マスティフと一緒に暮らすために、どんな特徴や性質であり、どのようなことに気をつけなければいけないのでしょうか?今回は「マスティフ」について、飼っている方もこれから飼いたいと思っている方もチェックしてみましょう。
マスティフとは
マスティフと言えば、顔は強面、がっしりとした骨格に強靱な筋肉を持ち、自分の身を挺して主人を守り抜くような、力強さと忠誠心を兼ね備えた超大型犬種です。
体重は、オスもメスも70kgから80kgにもなり、昔は闘犬や軍用犬として従事していました。
多くの犬種の改良の際には、マスティフの血統を掛け合わせるなど、様々な犬の歴史には無くてはならない犬種です。
マスティフのルーツ
マスティフは、農場を害獣から守る番犬の仕事や軍用犬、闘犬として活躍していました。
そのルーツは、チベタン・マスティフの祖先と言われ、
- アッシリア(現在のイラク北部)
- ペルシャ、バビロニア(現在のイラク南部)
- エジプト
などの経緯を経てイギリスに伝わり、改良されて2000年以上も経た犬種だと言われています。
13世紀から19世紀まで、イギリスでは貴族や大衆の娯楽、
- 「ブル・ベイティング(牛いじめ)」
- 「ベア・ベイティング(熊いじめ)」
というゲームが流行し、1835年この非人道的なゲームが禁止されるまで、マスティフは闘犬として使役されていました。
その後、闘犬の使用を禁止されるようになり、獰猛で攻撃的なマスティフの存続理由は無くなってしまい、この犬種の数は激減しますが、19世紀後半アメリカに持ち込まれ、今日のような優しく穏やかなマスティフに改良されました。
命がけで主人を守るマスティフ
紀元前55年、ローマの将軍ジュリアス・シーザー率いるローマ軍が、イギリスへ侵攻した際、ローマ軍を迎え撃つため、イギリス軍と果敢に闘うマスティフに感銘を受け、イギリスからローマへ持ち帰ったという説があります。
また、1415年イギリスのピアーズ・リー卿が飼っていたマスティフは、彼がフランスのアジャンクールの戦いで負傷した際、何時間もの間、彼を敵から守り続けたという説もあると言われています。
この二つの説からも、マスティフは、主人を守るためなら自分の死をも厭わず、断固たる姿勢で敵を攻め入る勇猛果敢な犬種であることが、今も尚後生に伝えられています。
マスティフの種類について
名前に「マスティフ」と付く犬種が何種類か存在していますが、これらの犬種はマスティフの血を引く犬種です。マスティフはこのように、幾つかの犬種を生み出されるのに無くてはならない犬種だったのです。
かの「チンギス・ハーン」が3万匹もの犬を引き連れたと言われているのが「チベタン・マスティフ」。大型犬のチベタン・マスティフは忠誠心もあり、勇敢さも兼ね備えた犬種です。
他にも、イタリアの闘犬「ナポリタン・マスティフ」や、スペイン原産の「スパニッシュ・マスティフ」、フランス原産の「ボルドー・マスティフ」といったように、その土地で作出されていったマスティフや、ブルドッグと交配させて作出された「ブル・マスティフ」など、様々なマスティフが存在しています。
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土佐犬のルーツはマスティフ?
日本の闘犬と言えば「土佐犬」が挙げられますが、土佐犬もまたマスティフの血を引く犬種なのです。より強い闘犬を作出するため、土佐犬を作出する際にはマスティフの他、ブルドッグやグレート・デーンなどの犬種の血も加えられました。
日本では土佐犬という名前が浸透していますが、海外などでは土佐犬は「ジャパニーズ・マスティフ」と紹介されることも多いようです。
因みに超大型犬の「グレート・デン」も「ジャーマン・マスティフ」の別名を持ちます。グレート・デーンもまた、作出される際にマスティフが使われているという一説からきているものです。
このように、マスティフの血はより強い、より忠実な犬を作出する際に用いられるものだったのです。
マスティフの大きさは?
