体の老廃物を排出する大事な臓器のひとつが「腎臓」です。猫は比較的、腎臓系の病気になる事が多く、普段の食生活から気を付ける必要があります。今回は、腎臓系の病気のひとつ「尿毒症」について解説します。

スポンサーリンク

猫の腎臓の働き

腎臓とは「尿」を作るための臓器で、左右に1つずつある臓器のひとつです。腎臓で尿を作り、体の老廃物と共に尿を排泄することで、体の中をきれいに整える大事な臓器なのです。また、腎臓には尿を作る以外にも、ホルモンを生成する働きももっています。

猫には、この腎臓の病気が多いと言われ、他の病気などを発症、もしくは普段の生活において、腎臓にダメージを与えてしまうような事が影響し、腎臓系の病気を引き起こしてしまうというものが多いです。このダメージというのが「猫の食生活」と「猫の腎臓の作り」にあります。

バランスの取れた食生活を


現在のキャットフードは塩分バランスが整えられたものが多く、キャットフード「だけ」食べていれば、そう心配する必要はないかもしれません。しかし、中には塩分値の高いフードや、人間の食べる物を食べさせたり、味付けしてある煮干しといった「おやつ」を与えすぎることによって、塩分を取りすぎる傾向にあります。

また猫の腎臓は、少ない水分量でも生命を維持できるように作られています。そのため、体内の老廃物が溜まっていくと、水分で薄まっていない分、濃い尿が作り出されるのです。猫の尿の臭いが強いのは、こうした体の作りが関係しているのです。

そのため、栄養バランスが偏ると、濃度も非常に濃くなってしまい、腎臓に負担がかかることによって病気を引き起こしてしまうのです。また、同時にホルモンの生成のバランスも崩れることになり、腎臓系の病気の他にも、ホルモンの病気にもなりかねません。

尿毒症とは

「尿毒症」は、放置しておくと命にも関わりかねない「腎臓」の病気です。

通常、体の老廃物は、尿と共に体の外へと運ばれますが、尿毒症はこの老廃物をしっかりと排出できなくなる事で引き起こされる病気です。そのため、体に老廃物が蓄積されていき、腎臓以外の臓器にもダメージを与え、毒素が全身にまわってしまう恐ろしい病気なのです。

尿毒症を発症すると、下痢や嘔吐、食欲の減退などがみられ、口臭も強くなっていきます。この口臭が強くなるというのも、体の毒素が腎臓に蓄積され、アンモニア臭を含んだ口臭が口から発せられるため、強い口臭となってしまうのです。

そして、さらに病気が進行することで、体の体温もどんどん低下していき、今度は痙攣などの神経症状もあらわれはじめ、歩き方や体がふらつくようになってきます。やがて、昏睡状態に陥り、命を落としてしまう形になってしまうのです。

尿毒症の原因と治療

尿毒症は、「腎不全」などの腎臓の病気を患い、病状が進行していくことによって、尿毒症を引き起こしてしまいます。そしてこの腎不全もまた、尿結石が原因で引き起こされる「猫下部尿路疾患」や「水腎症」といった腎臓の病気が進行し、これらの病気が進行し、病状が悪化していくことで引き起こされる病気です。

このように、尿毒症はこれら腎臓系の病気を発症し、どんどんと悪化していき症状が重くなることによって引き起こされる病気です。徐々に体には老廃物が蓄積されていき、その結果、尿毒症を引き起こすといった形で発症するのです。

そのため、原因となる病気の治療が急がれますが、まずは体内に蓄積されている老廃物を、排出させることが第一に必要になるでしょう。

尿路結石とは


猫に多く見られる病気の一つでもある「尿路結石」。「猫下部尿路疾患」などの病名でも知られる尿路結石ですが、猫の多くが悩まされる尿路結石が「ストルバイト結石」と呼ばれる、尿のph値がアルカリ性に傾き続けることで引き起こされる結石です。

猫の尿のph値は常にアルカリ性か酸性に傾きますが、これがアルカリ性に傾き続けることでストルバイト結石を引き起こし、酸性に傾き続けることで「シュウ酸カルシウム結石」を引き起こします。

前述の通り、近年のキャットフードではこうした下部尿路疾患に配慮した内容のキャットフードが多く、予防もしやすいものです。そのため、尿毒症を引き起こすまでに尿路結石を悪化させたのであれば、何かしら別の要因も考えられるかもしれません。

