猫の皮膚病のひとつの「疥癬」。この疥癬は、1年を通じて発症する可能性も高く、また、感染してしまうことで、ひどいかゆみに襲われ、フケや化膿に苦しめられる事になります。今回はこの疥癬について解説していきたいと思います。
「疥癬(かいせん)」とは?
人にも皮膚の病気や疾患があるように、猫にも皮膚の病気は存在します。原因となるのは、外的要因・内的要因それぞれが当てはまるのですが、外的要因である場合にはダニやノミといった寄生虫によるものが多く、内的要因である場合には食物アレルギー等が該当してくるでしょう。
そんな猫の皮膚病の中でも、特に厄介な皮膚病で知られる「疥癬」。
この疥癬という病気は、「ヒゼンダニ」というダニに寄生されてしまうことで発症する皮膚病ですが、ダニは自宅内でも年中活動しているため、年間を通して疥癬を発症するリスクがあるのです。
そのため、疥癬を予防するためには、年間を通じてヒゼンダニに寄生されないような対策や、日頃からダニを意識した生活を送るなど、常に気を使わなくてはいけません。
疥癬は悪循環が引き起こす皮膚病
疥癬は、体全体に広がっていく皮膚病ですが、耳に「ミミヒゼンダニ」というダニが寄生することで発症する「耳疥癬」という病気も存在します。
この疥癬を発症することで、激しいかゆみが起こり、やがてかきすぎてしまったために患部が傷だらけになり、フケが出たり皮膚がかぶれたりといった症状が出てきます。さらに、このフケや皮膚が地面に落ち、地面に落ちているダニの幼虫がフケなどを餌にするという悪循環も。
また、気をつけなければいけないのが、疥癬に感染するリスクはどこにでもあり、同じ猫同士はもちろん、人間にも感染してしまう場合があるのです。
飼い猫も飼い主も悩まされる皮膚病なので、しっかりと内容を理解し、予防に努めることが大事になってくるでしょう。では、具体的な対処法について見てみましょう。
感染を拡げるヒゼンダニとは
ヒゼンダニは成虫時の体長が0.3mmほどと、肉眼では確認することが困難なほど小さな虫です。
ヒゼンダニのライフサイクルは、卵の状態から約3日〜5日ほどで孵り、その後は脱皮を繰り返して成虫へと成長していきますが、約10日から14日程度で卵から成虫へと成長していきます。寿命はおおよそ4週間〜6週間と言われています。
ヒゼンダニは16℃以下の環境下では動きも鈍り、殆ど動かない状態になるのですが、猫や人に寄生することで体温から温度を感じ、活発に動くようになるのです。そのため、皮膚から落ちるとその動きもほとんど弱まりますが、室内の温度や状況、湿気が多いなどの好条件が揃っていれば、皮膚外でも活発に活動するでしょう。
疥癬の症状について
前述のとおり、疥癬を発症すると、激しいかゆみに襲われます。そのため、疥癬の患部をかきむしるようになってしまい、次第に患部が傷ついていきます。この患部が今度はかさぶたの状態になり、次第にフケが混ざったり、脱毛が激しくなっていってしまいます。
かさぶたになって、またかきむしったりと繰り返してしまうために、患部も化膿してしまい、こうした症状を重ねていくことで、猫の体は傷だらけになり、ところどころに脱毛が目立つようになり、フケや発疹が増え、皮膚がただれて荒れてしまうのです。
疥癬の原因について
疥癬の原因となるヒゼンダニ。体長が約0.3mながら、放おっておくとその症状は悪化の一途をたどります。このヒゼンダニに寄生されてしまう原因には、様々な要因が考えられます。
例えば、動物病院に行って、疥癬に感染している他の猫と接触した場合にも移りますし、疥癬に感染している他の猫が使用した、道具やタオルなどを利用することでも、寄生されてしまうでしょう。
また、私達も媒介する恐れがあります。私達が、疥癬に感染している猫に触れることで、私達を通じてヒゼンダニが移動し飼い猫に寄生することで、飼い猫も疥癬になるリスクが非常に高くなります。
このように、ヒゼンダニは宿主となる猫から他の場所へ移動しても、数時間は生存することが可能なため、道具や他のものへと移動し、新しい宿主へと寄生することができるのです。
疥癬の治療法について
疥癬を発症してしまった場合、内服薬や塗り薬による治療が行われます。また、同居猫がいる場合にも、同居猫が感染している可能性が高いので、一緒に治療する必要があります。
このほか、部屋を清潔に保つために、使用していたクッションなどがあれば洗濯するようにし、消毒する必要もあります。
非常に厄介な皮膚病と触れましたが、疥癬を完治させるまでには、持続的に投薬等の治療を施していきながら、約1ヶ月〜1ヶ月半程度の期間を要します。また、この間には他に感染を広げないためにも、十分に気をつけて生活をしていかなければいけなくなるのです。
疥癬の治療費は幾らくらい?