マスティフの大きさは、体高が約70cm〜76cm、体重が79kg〜86kgという大きさです。
番犬や護衛犬、そして闘犬として活躍してきたマスティフは、非常にバランスの良い体格をしており、力強い体型を持つ犬です。筋肉や骨太な体は、より強いマスティフを作出していくために改良されてきたもので、闘犬としての気の強い性質は長い間維持されてきたものです。
現在のマスティフは幾分、ペットとして飼育されるために穏やかなマスティフを選択繁殖されてきていますので、闘犬のような気質のマスティフはかなり少なくなっているでしょう。
また、かつては人気犬種のひとつであったマスティフも、現在は絶滅の危機を迎える品種の一つでもあるのです。
マスティフの性格
マスティフは、勇敢で警戒心が強く、家族に対しては、とても従順で愛情深い性格なので、自分の家族に身の危険が及んだ時、過度なまでに家族を守ろうとするため、番犬や護衛犬に適しています。
また、家族に対して、献身的な性格も持ち合わせているので、子供の面倒も安心して任せられる犬種です。
しかし、あくまでも従順で忠実なのは、飼い主さんや家族だけなので、第三者の命令に関しては聞き入れないところもあります。
マスティフは、決してあまり感情を表に出すタイプではありませんが、一度信頼関係を築いた飼い主さんや家族に対しては、とても優しく温厚な性格です。
普段からアイコンタクトしながらコミュニケーションを取ると、従順な良い家庭犬になるでしょう。
マスティフの被毛
マスティフは、「ダブルコート」の被毛を持ち、硬く短い毛の「オーバーコート(上毛)」と柔らかく密生した「アンダーコート(下毛)」の2種類の被毛で覆われています。
被毛のカラーは、
- 「アプリコット・フォーン」
- 「シルバー・フォーン」
- 「フォーン」
- 「ダーク・フォーン・ブリンドル」
のカラーがあり、いずれの場合も、マズル(鼻先から口にかけた部分のこと)、耳、鼻、目の周りにブラックがあります。
被毛の手入れは比較的簡単で、汚れた時は、固く絞ったタオルで拭く程度で良いでしょう。
また、年に2回の換毛期があり、その間は沢山の毛が抜けるため、犬アレルギーの人がいる家での飼育はあまりお勧めできません。
定期的なブラッシングをすることが望ましいですが、換毛期を迎えた時には、よりこまめにブラッシングをするようにし、常に清潔な体を維持させるようにしましょう。
マスティフがかかりやすい病気
マスティフがかかりやすい病気とされているのが、大型犬に多い「股関節形成不全」です。
この股関節形成不全は、股関節が正常に形成されなかったり、変形されることで、歩き方に支障をきたす病気です。
肥
満体型は股関節形成不全を引き起こすきっかけとなってしまいますので、子犬の頃から肥満にならないように、食事の管理は徹底するようにしましょう。
また、「胃捻転」という病気も、マスティフは気を付けるべき病気とされています。
「胃捻転」とは、胃の内容物が発酵し、発生したガスで胃がパンパンになり、その胃が捻転してしまう病気で、大型犬に多く見られ、致死率も高い病気です。
ついさっきまで元気にしていると思ったら、急にぐったりとするなど、早急に処置をしないと、最悪の場合死に至る病気です。
予防としては、食事の後しばらくは安静にさせることや、水のがぶ飲みは避けること、早食いさせない事など、十分に気を付けてあげましょう。
また、マスティフは「進行性網膜萎縮」という病気にも気を付けなければいけません。
この病気は、網膜が萎縮して正常に働かなくなる遺伝子の病気です。まず、視力が低下して夜に目が見えなくなり、そのうち日中も見えなくなり、最終的には失明します。
他にも「目瞼外反症」など、あらゆる眼科疾患にかかりやすいと言われているので、日頃から目のチェックは欠かさずしましょう。
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マスティフのブリーダーについて
マスティフは初心者向きの犬種ではなく、ある程度マスティフや犬についての知識を要する犬種にはなりますので、一般的にはペットショップで見かける機会は無いと言って良いでしょう。そのため、マスティフを迎え入れる際にはブリーダーからの直販という形になります。
マスティフの相場としては、おおよそ30万円前後を予定しておいたほうが良いでしょう。高い個体ですと50万円を越えるマスティフも珍しくはありません。毛色や血統など、条件によって価格も大幅に変わりますので、好みの毛色の相場を把握しておくと探しやすいかもしれません。
マスティフ系統の犬を探している方も多く、マスティフのブリーダーも少ないことから、子犬が産まれるとすぐに売れてしまう場合が多いので、マスティフを迎え入れる際にはこまめにチェックしておくようにしましょう。
マスティフは危ない犬?
マスティフは、かつて闘犬として使われていた時代は、攻撃的で獰猛な性格を重視していたため、非常に気の強い犬種として扱われていましたが、現在は闘犬としての需要がなくなってきたため、かつてのマスティフとは違ってきています。
現在においてのマスティフはよりペットとして飼育しやすい、大人しく友好的な性格へと改良されたと言われています。しかし、見た目が格好いいからと、連れて歩けば自慢になるからと、安易な気持ちで飼育すると、後に大事故になってしまうケースもあります。
確かにマスティフはより穏やかな、飼育のし易い種へと改良を重ねられてきましたが、やはり闘犬の血も流れる犬種。一度、火がつくと危険な犬種ともいえます。
そのためにはしっかりとしたトレーニングや、しつけを入れる必要があるのです。
マスティフの性格や飼い方は?【強面だけど優秀な番犬!】のまとめ
マスティフは、高温多湿の環境が苦手な犬種なので、熱射病や脱水症状には気を付けましょう。特に日中の炎天下での散歩や、クーラーのないような場所で長時間留守番させるようなことは絶対しないで下さい。
また、マスティフは警戒心が強いので、子犬の頃から家族以外の人間や外の環境などに慣れさせ、社交性をつけてあげると、必要以上に怯えたり、吠えることが無くなります。
こうした躾の他に、マスティフは服従訓練が必要になります。成犬になると、成人男性でも敵わなくなりますので、必ず愛犬とアイコンタクトを取りながらトレーニングして、飼い主さんに「従う」ということを理解させる訓練をしましょう。
子犬のうちに、訓練の学校へ通わせるのも、一つの手かもしれません。
本来、マスティフはとても愛情深く、温厚な性格の持ち主です。しっかりと躾をして、愛犬と飼い主さんとの信頼関係を築けば、家族を守る頼もしい相棒となってくれるでしょう。
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