犬の種類には様々な特徴や性質、気をつけなければいけない事などがあり、犬を飼う上では犬種別に特徴を理解することが必要になります。今回は「プーリー」について、飼っている方もこれから飼いたいと思っている方もチェックしてみましょう。

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プーリーの優れた作業能力

プーリーは、とても古い歴史を持つ犬種で、1000年以上前に、中近東の遊牧民によって、ハンガリーに持ち込まれ、牧羊犬や護畜犬として使用されていました。

プーリーと同じ、ハンガリー原産の護畜犬である「コモンドール」がいますが、共に家畜の群れを守ることがあったようです。

例えば、昼にプーリーが家畜見ているときはコモンドールが休息し、夜はコモンドールが家畜を見張るときはプーリーが休息を取っていました。オオカミや熊など家畜を襲う外敵が現れた場合、プーリーは吠えることで周囲に知らせ、それを聞いたコモンドールが外敵を撃退していたのです。何と素晴らしい連携プレーでしょう。

他にもプーリーは、水中での獲物の回収犬としての仕事も得意としていました。また、群れからはぐれた羊を見つけると、その羊の上に飛び乗り、羊の背中を引っ掻いたり、首筋を噛むことで、方向をコントロールして、羊を群れに戻すというような牧羊犬としての才能にも長けていました。

その後のプーリーは


17世紀以降、ハンガリーには西ヨーロッパの人たちが移民してきたことにより、持ち込んだ犬とプーリーと異種交配が始まりました。これが「プーミー」という犬種が作出されたきっかけとなりました。プーミーの作出が盛んに行われたことによって、プーリーの頭数が激減し、一時は絶滅しかけましたが、1900年に入った頃、本来のプーリーを復元させようという運動が始まり、1915年にプーリーのスタンダードが制定され、1924年には、国際畜犬連盟の「FCI」に公認されました。

1935年頃のプーリーのサイズは多様化されており、警備犬や警察犬としての仕事を担う大型犬や、牧羊犬やショーに出陳する中型犬、ミニプーリーとされる小型犬がいましたが、その中の中型犬のプーリーが最もプーリーらしい大きさと評価され、今日のプーリーの大きさとなりました。その後、1936年にアメリカの愛犬家団体「AKC」に登録されています。

ちなみにプーリーは、毛色や毛質を除けば「チベタン・テリア」と類似点が多いため、チベタン・テリアがプーリーの祖先であると考えられています。また、水中での仕事が得意であったことから、プーリーは、「プードル」の祖先犬である可能性が高いと言われています。

プーリーの性格

とても賢く、物覚えが早いプーリーは、しつけや訓練などはどんどん吸収していきます。また、飼い主さんや家族に対しては忠実で、愛情深い性格ですが、他の人や犬に対しては警戒心や縄張り意識が強いため、番犬に適しています。

プーリーは、飼い主さんだと認めた人に対しては、極端に甘えん坊で寂しがり屋さんのようで、「いつも自分を見ていて!」という気持ちが強い犬種のようです。

しかし、プーリーは、昔ながらの護畜犬としての資質からか、独立心が強く、頑固なところもあり、自分で状況を判断して動くことができる能力を持ちますが、自分が正しいと思って行動したことについて叱られると、あからさまに嫌がる傾向にあるようです。

そのため、幼少期からの服従訓練は必須ですが、プライドが高い犬種なので、乱暴に扱ったり、威圧的な態度で接すると、神経質になったり、攻撃的な犬になることがありますので注意が必要です。

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プーリーの被毛


プーリーは、柔らかく密生した「アンダーコート」と、縄状の粗い「オーバーコート」の二層構造からなり、このアンダーコートにオーバーコートが巻き付くことで、「コード(縄状のひも)」となり、プーリー独特の「コーテッドコート」と呼ばれる特徴的な被毛になります。

このコードと呼ばれる被毛には意味があり、その1つになるのが、雨や寒さなどの過酷な天候に耐えるうる、丈夫な被毛と言うことが挙げられます。また、この被毛は寒さから体が冷えてしまうことをしのぐだけでなく、鎧としての役割をも果たしているのです。

プーリーだけでなく、上記の写真にもある「コモンドール」にも同じことが言えますが、牧畜犬として家畜を守る際に、家畜を襲うオオカミなどの外敵の牙から体を守る役割も果たしているのです。

プーリーの子犬はどんな感じ?

プーリーのコードと呼ばれる独特な被毛は、子犬の頃から生えているのでしょうか。プーリーが幼少期のうちは、実はオーバーコートも柔らかくフワフワしているので、プードルのようにテディベアカットされる方が多いようです。そして、このプーリー特有のコーデッドコートになるまで、実に2年ほど、完全なコードになるには4〜5年かかると言われています。

生後半年ころまではアンダーコートも生え揃わないため、それまではしっかりとブラッシングを行う必要がありますが、徐々に被毛も房状にまとまり始めるようになり、この頃になるとブラッシングを行わずに、被毛の管理を行う必要があります。

生後10ヶ月をすぎる頃には房状になった被毛を、毛玉にならないように管理する必要があり、素人のレベルでは手におえないような状態へと変化していきます。こうした被毛の管理を重ね、2歳になる頃には美しいコードが誕生するのです。

プーリーのシャンプーは?

