忠犬と言えばまっさきに名前が挙がる「忠犬ハチ公」。渋谷駅で飼い主である主人を待ち続けた、秋田犬の切ない話ですが、こうした犬の感動的な話は日本だけでなく、世界各地でも確認されています。その一部をご紹介していきたいと思います。
まるでハチ公?帰らぬ主人を待ち続けたアメリカの忠犬「シェップ」
1930年代のアメリカにいた「シェップ(Shep)」という名の忠犬は、日本のハチ公とやや状況を同じくして、駅で飼い主を待ち続けた忠犬として知られる犬です。シェップはアメリカのモンタナ州フォート・ベントン(Fort Benton)にある病院に入院していた、羊飼いの男性が飼っている牧羊犬。この男性は、元はフォート・ベントンに住んではいませんでしたが、1936年の夏に突然倒れてしまい、ここフォート・ベントンの病院へと運ばれることになったのです。そして、シェップは運ばれる主人と共に病院へと移動し、病院の玄関で主人の回復を待つのでした。
しかし、男性の症状が回復することはなく、わずか数日で息を引き取ることとなってしまいました。その後、息を引き取った男性は、フォート・ベントンから元の住んでいた場所へと鉄道で運ばれることとなりました。この様子を見ていたシェップは、このフォート・ベントンの「グレートノーザン駅」で寝泊まりをするようになり、1日4回到着する汽車を出迎え、主人の帰りを待つようになりました。
こうした背景を知らない地元の人々は、始めは野良犬としてシェップを扱っていましたが、汽車の中で販売されたパンフレットにシェップの悲話が載せられたところ、多くの人々がシェップの行動に感動し、シェップは一躍有名な忠犬となるのでした。主人を失ってから約6年の1942年1月12日、耳の遠くなっていたシェップは汽車にはねられ、命を落としてしまうこととなりました。
シェップが亡くなった2日後、約200人もの人々がシェップの死を悲しみ、葬儀が営まれました。フォート・ベントンにある丘の上には今もシェップの墓が建てられています。現在では使われなくなったグレートノーザン駅ですが、フォート・ベントンの街の中心に建つ「グランド ユニオンホテル」の横にはシェップの銅像が建てられ、今もなおシェップの話が語り継がれています。
飼い主の車を待ち続けたロシアの忠犬「コンスタンティン」
ロシアからはハチ公同様に、7年間飼い主の車を待ち続けた忠犬「コンスタンティン」をご紹介します。1995年、ロシアのトリヤッチで若い新婚のカップルが自動車事故を起こしてしまいます。その車には新婚のカップルの他にも、2人が飼っていた1匹のジャーマンシェパードが乗っていました。
事故によって女性は即死、男性は搬送先の病院で息を引き取りました。しかし、同情していたジャーマンシェパードだけは奇跡的にも命に別状が無かったのです。ところが、2人を失ったジャーマンシェパードは宿無しとなってしまい、事故が起きた道路脇で生活するようになります。
その後もこのジャーマンシェパードは路上で2人の乗る車を待ち続け、道路を通る車に寄っていっては、飼い主がいないかを確認していたのです。この様子は多くの人々に目撃されており、その様子から、人々は「忠義心」という意味を持つ「コンスタンティン(Constantine)」と呼ぶようになります。
事故から7年後、道路脇で飼い主の車を待ち続けたコンスタンティンは、付近の森の中で死んでいました。原因は、怪我をしていたことから、ひき逃げされたと見られているようです。この後、近隣住民による資金集めによって、コンスタンティンの銅像が建てられることとなりました。
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帰らぬ飼い主を14年待ち続けたイタリアの忠犬「フィド」
最期にご紹介するのは、ハチ公の7年を大きく上回る14年間もの間、飼い主を待ち続けたイタリアの忠犬「フィド」についてご紹介します。1941年、イタリアのトスカーナ州に住むカルロさんは、怪我をしている野良犬を発見します。カルロさんはこの野良犬を介抱するため、自宅へと連れて行き、看病を行ないました。こうしている内に、カルロさん夫妻はこの野良犬に「フィド(fido)=忠実」と名付け、ペットとして飼うこととなります。
ペットとして飼われるようになったフィドは、カルロさんが仕事に出かける朝には、バス停まで見送りをし、夕方の帰宅時になると再びバス停まで向かい、カルロさんをバス停で出迎えてる生活を送っていました。
こうした幸せな生活が2年ほど続いた頃の1943年12月30日。当時は第二次世界大戦中であったため、空襲によってカルロさんの働く工場などが攻撃されてしまい、カルロさんも犠牲になってしまったのです。こうした事実を知らず、フィドはあくる日もカルロさんの帰りを待ち続け、14年の時を経て、フィドは大好きなカルロさんの横に埋葬されました。
フィドの話は人々に感動を与え、フィド生前中の1957年11月9日には市長から、特製の金メダルが授与され、同年に彫刻家のサルヴァトーレ・チポラによって銅像が制作され、今もなおピアッツァ・ダンテ広場にフィドの銅像が建てられています。
さいごに
犬は人間と共に生活し、ペットではなく家族として一生を過ごすことができる動物ですが、その中でも誰もが驚くような事をする犬がいます。忠犬ハチ公も、数日間だけ渋谷駅で待ち続けていたというなら、まだ頭の良い犬だなぁと感じてしまいますが、ハチが待ち続けた日々は7年間もの間であったため、人々は心を動かされたのでしょう。
こうした事実は、単に犬が頭の良い動物というだけではなく、人の感情や様子を理解し、犬自身が自ら考え、どうするべきかというのを理解していると言うことがわかります。犬は愛情を注ぐことで、しっかりとその愛情を受け止めてくれるのですね。
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