犬の種類には様々な特徴や性質、気をつけなければいけない事などがあり、犬を飼う上では犬種別に特徴を理解することが必要になります。今回は犬種の一つ「イタリアン・グレーハウンド」についてチェックしてみましょう。

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イタリアン・グレーハウンドのルーツ

イタリアン・グレーハウンドは、古代エジプトでファラオの宮廷に存在していた、小型のグレーハウンドを先祖に持つと考えられる犬種で、そのルーツも古く、2000年以上の歴史を持つと考えられています。

実際に、古代ローマやギリシャでは、貴婦人の間で愛玩犬として飼育されていたようで、その様子が当時作られていた花瓶等の器にも描かれており、現在では遺物としても残されています。

また、イタリアにあったポンペイ(79年8月24日に起きたヴェスヴィオ火山による噴火で、地中に埋もれた古代都市)の遺跡には、鎖に繋がれたイタリアン・グレーハウンドの残骨が発見されています。これらのことより、この犬種は、昔から一般に飼育されてきたことが分かります。

王室の犬として扱われてきたイタリアン・グレーハウンド

16世紀のルネッサンス期、イタリアを中心とした南ヨーロッパやトルコなどの地中海近辺で、イタリアン・グレーハウンドは最も発展したと言われています。当時の名高い芸術家たちによって描かれた、貴族の肖像画にも頻繁に登場していることから、イタリアの王室等でも大切に扱われていたことがうかがい知れます。

イタリアン・グレーハウンドは、その後の17世紀にイギリスに渡るのですが、イタリアと同じようにイギリス王室や貴族の間でも人気が高まり、特にイギリスのヴィクトリア女王にも寵愛されていたようです。

この時代に書かれた、犬の図鑑のようなものにもイタリアン・グレーハウンドが紹介されており、トイ・グループとして書かれた2犬種の内の1種が、このイタリアン・グレーハウンドだったとのこと。いかに人気が高かったかがわかりますね。

繁殖によって大きさを変えられたイタリアン・グレーハウンド

現在のイタリアン・グレーハウンドは、体高が40cm、体重も4kg弱程度と、非常に小柄な身体をした犬種です。しかし、イタリアン・グレーハウンドの人気が最盛期を迎えていたと言われる16世紀頃には、まだまだこのようなサイズでは無かったと考えられます。

第二次世界大戦後となる1945年以降になると、イタリアン・グレーハウンドの運命はこれまでと一転、絶滅の危機に瀕してしまうようになります。この理由には、イタリアン・グレーハウンドのサイズをより小さくするための、無計画な繁殖が原因と考えられています。

小型化のためだけに無理な繁殖を繰り返すことで、イタリアン・グレーハウンドの数も激減、やがては絶滅したのではないかと思われるほどになってしまいました。現代のイタリアン・グレーハウンドは、この時代の無計画な繁殖が原因となり、この犬種の健康を損なわせたとも言われています。

その後、幸いにも1800年代にアメリカに渡っていた良質の血統を持つイタリアン・グレーハウンドをヨーロッパへと逆輸入させ、交配させることで絶滅の危機から免れることになったのです。

イタリアン・グレーハウンドの性格


イタリアン・グレーハウンドは、穏やかで優しく、控え目な性格を持つため、年配の方の飼育に向いていますが、乱暴な子供や犬がいると、ケガを負わされることもあります。落ち着いた家庭でのんびり飼育する方が向いている犬種かもしれません。

感覚が鋭く神経質な面を持つイタリアン・グレーハウンドは、何かあるとすぐパニックになったり、食欲が落ちたりすることがあります。そのため、激しく叱ったり、躾と称して乱暴に扱わないようにしましょう。

基本的に聞き分けが良い犬種なので、そこまで強く言わなくても理解できる犬種だと思います。

また、イタリアン・グレーハウンドは、従順で愛情深く、飼い主さんや家族と一緒に遊ぶことが大好きですが、その反面、見知らぬ人には距離を置き、近づかないところもあります。信頼のある飼い主さんにしか素の姿を見せないなんて、そんなところもイタリアン・グレーハウンドの魅力かもしれませんね。

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イタリアン・グレーハウンドの被毛

イタリアン・グレーハウンドの被毛は、「スムースコート(短毛)」で硬く密生していて、滑らかさと光沢がある美しい被毛です。

イタリアン・グレーハウンドの被毛のカラーは、「フォーン」「レッド」「ブルー」「グレー」「クリーム」「ホワイト」「ブラック」「イザベラ」を地色に白のマーキングが入っています。

ただし、「ブラック&タン」「ブルー&タン」「ブリンドル」はイタリアン・グレーハウンドの基準とする毛色では認められていないため、血統証が発行されることはありません。「血統証なんて関係ない」という方であれば、特に問題はありませんが、「血統証は大事」という方であれば、迎え入れる際に毛色について注意する必要があります。

イタリアン・グレーハウンドは抜け毛が少ない

抜け毛が無いと言われるイタリアン・グレーハウンドですが、基本的に「ムダ毛」と呼ばれるような毛が抜けるわけではありません。ただし、ごく短い毛が密集して生えているため、ちょっとした毛であれば抜ける事もあります。

イタリアン・グレーハウンドの被毛は、手入れも比較的簡単で、固く絞ったタオルで全身を拭く程度で問題ありません。また、「ラバーブラシ」を使用してムダ毛をかき集め、「つや出しブラシ」を使用して仕上げると、ムダ毛も取り除きつつ、毛艶を出すことも可能となります。

一般的に言う「抜け毛」というレベルではありませんが、「全く抜けない」という事ではありません。といっても気になるレベルではないでしょう。こうしてブラッシングを行うことで、部屋も汚れず、イタリアン・グレーハウンドもきれいな状態を保つことが出来るのでおすすめです。

イタリアン・グレーハウンドは服を着せるべき?


