盲導犬や警察犬、また、シープドッグと呼ばれる牧羊犬など、犬は私達の仕事や生活に、おおきく貢献をしてくれる存在でもあり、頼もしいパートナーでもあります。今回は災害現場に無くてはならない、災害救助犬について解説していきます。
大きな災害と災害救助犬
日本でも、大きな災害が起きてしまっていますが、こうした甚大な被害を受けた災害現場では、残念ながらたくさんの犠牲者を出してしまっていますが、一方では、たくさんの方々も無事に発見され、救助されています。
こうした災害現場での救助活動では、人間の力だけではなく様々な機器も活躍していますが、「災害救助犬」の力も救出活動に大きな影響を与えています。
近年ではこの災害救助犬の活動や、その存在も多く知られるようになってきましたが、まだまだ私達の知らないことも多いように感じます。例えば、どうやったら災害救助犬になれるのか、どんな訓練をしているのか、何歳まで活躍しているのか等、たくさんの知らないことがありますよね。
災害救助犬の並外れた「嗅覚」
災害といえど、地震災害もあれば、台風等の土砂災害、雪山での遭難といったように、災害救助犬の出動する機会といっても、非常に多岐に渡る活動・災害現場があります。
こうした様々な災害現場で、「臭い」を頼りに救助する災害救助犬。もともと犬は嗅覚に優れた動物ではありますが、その中でも並外れた嗅覚を身に着け、過酷な現場で捜索するのに訓練された犬達です。
しかし、こうしてあらゆるシーンで救助活動を行なうためには、非常にレベルも質も高い訓練を重ねなくてはならず、求められるスキルも相当に高いものとなります。
近年は災害救助犬の活躍も大きく取り上げられるようになり、その存在も脚光を浴びるようになってきましたが、日本では1990年代から本格的な災害救助犬の育成に乗り始めたばかりです。
災害救助犬と警察犬との違い
訓練された犬と言えば「警察犬」も訓練をうけ、非常に優秀な犬達で知られていますが、警察犬と災害救助犬では、同じ「臭い」を辿るにも違いがあります。
例えば、遭難者を捜索する際には、警察犬は「足跡」などを頼りに遭難者の臭いを追いますが、災害救助犬は「空気中」に漂う遭難者の「息」や「体臭」などの臭いを追うことができるのです。
この違いだけでも、いかに災害現場に特化した訓練を受けているかがわかりますが、更に驚くことに、警察犬などが遭難者の臭いを特定するためには、持ち物などの臭いを必要としますが、災害救助犬はこうした特定の臭いを必要とせずに、臭いを追うことが出来るのです。
こうした能力が、甚大な被害を受けた現場などで非常に必要とされ、また、実際に実績も挙げているのです。
国内の災害救助犬
国内ではまだまだ普及・認知も遅れており、国内に災害救助犬の団体「NPO法人 全国災害救助犬協会」が発足されたのが1990年の事でした。
世界では早くも17世紀頃には、災害救助犬と呼べる活動を行っている犬達も存在していたことから、いかに日本が災害救助犬にとどまらず、「犬」に対しての仕事や能力の認識が遅れているかを思い知らされます。
災害救助犬の、日本で初めての出動となった現場が、1995年に発生した阪神・淡路大震災でした。記憶に残っている方も多いのではないでしょうか。現在では全国に10箇所以上の訓練団体、50頭を超える災害救助犬が全国都道府県に存在しますが、数としてはまだまだ少ないといえるでしょう。
災害救助犬はどの種類の犬がなれる?