プーリーの被毛の手入れは、ブラッシングを避け、もつれた縄状の被毛を手でほぐしてあげることが大切です。あくまでもブラッシングが行えるのは、アンダーコートが生え揃わない子犬の時期だけ。それ以降は、手でほぐす方法のみとなります。

室内でペットとして飼育している場合は、1ヶ月に1回のシャンプーが必要ですが、縄状の被毛を1本1本丁寧に揉み洗いして乾かすため、1日がかりになることは覚悟しましょう。また、完全なコードになっていない時期には毛玉にもなりやすいため、1歳前後の頃は特に大変な時期になるでしょう。

また、プーリーのシャンプーを行う際には、浴槽に貯めたシャンプーを溶かしたお湯で揉み洗いする方法となります。すすぎに関しても、貯めたお湯を何度もすすいでは流して、すすいでは流しての繰り返しで行います。聞くだけでも大変なことがわかりますね。

プーリーは黒い毛色だけ?

プーリーの被毛のカラーは、一般的には「ブラック」が多いのですが、これは、牧羊犬の頃から羊と区別をを付けるためと考えられています。また、「ブラック」と言っても、純黒ではなく、錆色やグレーが僅かに入ったブラックが多いようです。

そして、実はプーリーの毛色は他にも、「フォーン」や「ホワイト」「グレー」「ホワイトグレー」「クリーム」が存在します。各団体によっても認められる毛色は異なりますが、「2色以上のカラー」「チョコレート」「フォーン」「アプリコット」「オレンジ」と言ったカラーは認められていません。

原産国となるハンガリーにおいては、ブラックとホワイトのみが認められていますが、実はプーリーにはこのような色々なカラーも存在するのです。

プーリーがかかりやすい病気

【進行性網膜萎縮】
進行性網膜萎縮とは、網膜が萎縮して正常に働かなくなる遺伝性による目の病気です。まず、視力が低下して夜に目が見えなくなり、そのうち日中も見えなくなり、最終的には失明します。
日頃から、愛犬が何かにつまずいている様子はないか、大好きだった散歩を嫌がっていないかなど、少しの変化にも注意して観察しましょう。

【股関節形成不全】
股関節形成不全とは、股関節が正常に形成されなかったり、変形されることで、歩き方に支障をきたす骨の病気です。
肥満体型は、股関節形成不全を引き起こすきっかけとなってしまいますので、子犬の頃から肥満にならないように、食事の管理は徹底するようにしましょう。

プーリーの被毛をカットする時は気を付けましょう


プーリーの被毛の管理がいかに難しいかがわかりました。犬の被毛の管理にかなり慣れている方でも大変なプーリー。近所のトリミングサロンでも、手に負えないという所も多いでしょう。

そのため、プーリーのトリミングが行えないサロンに行くと、場合によっては絡まりすぎている部分が毛玉と判断されてしまい、バリカンなどでカットされてしまう可能性もなくはありません。こうした事態を防ぐためにも、プーリーやコモンドールの手入れや、被毛の管理、シャンプーを行ったことがあるというサロンを探すか、プーリーのブリーダーに相談してみるのが安全策と言えるでしょう。

トリマーであれば、プーリーの毛質や被毛の管理の大変さを理解して入ると思いますが、中にはそんな気も知らずにバリカンで刈ってしまう方もいるようです。プーリーのカットを希望する際には、十分にリサーチするようにしましょう。

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プーリーのブリーダー

プーリーは日本でも非常に珍しい犬種であるため、ペットショップで見かける機会は無いでしょう。そのため、プーリーを迎え入れる際にはブリーダーからの直販という形を取る必要があります。

日本国内でのプーリーのブリーダーは、関東に存在しています。価格に関しては、相場はおおよそ20万円程と言われていますが、それ以上になる場合も珍しくはないでしょう。逆に、ディスカウントされている事はほぼ無いと考えて良いです。

実際にプーリーを迎え入れる際には、プーリーの代金の他にもトリミングやご飯代といった費用も見積もっておきましょう。被毛の管理が一番大変になりますので、しっかりと予算を考えて置かなければ、後々大変な事になります。毛玉だらけで大変な思いをさせないよう、予めしっかりと予定を組んでおくようにしましょう。

プーリーと暮らすために

プーリー独特の被毛は、抜け毛がないと言っても、手入れをしないと皮膚疾患を引き起こしやすくなります。皮膚病になってしまった場合、毛を刈り取ることもあります。また、被毛が厚くて固いので、熱が体内に籠もりやすくなっており、熱中症を発症してしまうこともありますので、日本のような高温多湿の気候で飼育する場合、クーラーは欠かすことができないでしょう。

また、プーリーは、とても賢く、身体能力が高い犬種です。運動欲求の他にも、知力欲求も満たしてあげないと、ストレスから、吠える・噛む・物を壊すなどの問題行動を引き起こすこともあるため、普段の近所の散歩やドッグランで走らせるだけでは、肉体的な運動欲求を満たすことができても、知的欲求は満たされません。

そのため、広い敷地内で飼い主さんも一緒になってフリスビーで遊んだり、アジリティのようなドッグスポーツをするなど、身体も脳も刺激になるような運動を取り入れましょう。

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