私達の身近で活躍する「職業犬」たち。今回ご紹介するセラピードッグという名前、聞いたことがあるでしょうか。主に病院や老人ホームなどで活躍していることから、まだ知らない方もいるのではないでしょうか。どのような活動をしているか見ていきましょう。
「セラピードッグ」とは
自閉症といった精神障害を抱えた方や、高齢者や認知症等の方々をはじめ、様々な病気やケガなどで心に傷を負ってしまった方へ、犬を利用して「心」を癒やし、そして体も癒していく事を目的とした「ドッグセラピー」。そして、このドッグセラピーを行う犬たちを「セラピードッグ」と呼んでいます。
テレビ等でも報道されていますが、こうした犬などの動物による「アニマルセラピー」は、傷を負った人間に対して様々な効果をもたらし、また、共存していくことでこうした方々のリハビリの効果を生み出しているのです。
セラピードッグとしての活動としては、有名なものでは老人ホームなどへ訪問し、高齢者の方々と触れ合うことで、高齢者の方々の心身を癒やし、様々な機能の向上や安定を促すことに成功しているのです。
多岐にわたる仕事
こうして犬と触れ合うだけなのに、人間にとって癒やしとなり、また機能も安定・向上するなんて、とても不思議な事ですよね。セラピードッグによる効果は実際に「補助療法」として認められてもいるんです。
セラピードッグとしての活動はリハビリを兼ねたものも多く、高齢者の方と一緒に歩行する場合や、車椅子の方と共に歩行する場合も。「一緒に歩くだけ」と思いきや、これはトレーニングを積まなければ簡単にはできない行動で、セラピードッグとしての成果が試されるものでもあります。
こうしてセラピードッグと共に「歩くだけ」ですが、一人でリハビリを行うのと、セラピードッグと共に歩行・リハビリを行うのとではリハビリの効果も変わってくるのです。
災害現場でも活躍
セラピードッグは近年、日本でも発生している未曾有の災害時にも大きな活躍を果たしています。
具体的には災害によって怪我をした方や精神的にもダメージを受けている方に寄り添い、触れ合うことで心に負った傷を癒やし、また怪我をしてしまった方はリハビリを共に行うことでも高いリハビリ効果を発揮します。
現に被災した方々は怪我をしなくとも、またいつ来るかわからない災害への不安に襲われていますが、言葉は通じなくともセラピードッグを通じて前を向く力を与え、勇気づけてくれるのです。
セラピードッグのイメージは老人介護施設や病院というイメージも強いですが、実際にこうした災害現場でも活躍しており、被災地支援などが行われているのです。
ドッグセラピーの効果について
まだまだ研究が行われていますが、すでに様々な効果を挙げているドッグセラピー。笑顔のなかった高齢者には笑顔が戻り、食欲のなかった高齢者には食欲の向上がみられるといったように、その効果も様々。
また、認知症患者の方がドッグセラピーを受けていくことで、記憶力の改善が見られたり、行動に変化が見られ始めると言ったことも珍しいことでは無いのです。
こうしたドッグセラピーを行う場合には、ドッグセラピーの訓練を受けた犬と、セラピードッグハンドラーと呼ばれる、セラピードッグを扱う人間が必要となります。いずれも訓練を受けた犬や人がなることができ、資格が必要となります。こうした訓練を受けた犬と人、またボランティアの方々と共に、老人ホームなどを回るわけです。
日本初のセラピードッグ「チロリ」
徐々に認知度も高まってきているセラピードッグ。日本で初めてのセラピードッグは、まだまだ歴史も浅く、1匹の雑種犬「チロリ」が1992年に保護されたことから始まります。
といっても、この時点ではまだチロリはセラピードッグではなく、5頭の子犬とともに捨てられていた母犬でした。この犬たちを保護し、里親を見つけるのに尽力したのが現在「国際セラピードッグ協会」の代表も努める大木氏でした。
その後、5頭の子犬たちは無事、里親が見つかりましたが、残された母犬のチロリは足に障害を持っていたため、大木さんがそのまま飼育することとなります。
当時、チロリの飼い主となった大木さんは、まだ認知度も低いセラピードッグの訓練センターを運営しておりましたが、この時点ではまだチロリは訓練を受けておりませんでしたが、チロリを保護してから少したった日に、大木さんはチロリのセラピードッグとしての素質に気が付くこととなります。
