人間の病気でもよく耳にする「ヘルニア」と呼ばれる病気。猫にもヘルニアは存在しますが、いくつかの種類があるヘルニアのうち、今回は「臍(さい)ヘルニア」の症状や原因、対応策について解説していきたいと思います。

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猫にもヘルニアがある?

人間の病気としてもよく耳にする「ヘルニア」と呼ばれる病気。猫の世界にもこのヘルニアは存在しますが、ヘルニアとは、通常であれば体内に収まっているはずの内臓や脂肪組織が、本来体内のあるべき場所から、体外の別の場所へ飛び出してしまう状態のことを言います。

ヘルニアには、へそで起こる「臍(さい)ヘルニア」や、後ろ足の付け根で起こる「鼠径(そけい)ヘルニア」などがあり、犬ほど多くはありませんが、猫も発症します。

ヘルニアの症状は、飼い主さんが見て確認できる状態なので、普段から愛猫とコミュニケーションを取っていれば気が付くことができると思いますが、ヘルニアの症状を放っておいてしまうと、命の危険にもなりかねない状態になることがあります。

「臍ヘルニア」とは


子猫は、生まれる前には胎盤で臍帯(さいたい)と呼ばれるもので母猫と繋がれています。胎児はお腹の中では肺が使えませんので、胎盤を介して母猫から酸素が含まれている血液を送ってもらいます。この胎盤と胎児を繋げているものが臍帯です。

子猫は、出産時にこの臍帯を母猫が噛み切って誕生してきます。通常であれば出産後、子猫の成長とともにこの臍帯に繋がれていた穴は次第に塞がれていきます。この穴が「臍(へそ)」となるのです。

そして今回解説する「臍ヘルニア」とは、この穴が塞がれずに、脂肪組織や内臓の一部がへそとなる穴から飛び出してしまい、でべそのようになっている状態になってしまっている症状を、臍ヘルニアと言います。内臓が飛び出すと行っても一部ではありますが、注意しなければいけない場合もあるのです。

子猫に多い臍ヘルニア

前述の通り、「でべそ」の呼称で知られる臍ヘルニア。見た目にも、お腹にポコンとデベソのようになっているので、「うちの子、デベソがあって可愛いの!」と喜ぶ飼い主さんもいるのではないでしょうか。しかし、実際のところはそんなに楽観視はしていられない場合もあります。

臍ヘルニアは、その名の通り、ちょうどへその辺りが膨らみ、へそが飛び出たような状態であることから、でべそと言った呼び名でも呼ばれる病気ですが、実は症状が悪化してしまうことで腸閉塞などの症状を引き起こす病気です。

また、内臓の一部分だけが飛び出してしまう状態にあるため、内臓の機能も正常に機能してくれなかったり、愛猫自身の健康にも悪影響を与える場合がありますので、最低限の注意は必要となります。

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臍ヘルニアの症状について


臍ヘルニアの症状は、でべその状態ではありますが、穴が小さければ無症状である場合が多く、成長と共に穴が塞がれてしまいます。しかし、この穴が大きかったり、徐々に大きくなっているような状態では、脂肪組織や腸管が飛び出す場合もあります。

腸管がヘルニアから飛び出してしまうと、触診等で膨らみを指で押して戻したりという処置もできるのですが、元に戻らなかったり、すぐに出てきてしまうような状態であれば、腸管が締め付けられてしまうため、腸管が閉塞したり、壊死することがあります。このような状態になると、血行が塞がれてしまうために、激しい痛みが伴い、ショック状態を引き起こしてしまう場合もあるので、非常に危険です。

こうした状態になるまでには、元気の減退や食欲の減退、触られるのを嫌がるといった様子が見られるようになり、腹痛や嘔吐の症状も現れはじめます。このような症状を引き起こす前に、一度病院へ診察に行き、臍ヘルニアの状態を確認してもらうようにしましょう。

臍ヘルニアの原因について

臍ヘルニアの原因については、実は明らかにはなっていません。遺伝によるものと言われていたり、出産時に母猫が臍帯を噛み切る際、子猫のお腹ギリギリのところで噛み切ってしまい、腹壁に穴が開いてしまうことで、臍ヘルニアを引き起こすとも考えられています。

