愛猫が以前に比べて、走ったり飛び回らなくなったり、体が浮腫んでいたり、お腹が膨れたりしていないでしょうか。こうした症状は、ネフローゼ症候群と呼ばれる病気が関係しているかもしれません。今回はネフローゼ症候群について解説していきます。
ネフローゼ症候群とは?
愛猫の食欲が無いのにお腹が膨れてきていたり、全体的にむくんでいたりしていないでしょうか。こうした様子が見られる場合には、「ネフローゼ症候群」の疑いがあります。
ネフローゼ症候群とは、腎臓に何らかの原因によって障害が起き、本来の濃度よりも多量の「タンパク質」が尿中に流れ出てしまうことで、体内のタンパク質量が減少してしまい、様々な疾患を引き起こしてしまう腎臓疾患群の事を指します。また、血中のコレステロール値の上昇も特徴となります。
ネフローゼ症候群が比較的多く発症する猫種には「シャム」「アビシニアン」「オリエンタル」といった種類が挙げられます。
ネフローゼ症候群の症状とは
ネフローゼ症候群の初期症状は、タンパク尿が増えるということ以外には無症状である事がほとんどで、発見することが非常に難しい病気の一つです
病状が進行すると、低タンパク血症、高脂血症、高血圧、高ナトリウム血症などの症状が現れます。また、こうした症状の他にも、全身がむくんだり、お腹が膨れる腹水の症状や、下痢や嘔吐、元気や食欲の減少といった様子も見られるようになります。
このような症状は前述の通り、体内のタンパク質量が減少するために起こるものであり、血液が固まりやすくなるといった症状も引き起こし、その結果、血栓ができやすくなり血栓寒栓性疾患や、最悪の場合には尿毒症や腎不全と言った病気を併発してしまう場合もあるため、油断はできません。
血栓寒栓性疾患とは
血栓寒栓性疾患は「血栓塞栓症(けっせんそくせんしょう)」とも呼ばれる病気で、ネフローゼ症候群など、何かしらの病気が原因で「血栓」ができてしまい、この血栓が血液に流された末、動脈に血栓が詰まる(塞栓)状態の病気を指します。
動脈に血栓が詰まることで、血行が著しく悪化してしまい、様々な臓器にダメージを与えてしまいます。また、血栓は血流に乗って様々な場所へと移動するため、どのどの部分の動脈を詰まらせるかもわかりません。
猫の状態が健康体であれば、この血栓も常に溶解されているため、特に大きな問題にはならないのですが、何かしらの病気が原因となる場合には、その病気を治療しないことには血栓を溶解する力もなくなり、血栓塞栓疾患を引き起こすわけです。
スポンサードリンク
ネフローゼ症候群の原因について
ネフローゼ症候群は腎臓に障害が起こることで発症してしまいますが、その原因も様々です。「急性腎炎」や「糸球体腎炎」「糖尿病」や「アミロイドーシス」などの腎臓に影響を与えてしまう病気のほか、「白血病」や「心不全」といった腎臓と直接関係ないような病気なども、腎臓に影響が及ぶことでネフローゼ症候群を引き起こしてしまうのです。
中でも「糸球体腎炎」はその原因や発症する要因についても理解が進んでおらず、原因がはっきりとしない病気です。発症するとよく水分を摂るようになる事や、毛艶や元気の喪失が見られる病気で、若年のオス猫に多く見られる病気でもあります。ウイルスや細菌が原因とも考えられていますが、正確なところはわかりません。
アミロイドーシスとは?