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わずか半年の訓練でセラピードッグに
こうしてセラピードッグとしての訓練を始めたチロリでしたが、通常であれば2年半もかかるセラピードッグとしての訓練を、チロリはわずか半年でクリアするという、異例の才能を発揮することとなるのでした。こうして、日本初となる認定セラピードッグ「チロリ」が誕生したのでした。
チロリがセラピードッグとなってからは、数々の功績を積み重ねることとなり、国からも30以上にも及ぶ表彰状、感謝状を授与されるまでになり、セラピードッグという職業犬の存在を広く知れ渡らせるきっかけとなったのでした。
チロリはその後、残念ながら2006年3月に14歳の腎性に幕を閉じることとなりますが、チロリの数々のエピソードや、功績が認められ、テレビや絵本などでもチロリが紹介され、築地川銀座公園にはチロリの銅像も立つほどになったのでした。
セラピードッグのトレーニング
チロリが習得していったセラピードッグとしてのトレーニングですが、具体的にはどのようなトレーニング内容なのでしょうか。
まず基本的なトレーニングとなるのが「アイコンタクト」が取れるかどうかというトレーニングで、ハンドラーとの意思疎通はもちろん、セラピーを受ける人がどのような状況なのかをアイコンタクトを通じて理解し合うのにも大切なトレーニングとなります。
アイコンタクトと同様に基本となるのが「同速歩行」と呼ばれるトレーニングで、一定の距離を保ちながら同じ速度で歩行するトレーニングです。すべてのトレーニングは同速歩行に繋がってくるため、非常に大切なトレーニングとなります。
こうした基本的なトレーニングができなければ、セラピードッグとして活躍することは難しくなります。
単純なようで難しいトレーニング
セラピーを受ける方も杖をついて歩く場合や車椅子の場合といったように、受ける方の状態によってもシチュエーションは異なりますので、セラピードッグがしっかりと左側について歩行することが出来るかどうかが重要になるのです。
また、セラピードッグのトレーニングは共に歩行したりする以外にも、病院や高齢者施設でベッドに寝たきりになっている方と一緒に寄り添うというトレーニングも行われます。
このように、セラピードッグの活動範囲は多岐にわたるため、あらゆるシチュエーションにも対応出来るよう、厳しいトレーニングを積む必要があるのです。
通常であれば2年以上もかかるトレーニングですので、単純なようでいかに習得が難しいかがわかります。
セラピードッグになるには
人々を癒やし、また心身ともに人を助けるセラピードッグ。まだまだ認知度もこれからですが、高齢者も多くなっている昨今、こうしたセラピードッグの活躍が一層期待されるところです。
そこで自分の愛犬もセラピードッグに!と考える飼い主さんも多いかもしれませんね。セラピードッグの活動は、私達一般市民も参加できるようになっており、協会を通じて参加することができます。
愛犬は訓練を行わなければなりませんが、春と秋に訓練をスタートさせ、試験や活動実習を経ることで実際にセラピードッグとしてデビューさせることができます。もちろんハンドラーとしての参加もできますので、気になる方は一度、国際セラピードッグ協会のホームページなどを確認してみましょう。
まとめ
セラピードッグは実際に人間に対しての効果も、研究の結果からデータが取られているように、実に様々な効果を私達に与えてくれており、何よりも、心や体に傷を負っている方々の生きる希望を与えてくれる素晴らしい仕事をしてくれています。
こうしてセラピードッグについて知ることだけでも、セラピードッグに対しての活動に参加することにもなると思いますので、みなさんもよりセラピードッグの活動について知っていただき、また、活動を支えられるような支援を行っていっていただければと思います。
人も犬も、こうしてお互いに助け合い、また、お互いに必要とする仲であり続けたいと思いますね。セラピードッグの普及がどんどん広まるよう、また、活躍の場も拡がるように応援していきましょう。
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