愛犬の乳房あたりにしこりはないですか?愛犬がしきりに乳房を舐めている様子はないですか?そんな時はもしかしたら「乳腺腫瘍」や「乳ガン」を疑ってみましょう。今回は「乳腺腫瘍」や「乳ガン」について、症状や治療法、予防策などを考えていきましょう。

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乳腺腫瘍と乳ガンとは


「乳腺腫瘍」とは、母乳を産生する乳腺にできた腫瘍のことを言い、大きく分けて良性と悪性がありますが、悪性の乳腺腫瘍のことを「乳ガン」と呼んでいます。
犬の場合、この腫瘍が悪性である確立は約50%で、中でも8歳以上の高齢犬が発症しやすいと言われています。また、良性だったからと言って、安心できないのも乳ガン恐ろしいところで、その時は良性でも、後に悪性腫瘍を患う可能性もありますので注意が必要となります。
1992年に発表されたあるデータでは、始め良性と判断された腫瘍が悪性腫瘍へと発達していくリスクは、約9倍に高まるとされています。一度腫瘍が発見されれば、気を抜くことなく、定期的に健康診断を行わなければ、取り返しのつかない自体に発展してしまう可能性も高いのです。

避妊手術で乳がんのリスクを軽減

避妊手術をしていないメス犬は、避妊手術を済ませた犬に比べて、約7倍もの確立で乳ガンを発症するというデータがあります。また、様々な癌の中でも、メス犬の中で最も多く見られる腫瘍が「乳腺腫瘍」なのです。
さらには、比較的高齢期を迎えた犬も乳ガンを発症しやすいと言われていますので、8歳以上の高齢期を迎えた、避妊手術を済ませていないメス犬を飼育している場合は特に注意が必要です。乳ガンは進行性が高く、肺への転移が早いというのも特徴の一つに挙げられます。
愛犬の異変に気が付き、動物病院で診察を受ける際には避妊手術を行っているかどうか、発情はいつ頃が最期だったか等、ある程度詳しい情報があれば、より診察もスムーズに進むことでしょう。しこりに気がついた時期や、おおよその大きさなどの情報も合わせて、しっかりと把握しておくようにしましょう。

乳ガンの症状

乳腺腫瘍ができると、良性であっても悪性であっても、早期に発見した場合、乳腺付近に1cm未満の硬めの小さなしこりができます。また、乳頭部分に腫瘍がある場合は、乳頭が赤く腫れ、血のようなものや、黄色い分泌物が出ることもあります。
この頃に、犬がしきりに腹部を舐めることがあるなら、乳腺腫瘍を疑った方が良いかもしれません。しこりは1つのときもあれば複数個できたり、途中から増えることもあります。
そのしこりはしだいに大きくなり、表面が潰瘍化し、出血を伴ったり、臭いが発生するようになります。さらに悪化すると、胸以外にも、脇の下や下腹部、後ろ足の付け根が腫れ、体に触られることを嫌がるようになり、食欲が低下したり、体重が減少し、みるみるうちに痩せ細ってしまうこともあります。
最悪の場合、乳ガンから肺への転移が多いですが、その他にも、リンパ節や肝臓、その他の臓器に転移していることもありますので、一刻も早い治療が望まれます。

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乳ガンの原因について

乳腺腫瘍や乳ガンは、乳腺に腫瘍ができることで発症しますが、その原因は未だ定かではありません。しかし、可能性としては、先述したように、避妊手術をしていないメス犬は、避妊手術を済ませた犬に比べて、約7倍もの確立で乳ガンを発症すると言われていますので、女性ホルモンの影響が大きく関係していると考えられます。
その他にも、乳ガンは、8歳以上の高齢期を迎えた犬が発症することが多いことから、高齢犬の抵抗力の弱さも関係していると言えるでしょう。また、好発犬種としてシーズーやビーグル、マルチーズやヨークシャテリア、プードルやポメラニアンが挙げられます。
乳ガンは、メス犬が圧倒的に発症することが多いですが、稀にオス犬が発症することもあるようです。確かに、オス犬にもおっぱいはありますからね。

早期発見で完治を目指す


初期段階でまだ乳ガンが小さく、犬に体力がある場合は、外科手術によってガン細胞を取り除きます。乳ガンは腫瘍が小さければ小さいほど、術後の経過も良く、早期の乳ガンを発症した約75%の犬は、乳腺を摘出することで完治が望めると考えられています。
乳がんはステージ1からステージ5まで分けて考えられ、初期段階であるステージ1では腫瘍の直径が3cm未満の場合と考えられます。ステージ5では、腫瘍の大きさにかかわらず、リンパ節だけではなく他の組織へも転移してしまっている状態がステージ5となります。
おなじステージ1でも、早期発見できることで、より完治させる可能性が高まるため、日頃から愛犬にしこりが出来ていないか等、スキンシップを図りながらチェックするようにしましょう。

