猫の耳の病気のひとつ、「耳ダニ感染症」。耳ダニと呼ばれるダニが、耳に寄生することで、痒がったり、黒い耳垢がたくさんでてくる症状が現れます。ひどくなれば、外耳炎もおこしてしまう、耳ダニ感染症について解説していきたいと思います。
皮膚やアレルギーの病気について
人にも皮膚の病気や疾患があるように、猫にも皮膚の病気は存在します。皮膚病には、痒みを伴うものもあれば、痛みも伴うものもありますが、人同様に見た目も痛々しくなってしまい、カサカサになるものや、ジュクジュクした状態になったりと、様々な症状が見られます。
原因となるのは、外的要因・内的要因それぞれが当てはまるのですが、外的要因である場合にはダニやノミといった寄生虫によるものが目立ちます。内的要因には、食物アレルギーや環境アレルギー等が挙げられ、アレルギーが原因で皮膚病を発症したりする場合もあります。
こうした皮膚病にならないためには、それぞれの皮膚病に対する予防策が必要となりますが、中には環境を整えるだけでも防げるものもあります。では、具体的な対処法について見てみましょう。
「耳ダニ」とは?
普段生活をしている中で、猫が体をグルーミングする光景はよく見られますが、耳をしきりにかいていたり、耳を壁や物に擦りつけるような光景が見られる場合は、「耳ダニ感染症」を疑ったほうが良いかもしれません。
非常に強い痒みを伴う耳ダニ感染症は、「ミミヒゼンダニ」というダニの一種が、猫の耳の中に寄生することで発症してしまう病気で、「耳疥癬」とも呼ばれます。
また、「耳ダニ」とも略される耳ダニ感染症ですが、同じダニによる病気で、猫の皮膚病の中でも厄介な皮膚病である「疥癬」と呼ばれる病気は、耳には寄生せず、全身に寄生する「猫小穿孔ヒゼンダニ」と呼ばれるダニによるものです。
長い治療期間を必要とする耳ダニの駆除
一言で「ダニ」と言っても、前述の通り「耳ダニ」や「猫小穿孔ヒゼンダニ」など様々。その数も数百種類にも及びます。中でもこの「ミミヒゼンダニ」に関しては、一度感染してしまうと完全に駆除するまでに長い時間を必要とするダニの1種としても知られます。
体長は0.3mmほどですので、寄生されても簡単に見つけることは出来ません。そのため気がついた時には耳ダニもたくさん繁殖してしまい、駆虫するまでにも時間がかかることもあるために、長い日数を要するのです。
耳ダニのライフサイクルは成虫が卵を生んだのち、3〜4日ほどで卵が孵ります。その後、3週間ほどで成虫まで成長するため、完全に駆虫するまでには最低でも3週間は要してしまいます。
耳ダニ感染症の症状について
この耳ダニ感染症を発症することで、耳には激しいかゆみが起こり、やがて黒い耳垢が頻繁に溜まったり、耳の中が臭くなるといった症状が出てきます。
この黒い耳垢というのは、耳垢の他にも寄生しているダニの排泄物が含まれています。耳ダニは、耳の中に寄生し、猫の耳垢や血液、耳の中で傷ついた際のかさぶた等を栄養源として食べ、その場で排泄しているのです。
そのため、耳の穴は黒い耳垢で埋め尽くされるようになり、また、強い痒みを生じる為に、頻繁に耳をかいたり、壁にこすりつけたりするのです。症状が悪化してくると、外耳炎や耳血腫といった症状も併発してきますので、油断はできません。
耳ダニの原因について
耳ダニ感染症の原因となるヒゼンダニ。体長が約0.3mながら、放おっておくとその症状は悪化の一途をたどります。このヒゼンダニに寄生されてしまう原因には、様々な要因が考えられます。
特に注意が必要なのは、自由に外に出られる環境下で飼育されている場合、外で耳ダニに感染している他の猫と接触した場合です。この場合、自宅内で多頭飼育がされていれば、瞬く間に他の猫にも耳ダニが寄生してしまうでしょう。また、母猫が耳ダニに寄生されている場合には、高い確率で子猫も耳ダニに寄生されているでしょう。
こうした要因のほか、不潔な環境下でも耳ダニに寄生される場合があります。特に、猫のお手入れを怠ってしまい、耳掃除などもおろそかにしていると、耳の中は耳垢だらけになってしまい、耳ダニにとって格好の住処となるのです。
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耳ダニ感染症の治療法について
上記のように、耳ダニは他の猫からの感染と、手入れをしないことによる要因で、耳ダニ感染症を引き起こす可能性があるのです。
耳ダニ感染症を治療する場合には、ダニ駆除剤の投与が行われます。また、耳ダニが生息している「外耳道」を洗浄することも重要です。まずは耳垢を掃除し、抗生剤が含まれた点耳薬による洗浄します。
そして、同居猫がいる場合も、治療を行う必要があるでしょう。症状が見えていなくても、寄生されている可能性は高いです。同居猫を治療せずにいると、再度、耳ダニ感染症が広がる可能性は非常に高いです。念の為にも、しっかりと治療を行うようにしましょう。
耳ダニの駆虫薬「イベルメクチン」
耳ダニを駆除するためには駆虫薬が用いられますが、中でも特に有名な薬が「イベルメクチン」と呼ばれる成分。動物病院では「フロントライン プラス」や「レボリューション」と呼ばれる薬が駆虫薬として使われることがほとんどですが、これらは首の根元に垂らすだけという薬です。
首の根元や背中にも垂らす必要がありますが、こうして薬を垂らすだけで効果的に耳ダニを駆虫することが可能となります。
耳ダニの治療としては基本的に耳の中を駆虫して洗浄するのがメインとなりますが、さらに全身にもイベルメクチンを含んだ薬を垂らすことで、より高い駆虫効果を得られるようになります。この他、ダニやノミを寄せ付けさせなくする効果もありますので、地域やシーズンによっては耳ダニでなくとも、利用される場合があります。
耳ダニ、その治療費はどのくらい?
