未だ衰えを知らないペットブームの裏側で、これまでに沢山の犬たちが飼育放棄されているという辛い現実をご存じでしょうか。目を背けたくなるような話ですが、犬の飼育放棄について、原因や対策など、今一度考えなければいけないのかもしれません。

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高齢者による飼育放棄


2013年に保健所及び愛護団体に対してアンケートや聞き取り調査を行った結果、保健所や愛護団体に持ち込まれた犬の7割が、迷子などの「飼い主不明」に対し、約3割が「飼い主の所有権放棄」、言わば「飼育放棄」ということが報告されたようです。

その飼い主による飼育放棄の理由の中で最も多かったのが、「飼い主の死亡・病気・入院」であるとされています。これは飼育放棄をする飼い主の年齢とも大きく関係しているのかもしれません。

実際、飼育放棄した飼い主の年齢は、60代が31.5%、70代が24.8%となり、60代以上の高齢者が50%以上になるようです。犬の飼育を諦め、犬を保健所や愛護団体の持ち込む人の半数以上が「高齢者」ということになります。

犬の寿命は15歳前後です

愛犬を飼い始めた頃を思い出してみましょう。どんな理由で愛犬を選んだのでしょうか。どんなタイミングで家に来ることになったのでしょうか。飼い主さんが何歳の頃に飼い始めたのでしょうか。

犬を飼い始める前に、一度考えてみてほしいのが、犬の一生は10~15年程であるということです。犬の寿命は15年前後であることを再認識し、ご自身の寿命と照らし合わせてみましょう。

その犬が5歳の時、十分に散歩に連れて行ってあげられる年齢でしょうか。その犬が8歳の時、寂しい思いをする事は無さそうでしょうか。その犬が12歳の時、十分な介護をしてあげられる年齢でしょうか。

「寂しいから」「老後の生きがい」と、ご自身の身勝手な都合で犬の将来を振り回すことだけは避けなくてはいけません。

その他の飼育放棄理由とは

その他の飼育放棄の理由としては、引っ越し先がペット不可であったり、大型犬のような大きい犬種の飼育スペースが無いという理由が挙げられます。

そもそも犬を飼っているのなら、ペットの飼育不可の家へ引っ越すということを、最初から諦めるべきではないでしょうか。大きい犬がいるなら、その大きさを想定した新居選びが必要になります。

前述の通り、特に大型犬は子供の頃は可愛らしいサイズでも、大人になると30kg前後ほどになるのも珍しいことではありません。飼育できるかどうかというよりも、飼育するスペースが確保できるのかどうかが一番に問われるところです。

特に狭い空間で飼育していては、犬もストレスが溜まってしまいます。その結果、より飼育するのに難しい性格となるのです。

飼い主の無知による理由


また、最も身勝手な飼育放棄の理由が、飼い主の無知により飼育放棄されることです。

「思った以上に大きくなった」「吠え声が大きくて近所迷惑になる」「散歩などの世話が大変」など、その犬種に対する知識を持たず、「カッコイイから」「連れて歩けば自慢になるから」と、見た目だけで勝手に判断して飼い始めてしまったせいではないでしょうか。

犬種の特徴が書いてある図鑑や、ネットの情報はあくまでも「その犬種が持つ基本的な」性格であって、どの犬も同じわけではありません。人間にも色々な人がいるように、犬にも色々な性格の犬がいます。

中には子犬なのに「足を噛んでくる」という理由で手放す飼い主もいます。とても信じられないような理由で飼育放棄する人もいますので、予め正しい知識を持ってから飼育し始めて欲しいところです。

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問題行動による理由

運動量が必要な犬を飼い、忙しいことを理由に散歩へ連れて行かない飼い主は、ストレスを抱えた愛犬に「吠える・噛み付く」など犬特有の問題行動を起こさせ、「言うことを聞かないバカ犬」というレッテルを貼り、手に負えなくなったと保健所に持ち込むというような悲しい結末を迎えるのです。