その考えられる要因となるのが、腎不全を始めとした腎臓の病気が悪化していることや、心臓病を患っている場合です。

腎不全とは

腎臓の機能が75%以上低下してしまうと、腎不全と呼ばれる状態に入ります。腎臓は猫の体内で、老廃物をろ過する働きを持ちますが、腎臓機能が低下してしまうと、体内には老廃物が貯まり始め、やがて全身へと老廃物が回り始めます。

この状態が尿毒症と呼ばれる症状ですが、腎不全を引き起こす要因には尿路結石も関係しています。尿路結石を引き起こしている時点では、まだまだ処置の方法もありますし、日々の生活の中でも十分に克服できる病気です。

しかしながら、腎臓は一度ダメージを受けると修復出来ない臓器であるため、腎不全を引き起こしてしまうと完治させることが出来ません。つまり、腎不全を引き起こすことで必然的に尿毒症を引き起こす可能性が一気に高くなるわけです。

スポンサードリンク

緩和ケアを行いながら

一度、腎不全を引き起こしてしまうと、緩和ケアを行いながら、それ以上状態が悪くならないような治療・ケアが必要となります。

腎不全に対してのケアが不十分である場合、尿毒症を引き起こすこととなりますので、基本的に尿毒症を発症していなければ、常に腎不全の緩和ケアを行い続ける必要があります。

また、腎不全のケアが不十分で尿毒症の症状を引き起こした場合には、尿毒症の症状や重度によっても治療法は変わりますが、基本的には治療の前に血液検査を行い、血液を測定することで重症度を判断します。

比較的軽症であれば利尿剤の投与などで治療を行い、あまりにひどい状態であれば、血液透析療法が行われ、早急に毒素を体外に出す治療が行われます。

尿毒症の予防策とは


尿毒症には残念ながら有効な予防策はなく、早期発見・早期治療がカギとなります。日頃からの、腎臓に影響が及ぶような食生活の改善が、最低限の予防策となるでしょう。

特に、尿結石などにならないよう、普段からの食事や、塩分の高いおやつのあげすぎには十分に注意するようにし、また、人間が食べるものを猫にあげるような事は、猫の腎臓に大きなダメージを与えますので、絶対にやめましょう。

しかし、水腎症などの病気にいたっては、非常に症状もわかりにくく、無症状である場合もあるので、状態が悪化してから気が付くことも多いです。このように病気の発見が送れると、尿毒症を引き起こしてしまいますので、X線検査や超音波検査といった項目を含めた検査を受けるのも非常に有効な手段です。

新たな治療法に期待

尿毒症を引き起こす腎不全ですが、実は猫の死因原因のトップとなる病気でもあります。猫にとって恐ろしい腎不全ですが、血液中に含まれる「AIM」と呼ばれるアミノ酸が、腎不全の治療に大きな成果を挙げていることが研究によってわかりました。

完全に完治させるのは難しいですが、マウス実験の段階では腎不全による死亡率を100%としたとき、20%台に低下させることに成功していることもあり、高い期待を寄せる治療法となっています。

さらに、2017年にはこのAIMを大量生産させるための細胞の開発にも成功。今後は治験が繰り返され、早ければ数年後には猫の腎不全の治療にも採用される可能性が出てきました。一日も早い利用を望みますが、その前に、まずは腎臓をしっかりとケア出来るようにしていくことが大事になります。

高齢に発症しやすい腎臓の病気

腎臓の病気は高齢期に発症しやすいと考えられています。まだ若くて元気だと思って、尿路結石などのケアをシニア期に入ってから予防しようとしても、すでに状態が悪ければ意味がありません。

シニア期に入ったらケアをし始めるのではなく、若い年齢期からシニア期に備えて行くのが大事なのです。ある保険会社のデータによれば、猫が4歳を迎える頃に一度、診療費請求の平均金額が上昇し、さらに7歳ころになるとさらに金額が上がっていく事がわかっています。

特別な年齢を定めず、愛猫が若い頃からしっかりとケアをしていかなければなりません。健康な生活を送れるように食事にも気を使うようにし、病気にならないような体作りをしていくようにしましょう。

スポンサーリンク