乳腺腫瘍の手術

乳ガンの手術は、腫瘍が1cm未満で単体の場合に、腫瘍と腫瘍を含む乳腺のみを摘出する手術が行われます。手術時間が短く、体の負担もあまりかかりません。また、乳ガンの再発を避けるため、片側の乳腺一帯を全て摘出する場合もあります。腫瘍が1cm以上である場合には、腫瘍付近を一緒に切除する手術が行われます。
いくつか複数個の乳腺に腫瘍ができた場合は、両側の乳腺を全て摘出する手術を行います。まず、右か左のどちらかの乳腺一帯を全て切除した後、1ヶ月ほど時間をあけてからもう片方の乳腺一帯をまるごと切除してしまいます。
早期発見であったとしても、別の場所に腫瘍の転移や取りこぼし、再発の可能性があるため、広域な切除が行われるのです。

乳ガンの治療法とは

ガンが進行している場合や、犬に体力が無くなっている場合、他の器官への転移が見られる場合などは、抗がん剤や放射線による内科的治療が行われますが、腫瘍を完治するための治療としては、残念ながらあまり期待できないようです。
光線力学療法でがん細胞の増殖を抑制させる治療、抗がん剤等で病状の悪化を抑える化学療法など、いくつかの治療の選択肢もありますが、すべては愛犬の症状や状態によっても変わってくるでしょう。
ガンの進行を遅らせる目的や、ガンの症状を緩和させる目的の治療と分かれますが、根本的には愛犬の免疫力をできるだけ高め、ガンの進行を少しでも抑えることが重要かもしれません。こうした治療法に頼りつつ、飼い主さんも愛犬の状態を少しでも良くするような食事管理や飼育管理を行なっていきましょう。

乳腺腫瘍の治療費は?

乳腺腫瘍に関わる治療費はどのくらいを目安にしておけばよいのでしょうか。
症状も軽く、手術に関しても日帰りで済む場合には、おおよそ5万円ほどの治療費を目安にしておくと良いでしょう。愛犬の状態によっては日帰りが出来ない場合も考えられますが、入院となると15万円程の費用を予定しておいたほうが良いかもしれません。
また、ステージの進行具合では十分な治療が必要になる場合もあります。こうした場合、30万円程の治療費を考えておいたほうが良いでしょう。30万円で命が助かるのであれば安いものですが、術後の治療方法やリスク、メリットなど、十分に獣医師の先生と話し合う必要も出てくるでしょう。
その後も通院が必要になる場合や、特別な食事の管理が必要になることもあるので、こうしたことも踏まえ、予後の過ごし方だけでなく費用面も相談してみると良いでしょう。

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乳腺腫瘍・乳ガンを予防するために

乳腺腫瘍は犬の腫瘍の中でも、皮膚の腫瘍に次いで2番目に多く発症すると言われています。もし、良性の乳腺腫瘍だったとしても、悪性の乳腺腫瘍に変わることもありますので、安心はできないでしょう。
乳ガンは、避妊手術を行うことで発症を1/7に抑えることができます。1回目の発情前に避妊手術を行うことで約0.5%、1回目の発情と2回目の発情の間に避妊手術を行うと約8%、発情が2回以上きた場合に避妊手術を行うと約26%まで乳ガンの発症率を下げることができるようです。
根本的には100%乳ガンを防ぐことはできませんが、愛犬が老齢期に入った時、乳ガンの「発症リスク」を下げることができるのであれば、避妊手術を行うことを検討された方が良いかもしれませんね。

しこりがないか、日頃からスキンシップを


乳腺腫瘍を早期に発見するためには、なんといってもスキンシップが大事です。避妊手術を済ませた子も、そうでない子も、日頃から愛犬とスキンシップを兼ねて、身体をあちこち触ってみて、しこりや出来物ができていないか、チェックしてあげることが、乳ガンの早期発見・早期治療に繋がるでしょう。
また、いざしこりや痛みが生じると、なかなか触らせてくれないことも考えられます。こうした行動も、日頃からスキンシップを兼ねたマッサージなどを行うことで、警戒されずに早期発見できる可能性が高まるでしょう。
愛犬の頭を撫でるだけではなく、身体全体を触れることで病気のチェックだけでなく、愛犬のストレス発散や免疫力の向上にもなりますので、今日からでも遅くはありません、愛犬と密なスキンシップを行うようにしましょう!

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