先天的な要因である場合が多いですが、実際のところ「犬」には多く見られるヘルニアも、猫に見られるのは犬ほどではないです。

臍ヘルニアの治療について

臍ヘルニアの治療に関してですが、前述の通り、臍ヘルニアは成長とともに穴が塞がれていく場合もありますので、生後半年未満の幼少猫であれば、触診でヘルニアを押したり戻したりといった処置を施し、しばらくは経過観察を行う場合が多いです。

こうした処置を行っても穴が塞がっていかない場合や、すでに腸閉塞の症状が現れている場合には外科手術を行い、臍ヘルニアの修復を行います。臍ヘルニアは外科手術を行うことでしか完治することはできませんので、1歳を迎えても触診で押しても戻らなかったり、穴が塞がっていかないようであれば、外科手術を行ったほうが良いかもしれません。

臍ヘルニアの手術

猫の臍ヘルニアの手術に関しては、へその内側にある筋肉の膜「腹膜」の欠損が原因となるため、この腹膜を正常な状態に戻す手術を行い、穴となる部分を塞ぐ手術が行われます。

この腹膜の欠損が大きく、穴となる部分が大きければ大きいほどに内臓は飛び出してしまうこととなります。逆に穴が小さければ手術をせずとも、経過観察で住む場合もありますが、手術することとなるのであれば、腹膜の欠損が大きかったと考えるのが普通です。

こうして腹膜を整復し、飛び出している脂肪組織を切除することで臍ヘルニアの手術が完了します。臍ヘルニアは内臓が飛び出してしまう恐れもありますが、多くはこのように脂肪組織が飛び出している場合が多く、内臓自体が飛び出すことはあまりありません。

術後、気をつけることは

臍ヘルニアの症状が重ければ手術する必要がありますが、少々お腹がぽこっとしていて、症状が見られないという場合には手術を行うこともないでしょう。念の為、気を付けておく必要はありますが、臍ヘルニア自体はよほど緊急な状態でなければ、様子を見るという判断が多い症状ではあります。

一方、臍ヘルニアも大きく、症状が重くなりそうである場合には手術を行う必要がありますが、手術を行い、腹膜を整復することで再発する心配はありません。また、術後に関しても特に気をつけることもなく、手術による傷が癒える頃には元気いっぱいの状態になるでしょう。

小さくとも気にしながら飼育するのは不安という方もいらっしゃるかと思いますが、そういう方は避妊手術・去勢手術を行なう際に一緒に臍ヘルニアの手術をおこなうという選択肢もあります。

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避妊手術と共に行うのが理想的


臍ヘルニアの手術を行う際には、一緒に避妊・去勢手術が行われる場合も多いです。あくまでも飼い主さんの判断になりますが、臍ヘルニアが幼少期に発症する症状ということもあり、また、避妊・去勢を行うのも早いほうが良いと言う考えから、一度の開腹で済ませてしまおうという事です。

猫にとっては1度の手術、1度の麻酔も体には負担がかかるものです。できるだけ手術の回数は減らしたほうが、猫のためにも良いでしょう。ゆくゆく避妊・去勢を考えているのであれば、子供を取る事を考えていないのであれば、臍ヘルニアの手術とともに行なってしまうのが得策と言えるでしょう。

また、金銭的にも別々の手術を行うのと、一度に手術を行うのとでは、大きな差が発生することも理解しておくと良いでしょう。

臍ヘルニアの治療費は?

臍ヘルニアに関わる治療費に関してはどの程度になるのでしょうか。

まず、検査として血液検査を行なう際には1万円前後ほどを予定しましょう。実際に臍ヘルニアの手術を行う際には3万円前後を予定しておきましょう。動物病院によっても変わりますが、高くとも5万円ほどでしょう。

一方、去勢・避妊手術に関しては2〜3万円と言ったところですが、前述の通り、別々に手術を行うとこうした金額が発生しますが、いずれかの手術に合わせて、一緒に手術を依頼するとなると、プラス3千円〜5千円程度で行える場合がほとんどです。

動物病院によってもピンきりですが、多くはこうした形で手術を行ってもらえるでしょう。念の為、数箇所の動物病院に見積もってもらうのが良いかもしれませんね。

まとめ

実は意外と少なくない臍ヘルニア。ペットショップなどで子猫を迎え入れる際には、おへそを触るなどして、一度確認をした方が良いでしょう。触ってみれば分かりますが、小さい子猫でマスカット大ほどの大きさのヘルニアがある子もいます。

通常であれば、店員側から臍ヘルニアであることを告げられると思いますが、年齢とともに塞がっていく場合が多いため、特に報告されないこともあるかもしれません。

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