イタリアン・グレーハウンドが服を着ているのを見たことがある方も多いのではないでしょうか。イタリアン・グレーハウンドに服を着せる理由には、オシャレ感覚で着せている他にも、別の理由があるのです。

その理由とは、イタリアン・グレーハウンドが短毛であるため、冬の寒さや寒暖差に弱いという事が挙げられます。また、暑さにもやや弱かったり、皮膚も乾燥してしまったりと、意外と弱点の多い犬種でもあります。こういった点が、過去に無理な繁殖を行ったなごりなのかもしれません。

こういった環境から皮膚や身体を守るため、イタリアン・グレーハウンドには服を着せていることが多いのです。ただし、イタリアン・グレーハウンドの服を選ぶ際には、通常のサイズの服を着せても、ジャストフィットすることはありません。

イタリアン・グレーハウンドのような体型は、普通の犬種の体型と異なるため、イタリアン・グレーハウンド専用サイズと言うものが存在するのです。服を選ぶ際には、しっかりと専用の服でサイズを合わせるようにしましょう。

イタリアン・グレーハウンドがかかりやすい病気

イタリアン・グレーハウンドは、「進行性網膜萎縮」という病気に気を付けなければいけません。この病気は、網膜が萎縮して正常に働かなくなる遺伝子の病気です。まず、視力が低下して夜に目が見えなくなり、そのうち日中も見えなくなり、最終的には失明します。
他にも「白内障」や「緑内障」など、あらゆる眼科疾患にかかりやすいと言われているので、日頃から目のチェックは欠かさずしましょう。

また、「特発性てんかん」も、イタリアン・グレーハウンドに多い病気とされています。検査をしても脳に腫瘍や炎症などの異常がないにも関わらず、神経細胞に異常が起こることにより発症する病気で、全身が痙攣し、意識を失い、失禁する「全般発作」や、顔の一部や四肢が痙攣する「部分発作」といった症状が見られます。

骨が脆いイタリアン・グレーハウンド

イタリアン・グレーハウンドは、「膝蓋骨脱臼」という病気にも気を付けるべきで、この病気は、後ろ足の膝蓋骨(膝のお皿)が正常な場所から、内側か外側にずれてしまう(脱臼する)状態になる病気です。

最初のうちは気付かない場合も多く、放置していると、どんどん悪化していきます。愛犬が散歩中スキップしたり、足を上げて歩くような素振りを見せた場合は危険信号です。
膝蓋骨脱臼を予防するためには、まず膝に負担をかけないことです。フローリングなどの硬く滑る床には、カーペットやラグを敷きましょう。

また、イタリアン・グレーハウンドはとても骨折が多い犬種として知られています。しかもその骨折は、足や指だけでなく、尻尾の骨折など、私たちが気付かないような箇所の骨折も多いのです。

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イタリアン・グレーハウンドの価格やブリーダーについて

イタリアン・グレーハウンドは人気犬種ですので、ペットショップなどでも容易に探すことが出来るでしょう。ただし、前述の通りカラーによっては血統証が付いていない場合もありますので、迎え入れる際には予備知識としてしっかりと理解しておくようにしましょう。

ブリーダーに関しても比較的多く、探し出すことも容易でしょう。インターネット上にもサイトを開設しているブリーダーも多いので、一度確認してみてもよいかもしれませんね。

価格に関してはおおよそ20万前後。15万円〜という事も珍しくありません。高くとも30万前後と、一般的な小型犬の価格帯となっています。
また、イタリアン・グレーハウンドはカラーによっても価格帯が大きく変わりますので、希少色や一般的なカラーなど、予備知識を増やしておくと良いかもしれません。因みに、血統証が発行されないタンカラーのイタリアン・グレーハウンドは、比較的希少色とされています。

イタリアン・グレーハウンドを病気から守るために

イタリアン・グレーハウンドは、過去に無計画な繁殖を繰り返してきたために、こうして病気の多いような犬種になってしまったのかもしれません。とはいえ、かならず病気を引き起こすわけではありません。飼っているイタリアン・グレーハウンドを病気や事故から守るため、いくつかのポイントに気をつけるようにしましょう。

その一つが麻酔に関してです。麻酔は手術等で必ず必要になってくるものですが、イタリアン・グレーハウンドは麻酔にもあまり強くないため、骨折などで麻酔や鎮静剤を使用せざるを得ない場合は、注意が必要になります。

もちろん、動物病院の先生もこうした性質は理解しているはずですので、麻酔を打つ前にこれまでの麻酔経験の確認や、麻酔の量にも細心の注意を払ってくれるはずです。イタリアン・グレーハウンドにこうした性質があるという事を、飼い主さんも理解しておくようにしましょう。

また、日頃から「ベッドやソファーから降ろすときは抱っこする」「高いところに登らせない」など、飼い主さんの方で細心の注意を払ってあげる必要もあります。骨折などの怪我を未然に防ぐため、楽しそうに遊んでいても、頭の片隅にはこうした注意も払うようにしましょう。

自宅内ではスキンシップを兼ねて、足や指だけでなく体の隅々までチェックすることも、おすすめの予防策です。病気は早期発見・早期治療が肝心です。もしかしたら、骨が折れてて痛いのに、我慢してることもあるかもしれませんからね。

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