ネフローゼ症候群を引き起こす要因の一つとも言われる「アミロイドーシス」。アミロイドーシスとは、「アミロイド」と呼ばれる異常なタンパク質が原因となる病気で、このアミロイドが細胞と細胞の間に沈着してしまう事で引き起こされます。
中でもアビシニアンが好発猫種として挙げられ、アミロイドーシスを発症すると多飲多尿の症状や、体重の減少が見られるようになります。また、腹水の症状を引き起こすこともありますが、これがすなわちネフローゼ症候群を引き起こしている格好となります。
アミロイドーシスを引き起こしている原因もまた、明確な事がわかっていませんが、感染症や悪性腫瘍が原因になる場合や、先天的な原因があると考えられています。予防線を張りにくい病気ですが、日頃から様子がおかしくはないか、十分にチェックすることが大事になるでしょう。
先天的な要因も
ネフローゼ症候群はこうした病気の他にも、アレルギーによる免疫疾患やウイルス感染でも引き起こされる場合があります。
これらの要因は先に上げた病気を引き起こす要因にもなりますが、腎臓に影響をあたえる場合があるため、すべての原因が病気によるものだけというわけでもありません。また、前述に挙げたような好発猫種の「シャム」「アビシニアン」「オリエンタル」が多く発症するということから、遺伝的に発症するということも考えられます。
これらの猫種は、腎臓にタンパク質の一つ「アミロイド」が沈着しやすいという傾向が強く、その結果として、アミロイドーシスやネフローゼ症候群を発症しやすいと言うことが指摘されるわけです。基本的な予防策としては、感染症にならないようなケア・からだつくりが大事になるでしょう。
ネフローゼ症候群の治療について
ネフローゼ症候群の治療には、まず本病を引き起こしている原因・疾患を特定し、原因となる病気を治療するということが重要になってきます。
ネフローゼ症候群を引き起こす原因を特定しなければ、いくら症状を緩和したところで、完治させることはできません。そのため、元となる病気の治療が急がれるのです。
原因となる病気への治療に伴い、本病に対しての対処療法も行われます。この場合には、利尿剤等を用いたネフローゼ症候群に対しての対症療法も行われます。
具体的にはネフローゼ症候群の症状となる、腹水や高血圧などの症状を緩和していく治療、血栓を予防するための投薬治療となりますが、こうした治療の他にも、ナトリウム(塩分)を控えた食事なども必要になるでしょう。
スポンサードリンク
低タンパク質の食事が大事に
タンパク質量の多い食事を摂取していると、ネフローゼ症候群の原因となる糸球体への異常を引き起こす要因となりますので、低たんぱく質の食事を摂取させるようにしなければなりません。
とはいえ、これはあくまでもネフローゼ症候群を引き起こしている場合に限られます。猫は肉食の動物ですので、肉や魚を始めとした動物性蛋白質は必須の栄養素といえます。しかし、こうして病気を引き起こしてしまうと、本来ひつようであるべきタンパク質も、腎臓が上手に処理することができなくなるため、低タンパク質の食事が必要となるのです。
腎臓の機能が低下してしまうと、こうして猫本来の栄養管理が出来なくなるため、栄養管理はより難しいケアが必要となってきます。
検査の際は尿検査も行なうようにしましょう
ネフローゼ症候群自体を予防する事は非常に難しいですが、様々な病気が進行してしまった結果、ネフローゼ症候群を発症してしまうことから、根本的な病気を発症しないことが、ネフローゼ症候群を予防するひとつの手段となるでしょう。
いずれの病気も、早期発見・早期治療が大切になります。まずは定期的に健康診断を行う事も大事になるでしょう。また、健康診断を行う際には尿検査も検査項目に含めてもらうように、動物病院の先生に申告するようにします。とはいえ、症状を言えば先生の方でも尿検査を行なうと思いますので、あくまでも尿検査が行われ無さそうであれば、こちらから言うようにしましょう。
ネフローゼ症候群は、尿検査によって発見することが出来ます。簡単な検査ではなかなか発見することもできないため、尿検査を行うことも重要な要素となります。
ネフローゼ症候群を予防するために
重大な腎疾患や尿毒症などの病気を引き起こすこともあるネフローゼ症候群。
命の危険もある病気でもありますので、最近、動きたがらなくなったり、食事量が少ないのに体は浮腫んだり膨れていたりと、なにかしらの異変に気がついたら、ネフローゼ症候群の疑いも少なからずあるでしょう。
こうした様子や症状が見られた場合には、様子を見たりせずに、すぐに動物病院で診察を受けるようにしましょう。腎臓の病気は1日でも早いほうが良いです。ダメージを受け続けてしまい、修復することが出来ない臓器ですので、すぐにでも検査を受けるようにしましょう。
ネフローゼ症候群を引き起こす要因は病気が原因になっているケースが多いですが、根本的にそれらの病気を予防できれば、ネフローゼ症候群を引き起こす可能性も低くなります。日頃からしっかりと健康体を維持できるような飼育環境を整えるようにしましょう。
スポンサーリンク