私達の身近で活躍する「職業犬」たち。今回ご紹介する盲導犬もその内のひとつですが、盲導犬といえど、まだまだ理解が進んでいないようにも思います。まずはサポートの一歩として、盲導犬について知ってみましょう。

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これまでの盲導犬の認識

目の見えない方の「目」となり、生活を支える「盲導犬」。今や、世間からの認知度も高く、盲導犬を連れて歩いている方を見ることも普通となりましたが、数十年前まではまだまだ理解も進んでおらず、「犬」として入店拒否をされることも珍しい事ではなかったのです。

近年では盲導犬をはじめとした介助犬の普及が進み、また、世間からの認知度も高まっており、店先では「ほじょけん(補助犬)」のステッカーが貼られるなど、「犬」としてではなく人の介助を行う、大切なパートナー・仕事をする犬という認識が当たり前のものとなってきました。

こうした認知の高まりには、盲導犬第一号となる「チャンピィ」を初め、「クイール」「サーブ」といった優秀な盲導犬の感動秘話が広まっていったり、映画化されるなどして、健常者も盲導犬という存在の大切さ、仕事への理解を高めていったように感じます。

日本初の盲導犬

こうして、今や当たり前となった盲導犬ですが、日本で初めて誕生した盲導犬は1957年。今から約60年も前に誕生していたのですね。

海外では盲導犬の育成もすでに始まっていましたが、当時の日本ではまだまだ盲導犬の知識や訓練法なども確率されていませんでした。そこで、盲導犬誕生より遡ること約10年前の1948年から、独自の訓練法や研究を進めていた塩屋さんは、日本初の盲導犬となる「チャンピィ」を育成、盲学校教諭をしていた河相氏の盲導犬を誕生させることに成功したのでした。

盲導犬の訓練には、チャンピィの訓練はもちろん、パートナーとなる河相氏にも訓練が行われ、チャンピィと共に歩く歩行指導を行ったのでした。チャンピィを育てた塩屋氏はその後、800頭近くにも及ぶ盲導犬を輩出、「盲導犬の父」と呼ばれる存在になるのです。

盲導犬はいつ誕生したのか

日本初となる盲導犬チャンピィが誕生したのが1957年でしたが、世界ではいつから誕生していたのでしょうか。

遡ること1819年、ウィーンの神父により訓練されたのが最初の盲導犬と言われています。現在では「ハーネス」と呼ばれる胴輪で盲導犬と共に歩いていますが、この時代にはまだ盲導犬も確率されていなかったので、犬の首輪には細長い棒を付けていたようです。

その後の盲導犬の活躍は、戦時中に目をケガしてしまい、盲目になってしまった兵士のために盲導犬が育成されるようになり、この時代には主に盲導犬は戦争によって負傷、盲目となった兵士の生活に役立てられるようになりました。主にこの時代ではドイツで研究が進められ、その後、アメリカで盲導犬学校「The Seeing Eye」が設立され、また、その後は各国へと盲導犬の訓練所が広がっていくこととなったのです。

大事な役割「パピーウォーカー」

今となっては耳にすることも増えた「パピーウォーカー」という存在。このパピーウォーカーは、将来、盲導犬となり活躍するべく誕生した子犬たちを、ボランティアで育てる方々の事です。
子犬は約2ヶ月で母犬から離され、パピーウォーカーの元へといく子犬たちは、その後1歳を迎えるまで、パピーウォーカーさんの元で大切に可愛がられ、育てられていくのです。
この時期の子犬たちにとって、一般家庭での生活は非常に大事な経験となり、人への信頼性や社会性を身につけられていきます。

犬を飼うとわかると思いますが、1歳を迎える犬は、躾など大変な時期も乗り越え、まだまだやんちゃ盛りで大変な時期でもありますが、何よりもかわいい時期でもあります。このとてもかわいく、愛情が培われてきた時期に、盲導犬となるべく、子犬は次のステージへと進むためにパピーウォーカーさんの手から離れることとなります。

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訓練期間はわずか1年

1歳を過ぎた盲導犬訓練生たちは、いよいよ盲導犬としての訓練を受けるために、他の訓練犬達とともに共同生活が始まります。実際に盲導犬になるまでの訓練期間はなんと1年。この少ない1年間の間に、訓練士さんと共に様々な事を覚えていき、まだ見ぬ視覚障害の方の目となるべく、訓練を重ねていくのです。

とはいえ、わずか1年間の訓練を経て、実際に盲導犬となれるのは10分の3ほど。健康状態はもちろん、厳しい適正診断が行われ、実際に盲導犬になれるのは一握りです。実際に選ばれた盲導犬が、いかに優秀な犬なのだということがわかりますね。

初対面と共同訓練

無事、盲導犬として活躍する事が決定したあとは、いよいよ、視覚障害を抱えた方とペアを組む・・・と言いたいところですが、実際にペアを組むまでには、盲導犬と利用者の性格や生活環境、行動量や速度など、様々な点を考慮し、よりペアとして適している事が条件となるのです。このマッチングにて適切とされて、初めて盲導犬と利用者さんのペアが組まれることとなるのです。

また、ペアが決定してからは4週間に渡って、今度は視覚障害の方が、盲導犬を利用する際の訓練を行うこととなります。この期間、盲導犬と利用者さんはお互いに理解しあい、お互いに無くてはならない存在という事を学んでいきます。ですので、前にも盲導犬を利用していたという視覚障害の方でも、新たに盲導犬を迎え入れる際には同じように、この訓練が行われます。

盲導犬としてのスタート、そして引退へ

この4週間の訓練を経て、さいごの試験「歩行試験」が行われます。この試験に合格した後、晴れて盲導犬としてスタートを切ることとなるのです。これからは、視覚障害をお持ちの方の目となり、より大変な生活を送ることとなります。

盲導犬として活躍するのは、おおよそ10歳まで。約8年もの間、共に生活し、また生活をサポートしてくれていた盲導犬と離れなくてはいけません。盲導犬はペットではなく、仕事を与えられた犬なのです。離れていくのは悲しいですが、利用者・盲導犬ともに無事に引退を迎えられたこと、盲導犬としては立派に仕事をやり遂げたという事になります。

10歳を迎えて引退した後は、リタイア犬としてボランティアの方と共に、今度はのんびりとした日常を過ごしていくこととなります。本当に、お疲れ様でしたという感じですね。

盲導犬の活動を指示しましょう

いかがでしたでしょうか。私達はまだまだ盲導犬に対する知識も少なければ、貢献できることもまだまだあるように感じます。また、盲導犬を見かけた時には、なでたりするのではなく、そっと仕事をサポートしてあげましょう。盲導犬はペットではありません。あくまでも外を歩いている時は「仕事中」なのです。

また、盲導犬に危害を加えるような残念な事件も起きています。盲導犬は、利用者の安全のため、自身に危害が加わっても動いたり、避けたりという判断を二の次に行います。そのため、こうした本当に心ない者によって、盲導犬が被害を受けている事もあるのです。

しっかりと盲導犬について理解を深めるとともに、身近に盲導犬が活動している姿を見かけた際には、声をかけずにそっとサポートできるような、盲導犬の仕事を裏から支えてあげる気持ちで見守ってあげてくださいね。

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