猫が疥癬を引き起こした場合には、どのくらいの治療費が発生するのでしょうか。
まず、動物病院で行われる治療としては皮膚注射や皮下注射など、おおよそ5,000円弱といったところ。その後は通院で治療する必要がありますので、同じように治療が必要となりますので、完治させるまでには2万円弱ほどを考えていたほうが良いでしょう。
注射の場合や飲み薬の場合など、治療方法は様々ですが、症状によっても治療費は大小異なってきます。軽度である場合には、1万円もかからない場合もありますが、重度ですと薬浴などのケアも必要になる場合があるので、2万円を超えるケースもあるでしょう。
異変に気がついたらすぐに動物病院へ行って検査をし、自宅内は一気に清掃、同居している犬や猫がいれば同じく検査を行い、ダニの感染を最小限にするようにしましょう。
疥癬は治らない病気?
疥癬は本当に長い時間をかけて治療しなければならない、非常に厄介な感染症です。前述の通り、しっかりとした治療を自宅内で行っていても、約1ヶ月はかかってしまうのです。
そのため、治療やケアを疎かにしていると、疥癬の治りも遅くなり、さらに時間を要することとなるのですが、疥癬は決して治らない感染症ではありませんので、しっかりと治療を行うようにしましょう。
塗り薬などの治療やケアはもちろんのこと、ダニが住処になっているような環境下が揃っていれば、疥癬の治療を行っていてもイタチごっこの状態になりますので、ダニが潜伏してそうな環境や道具などは一層して、完全に清潔な状態にするようにしましょう。
疥癬が治らないのは、もしかすると治療法ではなく、自宅内の環境にあるのかもしれませんね。
道具やタオルからもうつる
愛猫が疥癬を引き起こした場合には、猫が使用したブラシやタオルといった道具も使いまわさないような配慮も必要です。特に同居している猫がいる場合にもヒゼンダニが寄生し、潜伏期間があるために一時的には無症状である場合があります。
1頭でも疥癬に寄生されていたり、もしくは寄生されている可能性があるなど、不安がある場合には同居猫も寄生されている可能性が高いと思ったほうが良いでしょう。もし検査をするのならば1頭だけでなく、同居猫や同居動物を全頭検査する必要があります。
部屋や飼育環境を清潔に保つことは、基本的な事ではありますが、いつどのようにして感染してくるかはわかりません。常にこうした病気に気を配るようにし、清潔な環境を持続するようにしましょう。
疥癬にならないために
このように、疥癬は一度発症してしまうと、本当に長い期間悩まされてしまう病気です。この疥癬を予防するには、日常生活を送る上で、常に清潔な環境を持続する必要があるでしょう。
非常に基本的なことではありますが、ダニやノミはホコリやカス、フケなどを餌にし、住処にしていきます。日頃から清潔な環境を心がけていれば、ダニの住処も減らすことに繋がるのです。
また、汚れている部分や、愛猫が過ごすようなところはしっかりと殺菌・駆虫をするなどし、ダニが繁殖しないような状況を作ることが大事になります。こうした皮膚病は、恐ろしいほどの勢いで蔓延し、気がつかない間に感染・寄生されてしまうので、目に見えない部分に注意することが重要となります。
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