犬の種類には様々な特徴や性質、気をつけなければいけない事などがあり、犬を飼う上では犬種別に特徴を理解することが必要になります。今回は「ラフ・コリー」について、飼っている方もこれから飼いたいと思っている方もチェックしてみましょう。

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ラフ・コリーのルーツ

コリーのルーツは、定かではありませんが、16世紀頃からスコットランドのハイランド地方のような、険しい地形や厳しい天候の中、牧場の羊の群れを誘導したり、羊を狙うオオカミなどの外敵から守る牧羊犬として、飼育されていたと考えられています。

それまでは単なる牧羊犬に過ぎなかったコリーですが、1860年頃にスコットランドを訪れたイギリスのヴィクトリア女王が、このコリーを見てとても気に入り、イギリスへ連れ帰ったことで人気に火が付き、貴族など上流階級の間では、瞬く間に愛玩犬として大流行しました。

この時、ヴィクトリア女王から寵愛を受けたのは、スムース・コリーであったと考えられ、ラフ・コリーはその後改良が重ねられて誕生したようです。

また、初期のコリーの毛色は、「ブラック」や「ブラック&タン」が多かったのですが、1870年頃から「セーブル&ホワイト」の毛色が人気となり、多く作出されるようになりました。

「コリー」という名前は、スコットランドの北部にいた顔と足が黒い羊を、アングロ・サクソン語で「黒」を意味する「コリー」と呼んでいたことと、牧羊犬の多くも黒い毛色が多かったため、「コリー・ドッグ」と呼ばれていたことが由来するという説がある一方、ゲール語で「コリー」は「役立つ」という意味からその名前が付いたとも考えられています。

スムース・コリーとラフ・コリー


コリーには、「ラフ(長毛)・コリー」と「スムース(短毛)・コリー」がいますが、本来この2種類の犬種は、全くの別の犬種として存在していました。初期の頃のスムースはラフ・コリーとは似つかず、ラフ・コリーに比べると体高が低く、頭も大きめでかなりずんぐりむっくりしていたと言われています。

ラフ・コリーは牧羊犬として活躍していましたが、スムースは、ラフ・コリーよりも神経質で攻撃的な性格が多かったため、羊を市場まで護送する護衛犬として使用されていたようです。また、仕事をする上では、毛の手入れが楽であったスムースの方が重宝されており、ラフ・コリーよりもスムースの数の方が圧倒的に多かったようです。

しかし、ドッグショーでコリーの人気が出始めると、エレガントな被毛を持つラフ・コリーの方がショーの見栄えが良かったため、何年もの間スムースとラフ・コリーの間で交配が繰り返されるようになり、世界大戦期にはスムースは絶滅寸前とまでなりました。

戦後はスムースの愛犬家たちにより数を回復させ、未だラフ・コリーの数よりは圧倒的に少ないですが、現在は国際畜犬連盟「FCI」でも別犬種として登録されています。

ラフ・コリーとシェルティの違い


ラフ・コリーとスムース・コリーの違いはわかりましたが、ラフ・コリーによく似ている犬種として挙げられる「シェルティ」との違いについて見てみましょう。一時期は「シェットランド・コリー」とも呼ばれていたシェルティ。まず大きく異なるのがラフ・コリーとの大きさです。

ラフ・コリーは大型犬種で体重はおおよそ20kg〜35kgほど、体高は56cm〜61cmというサイズ。一方のシェルティは、体重が7kg前後で、体高は40cm前後ほど。似てはいますが、シェルティは小型犬であり、ラフ・コリーは大型犬なのです。

両犬種ともに牧羊犬として活躍してきた犬種ですが、シェルティに関してのルーツを辿っていくとラフ・コリーが関わっており、一時期はラフ・コリーとの交配も盛んに行われていたそうです。しかし、シェルティが次第に大型化していってしまったため、再度、スピッツなどの犬種と交配を重ね、小型犬に戻していったという歴史もあります。