災害救助犬と聞くと、過酷な現場にも対応しうる「セント・バーナード」を始めとした大きな犬種のイメージが強いかもしれません。
しかし、実際に起きる災害現場ではこうした大型犬が通ることの出来ないような狭い瓦礫の間や、土砂災害で地盤の悪い現場も多いため、大型犬に限らず、小型犬等も活躍しています。
災害救助犬になるための犬種には、「シェパード」や「ラブラドール・レトリバー」が多いようですが、小型犬でも「ミニチュア・ダックスフンド」や「柴犬」といった犬種も活躍しています。この他、「ウェルシュコーギー」や「ボーダーコリー」などの犬種に加え、「雑種」の犬たちも関係なく活躍しています。
このように、災害救助犬向きの犬種というものはなく、災害救助犬は、その犬が持ったセンスや性格が重要となるもののようです。
災害救助犬になるために
災害救助犬は犬種というよりも、素質や性格が重要視され、訓練も生後6ヶ月過ぎから開始されます。
もちろん、犬も訓練する必要がありますが、災害救助犬とパートナーを組むハンドラーの訓練・技術も必要となってきます。そのため、人間の訓練も欠かせない要素となり、犬も人も厳しい訓練を受け、はじめて災害救助犬として活躍できるのです。
しかし、実際に災害救助犬として認定される確率は非常に低く、訓練を受けた犬でも50%程の確率でしか認定されないようです。
実際に災害現場をイメージした場所で訓練を受け、様々な過酷な状況下で仕事をしなければいけない災害救助犬。そのハードルも非常に高く、また、いかに災害救助犬が重要で、かつ貴重な存在であるかがわかります。
災害救助犬の世界大会
日本においての災害救助犬の育成はまだまだ始まったばかりと言ったところですが、世界では災害救助犬の世界大会と言うものも存在しています。
この世界大会は、「国際救助犬連盟(IRO:International Rescue Dog Organization)」が主催する災害救助犬の国際大会で、年に一度、世界中からハイレベルな災害救助犬が集まる大会となっています。
ハイレベルな災害救助犬と言っても、「瓦礫」「広域」「足跡追求」「水難救助」部門においての合格犬の中から、さらにハイスコアを持つ犬のみしか参加できない大会であるため、国際大会は非常にレベルの高い災害救助犬ばかりが集まる大会となっています。
こうした国際大会は、各国のスキルの共有や、自国の災害救助犬のスキルアップにも欠かせないものとなっているのです。
落ち込む事も多い災害現場の現状
このように、高いスキルを磨き上げてきている災害救助犬ですが、実際の災害現場においては落ち込むことも多いようです。
というのも、災害救助犬は「生きている人」を探し出し、褒められる事や自分が見つけた人を救助されることに対して喜びを抱いていますが、実際の災害現場では、常にこのような状況ばかりではないのです。
災害救助犬が人を発見したものの、残念ながら亡くなっていた際には犬も落ち込み、ショックな様子を見せるといいます。日本が見舞われた震災では、数多くの方が亡くなってしまっていましたが、こうした現場では、災害救助犬もずっと沈んだままだったというお話もあります。
災害救助犬は、人と同じように人の死に直面し、探すことが出来なかった、間に合わなかったという事に対して悲しみを覚えてしまうのです。
ストレスも相当な仕事
このように、災害救助犬の仕事は、人を探し出すということだけではないため、犬の身体的にも、精神的にも相当なストレスがかかってしまうものなのです。
時には災害現場の足場が悪くて怪我をしてしまったり、また火災が起きていた現場では強い刺激臭が辺りを漂っているために、人間でさえ強いと感じる臭いも、人間よりも鼻の良い犬にとっては耐え難い臭いとなっていることでしょう。
こうした災害現場でなかなか人命救助ができない災害救助犬に、あえて人が隠れて探し出させるというケアも行われるようです。しかし、こうした行動も
、犬たちにはお見通しなのでしょう。それでもなお、災害救助犬として活動する犬には感服させられますが、災害救助犬には高いスキルはもちろん、強い精神力や使命感も必要になってくるのです。
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災害救助犬の引退時期とは
災害救助犬として活躍するのは、だいたい8歳頃までと言われています。
災害現場では、相当な集中力を要し、また、足場の悪い状況であったり、距離なども多く歩く場合もあるために、犬の負担も相当なものです。そのため、ある程度体力もつき、活発な時期でもある2歳位からデビューし、体力の衰えや性格も穏やかになり始める8際頃に引退を迎えるわけです。
災害現場では危険な場面も多々あるため、ケガをしてしまったり2次災害に巻き込まれる可能性も非常に高いです。こうした現場を捜索するためには、体力・忍耐力・集中力などが常に高い状態にあり、犬に与えるダメージも多いことでしょう。
途中で鼻の効かなくなる犬もいるようなので、災害現場の様々な臭いも影響しているのでしょう。それだけ、災害救助犬が仕事をする現場は、過酷なものなのです。
まとめ
まだまだ知らないことも多い災害救助犬。今回の記事で少しでも知っていただけたのならば幸いですが、災害救助犬のこうした活躍や内容を、もっと知ってもらう必要があるように感じます。
日本では犬を利用した仕事、犬の能力に対して、まだまだ認知不足の部分がありますので、災害救助犬にかぎらず、盲導犬や警察犬などの理解を増やしていければと思います。
理解することで、こうした職業犬へのサポートや、頭数の増加も見込めるかと思いますので、みなさまもこうした活動を見かけた際には、直接的ではなくとも、間接的なサポートを行っていただければと思います。
実際の所、災害救助犬が出動する機会が無ければ一番良いのですが、地震大国でもある日本において、災害救助犬の少なさは残念な部分でもあります。優秀な災害救助犬を1頭でも輩出されるよう、身近な団体へのサポートをお願いします!
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