犬の骨を構成したり、神経伝達にも欠かせないミネラルのひとつ「マグネシウム」。犬の体には欠かせない成分ながら、過剰摂取になることで結石を引き起こす要因ともなるものです。今回はこのマグネシウムの働きと摂取量について解説していきます。
「マグネシウム」とは
犬の必須ミネラルの一つとして挙げられる「マグネシウム」。マグネシウムの働きとは、「骨」と「細胞内液」を構成する成分となったり、血圧や体温の調整、神経伝達や興奮を抑える等、犬の健康な体を維持するために必要不可欠な成分です。
また、体内の酵素の活性化を促す成分でもあり、体内に吸収された「糖質」や「タンパク質」といった栄養素の代謝をスムーズにするといった働きもします。こう聞くと非常に重要なので、たくさん摂取した方が良いの?と思いますが、「過剰摂取」となってしまう場合もありますので、マグネシウムを摂取するのはあくまでも適量が望ましいのです。
マグネシウムの過剰摂取による影響は、「尿路結石」などの病気を引き起こす要因ともなりますが、一方で、あまりにマグネシウムを摂取せずにいると「欠乏症」を引き起こしてしまい、神経障害や骨、関節、血圧などに異状をきたしてしまう事も。今回はマグネシウムの適正量や働きについて見てみましょう。
「骨」を形成する為に必要なマグネシウム
骨や歯を構成するという、非常に重要な役割を担っているマグネシウムですが、骨と聞くとパッと浮かぶのは「カルシウム」ではないでしょうか。「牛乳を飲んで骨を強くする」といったように、骨を作るにはこのカルシウムは欠かせない成分ですが、カルシウムだけでは骨は形成されないのです。
骨を形成する主な成分は、骨へと成分が蓄積される「カルシウム」と「リン」ですが、このカルシウムとリンを形成するのに欠かせないのが「マグネシウム」。
他にも必要な成分はありますが、骨を安定させるためにはマグネシウムは必須の成分であるため、カルシウムやリンをいくらたくさん摂取したところで、マグネシウムの存在がなければ上手く結合・沈着しないのです。そのため、マグネシウムが不足してしまうと、骨がもろくなるということが言えるでしょう。
マグネシウムの必要量とは?
骨を形成する「リン」「マグネシウム」「カルシウム」の3つの成分は、互いにバランスを取りながら丈夫な骨を形成していっているわけですが、それぞれが適切なバランスを取り合わなければ、骨がもろくなる要因となったり病気を引き起こす要因になります。
それぞれの必要量としては、カルシウムが2に対し、リンとマグネシウムはおおよそ1の割合(または、リンが1に対してカルシウムが1.2〜1.4)が望ましいとされています。
成犬ですと、カルシウムの必要量が約242mg×体重が参考的な数値。これに対し、マグネシウムは成犬で約8.8mg×体重、リンは約198mg×体重となります。
このように、体内では様々な成分が複雑に繋がり合って構成されているわけですが、実にマグネシウムは300以上もの体内の代謝に関わっているのです。その一方で、マグネシウムを過剰に摂取することで引き起こされる「結石」のメカニズムとはどのようなものなのでしょうか。
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尿中のph値と「尿路結石」の関係
骨を形成するカルシウムやリン、マグネシウムという事はわかりましたが、これらの成分を過剰摂取すると、結合はせずに腎臓から尿中へと排出されていきます。ここで大きく関係してくるのが「ph(ペーハー)」です。
このph値には「酸性」と「アルカリ性」がありますが、ph値が酸性化することで「シュウ酸カルシウム結石」に、アルカリ性になることで「ストルバイト結石」を引き起こす要因となります。
よく耳にする「ストルバイト結石」は、「リン」「マグネシウム」「アンモニウム」で構成される結石で、「リン酸アンモニウムマグネシウム結石」とも呼ばれます。
尿のph値がアルカリ性であった場合、これらの成分は溶解されずに結晶となってしまい、結晶が尿道をつまらせてしまうわけです。その逆となるのが「シュウ酸カルシウム結石」というわけです。
結石が生成される要因はph値
このように、結石とは一概にマグネシウムやカルシウムの過剰摂取だけが関係しているわけではなく、様々な要因が関係しているのです。
これらの成分だけに注目してみると、尿中におけるph値によって溶解できるものが違うことがわかります。そのため、ph値のバランスを保つことが結石を生成しないために非常に重要なポイントとなります。