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ラフ・コリーの性格

飼い主さんに忠実で、家族にも愛情深い性格のラフ・コリーは、優れた洞察力を持ち、相手の気持ちを察することができる犬種です。悲しい時、苦しい時は、何も言わずそっと傍に寄り添ってくれるでしょう。

また、ラフ・コリーの運動欲求を満たし、深い愛情を注いであげることで、最高のパートナーにもなる犬種です。他の犬種と比較すると、少し繊細で神経質なところがあるラフ・コリーですが、自宅以外の様々な場所に連れていくなど、一緒の時間を共有して行くことで、お互いを思いやれるような仲にもなれる犬種なのです。

ただし、牧羊犬として活躍してきた並外れた持久力を持つ犬でもあるので、飼い主さんにはそれなりの体力が必要となるでしょう。ラフ・コリーの世話も大事ですが、飼い主さん自身の健康管理も重要になる犬種でもあります。

ラフ・コリーは子犬の頃から活動させましょう

ラフ・コリーは、羊を守ってきたという習性から、神経質で警戒心が強い犬種が多く、見知らぬ人や犬などに対してよく吠えるということがあります。

そのため、幼少期のうちから色々な場所に連れて行き、あらゆる人や犬に会わせるなどして、様々なシチュエーションに慣れさせるようにしましょう。また、車や自転車が走るような所は興奮しやすいシーンのひとつです。こういったシーンにも慣れさせるようにすることが、後々に落ち着いて歩くための訓練にもなります。

また、室内で愛玩犬として育てることよりも、飼い主さんと外へ出て、思う存分走りたい欲求が強い犬種ですので、雨が降ろうが雪が降ろうが、そんなことはお構いなしです。ラフ・コリーの欲求を十分に満たしてあげるよう、散歩の時間などは多めに取る必要があります。

ラフ・コリーの被毛


ラフ・コリーの被毛は、長くて硬く、真っ直ぐの「オーバーコート(上毛)」と、短くて柔らかい毛で密生した「アンダーコート(下毛)」の二層構造からなる「ダブルコート」と呼ばれる被毛で覆われています。

ラフ・コリーの被毛は毛玉になりやすいので、毛玉は寄生虫の温床となり、皮膚炎の原因にもなりますので注意が必要です。また、年に2回ほどの換毛期があり、特に春から夏の季節の変わり目には大量の毛が抜けるため、換毛期シーズンにはこまめなブラッシングを行う必要があります。

ラフ・コリーの被毛は美しいので、毎日こまめにブラッシングを心掛けることで、その美しい被毛を維持することが可能となります。できるだけマメにブラッシングを行い、毛玉にならないように気を付けてあげましょう。

ラフ・コリーの毛色と「ブルーマール」

ラフ・コリーの被毛のカラーは、「セーブル&ホワイト」「トライカラー(黒・白・茶の3色)」「ブルーマール」があり、ブレーズ(両目の間から鼻先までの中央を通る線のこと)、カラー(首周り)、胸、足、尾先に白いマーキングがあるのが好ましいとされています。

ラフ・コリーの毛色の中のブルーマールは人気の毛色である一方、気を付けなければいけない毛色でもあります。というのも、ブルーマールの毛色を持つラフ・コリーは、聴覚障害や視覚障害を持つ可能性が高いことが指摘されており、特に両親共にブルーマールである場合、もしくはセーブルマールである場合には、こうした障害を持つ可能性が非常に高くなります。

ブルーマールのラフ・コリーを迎え入れる際には、両親の情報に関して十分にリサーチしておく必要があります。

ラフ・コリーがかかりやすい病気

【股関節形成不全】
股関節形成不全は、股関節が正常に形成されなかったり、変形されることで、歩き方に支障をきたす骨の病気です。
肥満体型は、股関節形成不全を引き起こすきっかけとなってしまいますので、子犬の頃から、フードの給仕量と運動のバランスを考えるなど、肥満にならないように、食事の管理は徹底するようにしましょう。