そして、犬が病気になったから、高齢になったからという理由で飼育放棄されることも多いようです。確かに、病気や高齢により痴呆になった犬を介護するということは、並大抵の苦労ではありません。介護にかかる労力や時間、経済的や精神的にも負担はかかるでしょう。

特に、大型犬の場合は想像以上に大変だと思います。でも、あともう少しだけ一緒に寄り添ってあげることはできませんか。その苦労、ずっとは続かないんですよ。

子供ができたからという理由

子供ができたからという身勝手な理由で飼育放棄をされることもあるようです。子供にとってペットを飼うということは、「命の大切さを教える」「弱いものに優しくする気持ちを持つ」「相手を思いやる心を養う」など、情操教育にもとても良いはずです。

イギリスでは有名な詩があります。

子供が生まれたら犬を飼いなさい
子供が赤ん坊の時、子供の良き守り手となるでしょう
子供が幼年期の時、子供の良き遊び相手となるでしょう
子供が少年の時、子供の良き理解者となるでしょう
そして子供が青年になった時、自らの死をもって子供に命の尊さを教えるでしょう

子供が大きくなってから、要らなくなったペットは捨てましょうとは教えられませんよね。

どうしたら飼育放棄を減らせるのか

ペットショップには可愛い子犬や子猫がずらりと並んでいます。気に入った子が小さい体でヨチヨチ歩み寄ってくる姿を見れば、「連れて帰りたい!」という気持ちになるのも分かりますが、服や靴を衝動買いするのとは訳が違います。

命あるものを飼育するには金銭面だけでなく、病気や老化、犬の問題行動など、様々な面でも精神的に負担がかかります。飼おうと思う前にもう一度踏み止まって、その子の将来10~15年先まで見据え、最後まで責任を持って飼育できるのか、きちんと考える必要があるでしょう。

また、事前に飼おうと思う犬種の性質や大きさ、運動量などを調べておくことも大切です。小型犬でも多くの運動量が必要な犬種や、身体が小さくても気性の荒い犬種もいます。

「思ったのと違った」が起きないように


犬種による性格やサイズ以外にも、性別の違いによって飼育方法が異なる場合もあるでしょう。大型犬を飼育する場合、その子が歩けなくなった時に家族で運ぶことができる人がいるのか・・など考えておく必要もあるでしょう。

もし、近所でその犬種を飼われている方がいれば、話しかけてみて様子を聞いてみるのも良いかもしれませんね。

「思ったのと違った」

先述したように、飼い主の無知のせいで飼育放棄をされることがあります。何の知識も持たない飼い主に、こんな感じだろうと勝手に判断されて飼われた結果、「思ったのと違った」ということでしょう。

事前にその犬種について調べて理解していれば、安易に迎え入れることはなかったはずです。ペットは飼い主を選べません。そのしわ寄せは全て飼育放棄された犬に来るということを忘れてはいけないのではないでしょうか。

飼育放棄する前に

飼育放棄しなければいけない理由は何でしょうか。前述でも挙げたとおり、愛犬を手放す理由は様々あるでしょうが、もし犬を手放すようであれば、二度と生き物を飼わないほうが良いでしょう。

少なからず、命あるものを「捨てた」という事には代わりありません。その事を十分に理解しましょう。

また、飼育放棄しようか悩んでいる、思いとどまっているという飼い主さんは、保護施設に相談してみてください。無理して飼育し続けてはいけません。飼育放棄しようか追い詰められているのであれば、それは犬にも十分に伝わっていることでしょう。

なんとか飼育できるようであれば、最期まで飼育してあげて欲しいですが、今のような気持ちに再びなる可能性があるので、2度と生き物を飼育しないようにしましょう。多くの飼い主さんは、飼育放棄しようとは考えたことも無い方がほとんどである事も理解しましょう。

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