主に結石は遺伝や、性別ではオスの方が結石になりやすいと考えられています。また、食事の管理は非常に重要で、偏った食生活を送らせていると、結石になりやすい犬はすぐに結石が生成されてしまうでしょう。
食事の管理を行う際は、カルシウムやマグネシウムの量を適切に保つ必要がありますので、手作り食を行なう際はこうした部分が非常に難しいポイントとなるのです。
マグネシウムの適正量
こうしたことから、マグネシウムの摂取量は適正量が理想とされ、カルシウムとリンとのバランスが正常に保たれることで、健康な尿と丈夫な骨や歯を形成します。
尿路結石を予防するためにはph値を弱酸性にする必要がありますが、大雑把にいうと肉を食べることで酸性に傾き、植物性の物を食べることでアルカリ性へと傾くように、尿中のph値は安定しないものです。このことから、偏った食生活は病気を招くということが理解できるかと思います。
前述でも触れましたが、手作り食の場合は食材に含まれる栄養素を理解していなければなりません。見た目に良いレシピも大事ですが、根本となる栄養バランスを理解していなければ、本当に良い手作り食は作れないのです。
マグネシウムを多く含む食材
手作り食で利用する際に注意したいのが「ごぼう」です。ごぼうは食材としても利用できますが、必ず加熱してから利用するようにしましょう。ごぼうには「カルシウム」と「マグネシウム」が含まれていますので、くれぐれも使いすぎには注意が必要です。
また、ごぼうは食物繊維も多く含んでいるので、利用するのであれば微量程度に留めておきましょう。このほか、「ほうれん草」や「大豆」「ひじき」といった食材もマグネシウムを多く含むものですので、使い方には注意が必要です。
おやつとしても適しているのが「バナナ」。バナナは「カリウム」と「マグネシウム」を豊富に含んだ果物で知られ、お腹の調子を整えてくれる食材でもあります。おおよそ20gを目処に与えるようにしましょう。
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マグネシウム不足の心配はありませんが・・・
バランスの取れた食生活を送り、バランスの取れた栄養を摂取しなければ、健康な骨や体を維持することは困難だということがわかりますね。とはいえ、近年のドッグフードはこのような栄養バランスに十分配慮されたものが多いので(中には微妙なものもありますが)、基本的にはマグネシウム量に注意しなければいけないというわけではありません。
もちろん、腎臓や結石などの病気をしている犬はマグネシウムに注意しなければいけませんが、健康な犬であれば、よく食べ、水をしっかりと飲む事が健康な体つくりの第一歩となります。
通常であればこうした食事でバランスが取れているはずなので、おやつの与え過ぎは栄養バランスを崩してしまうことになります。くれぐれも程々の量を守るようにしましょう。
餌は成分値を確認しましょう
前述でも触れましたが、ドッグフードの中には適切なのか疑問な成分のドッグフードも存在します。また、成分値は通常であっても、利用している食材に不安を覚えるドッグフードもたくさんあります。
ドッグフードを購入する際に注意したいのが成分表です。キャッチコピー等ではいくら良いことが書いてあっても、実際の中身はお粗末な内容である製品も多いので、あまりキャッチコピーなどに惑わされず、しっかりと飼い主さんの目で成分表や主原料の確認を行うようにしましょう。
見比べていくと、以上にタンパク量が多かったり、以上に脂質が高かったりといった製品もあります。こうした疑問に気がつくためには、日頃からある程度、成分や食材を理解しておく必要もありますが、他のフードと比較していくのが最もわかりやすいかもしれません。
サプリメントを利用
適切な量のドッグフードを与えているものの、ちょっとマグネシウム不足が気になるといった時には、サプリメントを利用してみるのも一つの手です。価格は1000円前後ほどでも購入できるでしょう。
マグネシウムはカルシウムとリンのバランスが大事であることは冒頭でも触れた通りですが、マグネシウムのサプリメントはしっかりとこれらのバランスを考えて作られていますので、過度に心配する必要はありません。
いつものドッグフードへトッピングしても使いやすいですし、手作り食で栄養管理に自信がないと感じている方もおすすめです。日頃からマグネシウムが足りていないなと感じるのであれば、一度使ってみて様子を見てみても良いかもしれませんね。
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