耳ダニの治療費はどの程度かかってくるものなのでしょうか。
耳ダニの治療は基本的に耳の洗浄です。そのため、治療費としては2,000円〜3,000円ほどが一般的です。もちろん、動物病院や耳ダニ感染症の症状によっても治療費は前後してきますが、平均的には1回の治療でこのくらいの治療費を予定しておくと良いでしょう。
症状が重い場合には、何度か通院しなければいけなく、さらに自宅内でも最低限の耳掃除を行う必要があります。こまめに治療や洗浄を行っていなければ、耳ダニ感染症は思うように治療することが出来ないのです。
1回に数千円で済んでいたはずの治療費も、自宅内のケアを怠ることで何度か通院することになり、結果として数万円の治療費がかかってしまったという事にもなりかねませんので、約1ヶ月間はしっかりと治療に取り組むようにしましょう。
耳ダニは人にうつる?
猫の健康を脅かす耳ダニ。実はこの耳ダニは人間にも感染することで知られます。とはいえ、猫と同じように耳に寄生するということはなく、一時的に耳ダニによる被害が起きるだけではありますが、とても気持ちの悪いことですよね。
症状としては湿疹のような症状や、かゆみが生じるといった症状ですが、念の為、皮膚科に見てもらったほうが安全ではあります。
主に飼い猫が耳ダニに感染し、耳掃除を行なう際に飼い主さんにも耳ダニが移ることで起きる症状ですが、こうした事態を防ぐためにも、耳ダニ感染症の飼い猫を自宅内でケアする際には、ビニール手袋をはいてケアを行なうのが安全です。
完全に寄生されることは無いにしろ、そこらへんに耳ダニが存在しているかと思うとゾッとしてしまいますね。
耳ダニを予防するためには?
耳ダニを自宅内で予防するためには、愛猫を外に出さないようにすることはもちろん、飼い主さんの衣服に付着している耳ダニが愛猫に移ることも考えられるため、耳ダニが繁殖しやすいシーズンには駆虫薬・駆除薬を投与することが大切です。
そして、最も大切なのが自宅内を清潔に保つことです。不潔な環境やホコリが多いような環境は、ダニが繁殖しやすい環境を作り上げている事に繋がります。こうした環境下で飼育していては、耳ダニも治療しても再発する恐れがあるでしょう。
また、耳ダニ感染症を発症した際には、利用していたソファやブランケットなどは確実に洗うようにしましょう。高い確率で付着していることが考えられますので、耳ダニを一掃するために、部屋を掃除し、耳ダニの住処をなくすことが予防の第一歩となるのです。
耳ダニ感染症にならないために
いかがでしたでしょうか。耳ダニは、根本的な事に気をつけていれば、寄生されるリスクもそう高くはない病気です。耳ダニに限らず、外へと自由に出入りできる環境での飼育は、他の感染症に感染するリスクも非常に高くなり、また、耳ダニの感染リスクも高くなるでしょう。
こうした飼い方は、猫だけではなく、飼い主も危険な感染症に感染する場合もありますので、自宅内のみでの飼育に切り替えたほうが良いでしょう。多頭飼いしていれば、感染も広がるだけではなく、発見も遅れて、取り返しのつかない事態になりかねません。
また、部屋や飼育環境を清潔に保つことは、基本的な事ではありますが、いつどのようにして感染してくるかはわかりません。常にこうした病気に気を配るようにし、清潔な環境を持続するようにしましょう。
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