【コリー眼異常(CEA:Collie Eye Anormaly)】
コリー眼異常とは、視神経や強膜など、目を構成する組織に色々な形成異常が起きる遺伝性の病気です。
この病気の症状は、軽傷の場合、普通に目が見え、判断がつきにくいケースもあれば、若齢のうちに発症し、症状が進行して失明することもあります。また、発症した場合、繁殖に用いることはやめた方が良いでしょう。

この病気には、遺伝子検査がありますので、引き取ってすぐ検査をすることをお勧めしますが、事前に遺伝子検査を済ませている親犬から子犬を引き取るのが、最善であると言えるでしょう。

ラフ・コリーの寿命

ラフ・コリーの寿命は、おおよそ15歳前後ほどと言われています。非常に活発な犬種ですので、ストレスを溜めないような生活や、幼少期からの運動が、丈夫な体を維持させるポイントとなりそうです。

また、ラフ・コリーに限らず、全てのコリー犬はフィラリアの予防薬として使われる「イベルメクチン」の使用が危険とされています。

ラフ・コリーを飼育している方であれば常識となる事ですが、中にはフィラリア程度の量なら問題ないという説もあるため、万が一の可能性を考えて、獣医さんとよく相談された方が良いでしょう。

ラフ・コリーのかかりやすい病気やイベルメクチンの使用、ストレスのかからないような生活など、気をつけるべきポイントはいくつかありますが、日頃から健康管理に注意して、1日でも多く長生きできるような丈夫な体作りを目指しましょう。

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ラフ・コリーのブリーダー


ラフ・コリーを迎え入れる際には、ペットショップなどで探しても、なかなか見つかることは少ないでしょう。大型犬全般に言えますが、ペットショップなどでは大型犬よりも小型犬のほうが多く扱うため、実際にラフ・コリーを迎え入れるとなると、ブリーダーからの直販が手っ取り早い方法になります。

ブリーダーから迎え入れる際のデメリットとしては、ペットショップのように見て回れない点が挙げられますが、メリットのほうが多くあります。前述の通り、ブルーマールのラフ・コリーを迎え入れたいのであれば、すぐに親の情報もキャッチできますし、ブルーマールでなくとも親の情報を把握することが出来ます。

また、価格に関してもペットショップから迎え入れるよりも安価である場合が多いでしょう。相場としては15万円〜20万円ほどで取引されていることが多いようです。

ラフ・コリーと暮らすために

牧羊犬の資質を持つラフ・コリーは、とても多くの運動量が必要になりますので、運動量を満たしてあげられな状況が続くと、ストレスから吠える・噛む・物を破壊するなどの問題行動を引き起こすこともあります。そのため、散歩だけでなく、広い敷地内でフリスビーで遊んだり、アジリティのようなドッグスポーツをするなど、飼い主さんも一緒になって楽しめるような運動を取り入れると良いでしょう。

日本でも以前、テレビドラマ「名犬ラッシー」でコリーブームに沸いた時代がありましたが、実際飼育してみると、運動量の多さや被毛の手入れの手間、ストレスからの問題行動を引き起こしたりで、本来は陽気で優しい性質のコリー犬であったはずなのに、吠え声がうるさい、想像と違ったなどと、コリーの勝手な先入観を持って飼い始めた人たちが手放すということが続出したことがありました。

コリーは、会話こそできなくても、相手の心情を察するかのように勘が鋭く、相手を思いやることができる犬種です。それゆえ、繊細な心の持ち主でもあるため、乱暴に扱ったり、厳し過ぎる躾をすると、コリー本来の良さを引き出すことができません。
コリーのしつけは、日頃からアイコンタクトを取りながら沢山話しかけてあげること、そして、決して甘やかすだけの躾ではなく、褒める時は大袈裟に褒め、叱る時はきちんと叱り、愛情のあるメリハリある躾を心掛けることが大切です。

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