには
鼠径ヘルニアの原因が先天的である場合には、鼠径ヘルニアを完全に予防することはできません。
前述の通り、鼠径ヘルニアは猫の鼠径部に空いた体腔が問題となるものです。この体腔は年齢とともに塞がっているのが普通ではありますが、中にはなかなか閉じていかない猫もいます。
初期の症状で状態が悪くはない場合、治療を行わずに様子を見る理由はこうした理由があるのです。外科手術はどうしてもリスクを伴うもの。手術のリスクを考えるのであれば、自然に体腔が塞がるのを待つことのほうが、リスクは圧倒的に少ないのです。
自宅内では、あまりハードな動きはさせないようにしたり、こまめに鼠径ヘルニアの患部の様子を観察することは必要になりますが、出来る限り手術をせずにすむよう、暫くの間はおとなしくしていることが一番の予防となるでしょう。
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外飼いは病気のリスクを高める
外的要因で鼠径ヘルニアを予防することを考えるのであれば、基本的に外に放して飼育することはオススメできません。外で喧嘩してきたり、落下してきたりすると、鼠径ヘルニアのリスクも高くなりますので、できるだけ室内飼いをすることが予防策となります。
特に、鼠径ヘルニアの兆候が見えているのであれば、もっとリスクは高いといえます。診察を受けて経過観察と言われれば、体腔が塞がる可能性が高いといえますので、大人しくさせていたほうが愛猫にとっても、飼い主さんにとっても良いでしょう。
また、外飼いをしていると鼠径ヘルニア以外にも、様々な病気のリスクを高めてしまいます。ウイルスによるものや、寄生虫の感染リスクも考えられますので、鼠径ヘルニアに関わらず、外飼いは避けるようにしましょう。
まとめ
鼠径ヘルニアは、先天的な鼠径部の異常や、突発的なケガ等で発症するために予防することができない病気です。子猫を家族に迎え入れる際には、動物病院で一度検査を行うのが一番安心ではありますが、飼い主さんも子猫の体を確認するようにしましょう。その際に、しこりや膨らみが確認された場合には、再度、病院で検査するようにしましょう。
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