メス猫が発症してしまう「乳腺炎」という病気。乳腺が腫れてしまったり、しこりができてしまったりといった症状で、痛みも伴う病気です。子育て中の母猫は特に注意が必要な病気ですので、事前に乳腺炎の症状や原因を理解しておきましょう。
猫の乳腺炎とは?
メス猫が発症する病気に「乳腺炎」と呼ばれる病気が存在します。乳腺炎はメス猫の乳房にしこりができたり、腫れてきてしまうという症状が現れます。乳腺炎を患っている母猫は、乳腺に痛みを感じているために、子猫に授乳することを嫌がるというような様子も見られます。
愛猫が妊娠している場合や、これから子猫を産ませたいと考えている飼い主さんは知っておかなければいけない病気の一つとなるでしょう。
それでは、猫の乳腺炎の発症の原因や、治療法、予防などを解説していきましょう。
猫の乳腺
猫の乳腺は、前足の付け根の下辺りから後ろ脚の付け根辺りまで、左右4箇所ずつ、合わせて8箇所付いています。上から「前胸乳頭」「後胸乳頭」「腹乳頭」「鼠径乳頭」と呼ばれます。
この乳腺は、必ずしも左右対称に付いているわけではなく微妙にずれて並んでおり、これは、横になって授乳する際、子猫たちが重なり合わないようにおっぱいを飲むためと言われています。
乳腺炎の原因について
乳腺炎を発症してしまう原因には、授乳中に子猫が引っ掻いたり、噛んでしまうことで傷が付き、傷から細菌が入り込み炎症を引き起こします。
そのため、細菌による乳腺炎は化膿することが多いようです。
また、乳腺内に残った母乳が詰まることで乳腺炎を発症することもあります。これは、子猫の乳離れが早かったり、元々母乳の量が多いなどが原因となります。
こうした要因の他にも、乳腺炎を引き起こしてしまう原因に「偽妊娠」と呼ばれる、メス猫特有の病気も関係する場合があります。
この偽妊娠は、人間で言うところの想像妊娠と近いものになりますが、猫の偽妊娠はホルモンの分泌が正常に働かなかった為に引き起こされる、ホルモンの病気のひとつです。偽妊娠を引き起こすことで、母乳が溜まってしまい、結果として乳腺炎も引き起こす原因となってしまうのです。
「偽妊娠」とは
約60日間ほど続く発情後期の間、メス猫の体には、黄体ホルモンと呼ばれるホルモンの分泌が続きます。この黄体ホルモンは、受精卵が着床しやすくするためのホルモンですが、偽妊娠は黄体ホルモンが出続けてしまうことで引き起こされます。
本来であればメス猫の体は、妊娠しなかった場合には黄体ホルモンの減少とともに、通常に戻っていくのですが、黄体ホルモンが分泌されている間には、メス猫の体も妊娠を受け入れる態勢のままなのです。
そのため、黄体ホルモンが出続けてしまうと、メス猫の体は妊娠していると勘違いを起こしてしまい、偽妊娠を発症してしまうのです。
偽妊娠の症状
メス猫が偽妊娠を引き起こすと、乳腺が張ってきたり、母乳が出てくると言った症状が見られ、本能的に子猫を産む準備をしようと、落ち着ける場所で巣作りを行ったり、ぬいぐるみなどを相手にして、子育てを行うなどの行動が見られる場合もあります。
偽妊娠の治療に関しては、特に何もしなくとも通常の状態に戻っていくため、特に治療を施さないといけないと言うわけではありませんが、毎回のヒートの度に偽妊娠を繰り返すようであれば、一度検査を行ったほうが良いかもしれません。
「想像妊娠」とも言われる偽妊娠ですが、予防策としては早期に避妊手術を行うこととなります。命に別状のある症状ではありませんが、乳腺炎を引き起こす可能性もある症状ですので、飼い主さんは様子が変わらないかなど、注意深く見ておく必要もあります。
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乳腺炎の症状
乳腺炎の基本的な症状は、授乳期や授乳後が多く、乳腺自体が腫れてしこりができるため、熱を持ったり痛みが生じます。そのため、授乳中の母猫は、痛がって子猫におっぱいをあげることを嫌がるようになる授乳拒否により、子猫は発育不良で命を落とすことがあります。
さらに悪化すると、患部が炎症を起こして化膿してしまい、膿が混ざった黄色い母乳を分泌するようになり、食欲不振や発熱を引き起こします。
また、偽妊娠のように妊娠していなくても、乳腺炎を発症した場合、妊娠していないのに母乳が出てきたり、乳腺が張るというような症状も見られ、元気消失や食欲不振といった症状も伴います。
2つに分けられる症状
乳腺炎の症状は上記のような症状が見られますが、「うっ滞性乳腺炎」と「化膿性乳腺炎」の2タイプに大きく分けることが出来ます。
うっ滞性乳腺炎の場合は排出されなかった乳汁が乳腺内に詰まってしまうことで発症する乳腺炎で、主に乳房をマッサージし、乳腺内をほぐして詰まった乳汁を搾乳してあげることで解決することが出来ます。
ただし、乳汁がうっ滞している環境は細菌感染が起きやすいため、抗生物質を投与するなどの予防も必要になってきます。
一方の化膿性乳腺炎は、説明してきたような乳首に傷がついてしまい、患部が細菌感染することで発症する乳腺炎です。
このように同じ乳腺炎でも、発症する原因によって、症状や治療法も微妙に変わってきます。
患部が破裂してしまう場合も
前述の通り、うっ滞性乳腺炎の場合は乳房のマッサージを行うことで、詰まった乳汁を搾乳させるケアを行います。ただし、あくまでもマッサージを行うのはうっ滞性乳腺炎である場合だけです。
化膿性乳腺炎の場合は、へたにマッサージを行ってしまうと、患部に溜まった膿が破裂してしまう化膿性がありますので、あまり患部には触れないようにしながら動物病院で処置した方が安心です。
また、うっ滞性乳腺炎でも悪化している状態ですと、痛さで猫が我慢できない場合があります。この場合は患部をすぐに冷やし、動物病院で処置を行う必要があります。
素人判断で処置を行うと、症状を悪化させてしまう化膿性もありますので、異変に気がついたらすぐに動物病院で検査を行うほうが良いでしょう。
乳腺炎の治療について
軽度な乳腺炎であれば乳房や乳腺を冷やして、炎症を少しでも抑えるといった処置が可能です。しかし、授乳期に乳腺炎を引き起こしている場合には、子猫への授乳は避けるようにしましょう。
患部が悪化してしまうことに加え、子猫にも細菌が移ってしまいますので、人工哺乳を行うようにしましょう。子育て中の猫にとっては災難とも言える症状ですが、飼い主さんも親猫と子猫の世話を行わなくてはなりませんので、場合によっては大変になるでしょう。
日頃から乳房の状態を確認することもないかと思いますが、前述でも触れた抱っこをすると嫌がる時や、子猫に乳を与えるのを嫌がる様子が見られたら、乳腺炎をすぐに疑っても良いかもしれません。飼い主さんの観察力が大事になってきます。
場合によっては患部の切除も
動物病院では、乳腺炎の治療に加えて投薬による抗炎症剤やホルモン剤の投与といった予防処置が行われます。これは細菌による感染を予防するために必要が処置となります。
そして、すでに乳房に膿が溜まるなど、症状が重いようであれば外科手術が必要になる場合があります。外科手術では、最悪の場合は患部の切除を行うことになるでしょう。こうした状態になる前に、早めの処置を心がけたいところです。
繰り返すようですが、乳腺炎は飼い主さんの観察の仕方によってはすぐに発見することが出来るでしょう。切除してしまうなど、症状が悪化してしまう前に早期発見を心がけ、早めに処置してもらえるようにしなければなりません。
授乳中は特に注意深く観察し、予防に努めましょう。
乳腺炎を予防するために
乳腺炎を予防するには、常に清潔な環境を保つように心がけることです。これは、妊娠している、していないに関わらず大事なことです。
特に授乳中のメス猫は、子猫によって乳房が傷ついてしまう心配がありますが、妊娠していない猫も何かしらの原因で乳房が傷ついてしまったり、偽妊娠を引き起こす可能性もありますので、常に清潔な環境を維持することは大事なことです。
また、授乳中のメス猫の場合には、子猫の動きや母猫の行動をしっかりと確認するようにしましょう。
授乳を嫌がっていないか、子猫はしっかりとおっぱいを飲んでいるかなど、こうしたチェックも母猫のみならず、子猫にとっても大事なことです。母猫に何かあった場合を想定して、予め子猫用粉ミルクを用意しておくと言うのも大事なことかもしれません。
飼育環境は清潔に保ちましょう
このように、偽妊娠や乳腺炎などのメス猫が引き起こす病気は、避妊手術を行うことでも発症のリスクは減らすことができますが、子猫を授かりたい場合にはそうにも行きません。
こういった病気の存在を知っておき、すぐに対処できるように理解を深めておくことも飼い主さんの大事な使命ですので、病気の内容をある程度理解し、万が一愛猫が症状を見せた場合にもすぐに異変に気がつけるように準備しておきましょう。
予防策としては清潔にすること以外にも、このように病気を正しく理解することも予防策の一つ。色々な病気が存在しますが、不潔な状態や飼育環境が悪い場合は病気を引き起こす確率も高くなります。
飼育環境を清潔に保つことは、動物を飼育する上で当たり前とも言えるものですので、日頃から清潔な環境を心がけておきましょう。
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