犬の病気、狂犬病は人間も感染する恐ろしい伝染病で、発症するとほぼ死亡する病気ですが、みなさんは狂犬病の事をどれくらいご存知でしょうか?今回は、この狂犬病の特徴と症状について解説していきます。
狂犬病とは?
「狂犬病」という病名を、犬を飼っていない方でも、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
ズーノーシス(人畜共通感染症)であることでも知られる狂犬病は、命にもかかわる非常に恐ろしい病気のひとつです。
また、現代の医学においても、狂犬病を発症した際に有効とされる治療法は見つかっておらず、致死率も99.9%と言われています。
これは、犬にとっても、人にとっても同じ確立で、すべての哺乳類に感染リスクがあります。
日本国内においては、狂犬病の予防接種も義務化されているため、1957年以降に狂犬病は発生しておりませんが、2012年の報告では、世界で年間55,000人もの人が狂犬病の犠牲となっており、中国・東南アジア諸国・アフリカ諸国においては、今もなお犬の狂犬病が流行しています。
狂犬病の潜伏期間
狂犬病は、数あるズーノーシスの中でも、最も恐ろしい病気として知られていますが、その死亡率と症状も悲惨なものがあります。
狂犬病の発症から死亡に至るまでは、長くて10日、そのほとんどは2日ほどと言われています。
狂犬病は、狂犬病に感染している動物に咬まれることで、ウイルスを含んだ唾液が体内へと侵入し、感染していきます。ウイルスはその後、体内に潜伏するのですが、犬の場合で2週間〜2ヶ月程度と言われています。ちなみに、人間の場合は1〜3ヶ月程のようです。
狂犬病が潜伏している間は様子もわからないため、他の犬や人へも感染する恐れが非常に高くなります。狂犬病の感染から発症まで長くて2ヶ月もあるため、感染が一気に拡大してしまう可能性もあります。
狂犬病の感染と症状とは
ウイルスの潜伏後、狂犬病を発症すると、
- 「前駆期」
- 「狂躁期」
- 「麻痺期」
の3つの期間を経て、やがて死に至ります。
大きく分けて「狂躁型」と「麻痺型」に分けられますが、麻痺型である場合、非常に早い段階で麻痺症状となり、わずか数日で死に至る事になります。
しかし、その多くは狂躁型で、狂躁期の凶暴になっている間に事故が起こり、感染が広まるという場合が多いようです。
【前駆期】
発症後、1〜3日はこの前駆期に入ります。元気の減退、食欲の低下または暴食がみられ、性格や行動の変化が起こります。それまで凶暴な性格の犬が温和になったり、温和な性格の犬が凶暴になったりといったように、これまでになかった行動が出はじめます。
【狂躁期】
発症後、前駆期を経た1〜7日は狂躁期に入ります。行動は常に興奮状態にあり、大きな声で吠える、目の前の物を何でもかじると言った行動が見られるようになります。また、狂犬病になると「水」が怖くなる「恐水症状」は犬にはなく、水を多く飲もうとします。しかし、上手く水を飲むことができないために、顔ごと水に突っ込んで飲もうとしたりする行動があらわれます。
【麻痺期】
狂躁期の後、あるいは麻痺型である場合は発症後すぐに、凶暴性は息を潜めるようになり、よだれをたらし、意識も低下、そのご呼吸麻痺を起こすことで死亡してしまいます。
狂犬病予防接種の重要性
このように、狂犬病は非常に恐ろしい病気であり、確実な予防接種が望まれます。
狂犬病の予防接種を受けることによって、こうした脅威から犬を守ることができ、また自らの身を守ることにも繋がるのです。
一度発症してしまうと、治療法はないため、ただ苦しみ、死にゆく姿を見守るだけとなってしまう狂犬病。
しかし、狂犬病の予防接種を受けていれば、噛まれた直後に治療を行うことによって、感染を食い止める事ができる可能性が高くなります。
毎年の狂犬病を受けている事が条件に挙げられますが、万が一、感染している犬に咬まれたとしても、すぐに病院へと連れて行き、狂犬病のワクチンを「再接種」することで、感染を食い止められる事ができます。
その後の経過観察は必要になりますが、ワクチンを接種していない場合を考えると、格段に生存率は上がります。
狂犬病の予防接種は、万が一の蔓延を防ぐためにも必要な予防策でもあり、飼い犬や飼い主の身を守るためにも、非常に大切な予防策となるのです。
旅行先でも危険は多い
あくまでも日本国内において、狂犬病の感染がみとめられていないだけであって、国外へと旅行に行った際などは、狂犬病に感染するリスクは高くなります。
人が狂犬病に感染する95%は「犬」によるものですが、残りの5%は予想もつかないような動物からの感染も見られ、世界では「コウモリ」が飛びかかってきた際に噛まれた例や、「キツネ」によって襲われた例も確認されています。
日本人に関しても、2006年にフィリピンに滞在中に犬に咬まれ、帰国後に狂犬病を発症し、死亡した例があります。
このように、狂犬病は他人事ではなく、いつその脅威にさらされるかわからない病気なのです。
さらに、昨今のペットブームによって、犬以外にも色々なペットが海を渡ってやってきています。
狂犬病は、すべての哺乳類に感染する病気のため、犬や猫はもちろん、フェレット、キツネ、サルといった動物たちも、感染している可能性はゼロではありません。
もちろん、国内に入る前には、非常に厳重な検疫が設けられていますが、検疫をくぐり抜け、密輸などによって国内へと狂犬病が運ばれる可能性も、ゼロではありません。
日本でも、いつ狂犬病が発生してもおかしくはない状況なのです。
狂犬病予防接種は毎年の接種が重要
狂犬病はこのように、いつ何時、感染してしまうかわからないものです。また、狂犬病に感染してからでは取り返しのつかない事態になるため、あらかじめ予防線を張っておくことが大切です。
狂犬病の予防接種は年中を通じて接種可能ではありますが、毎年4月〜6月の期間が予防接種の実施期間とされています。期間が設けられているのは、集団接種を行うタイミングとして4月〜6月の期間が設定されていますが、この期間内で接種が難しい場合には、別の月で摂取しても構いません。
また、一度予防接種を受けると、動物病院から予防接種のタイミングに合わせてお知らせが届くのが一般的です。はがきも届くので気がつくとは思いますが、飼い主さんも予め意識しておくようにしましょう。
狂犬病予防接種の金額は?
狂犬病の予防接種は、生後3ヶ月(90日以降)からの接種が義務つけられています。年に1度の狂犬病の予防接種ですが、予防接種の金額に関しては自治体によっても若干の差があります。
金額としてはトータルで2,000円〜4,000円ほどと、自治体によっても差が大きいです。内訳としては、予防接種の注射が1,000円〜3,000円ほど、予防接種の証明書を発行するための手数料として550円〜が基本となります。
例えば、
・札幌市であれば注射料金が2,560円、注射済票の交付に700円。
・東京都品川区であれば注射料金が3,100円、注射済票の交付に550円。
・福岡市であれば注射料金が2,500円、注射済票の交付に550円。
といったように、自治体によって金額はバラバラです。
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狂犬病予防接種における副作用
狂犬病の予防接種に関しては、前述の通り毎年の接種が必要になってきますが、狂犬病の予防接種にも副作用があるため、予防接種を受ける際には、いくつか気を付けなければいけないポイントがあります。
狂犬病の予防接種を受ける際には、動物病院の先生も確認を行うはずですが、飼い主さんも副作用がある場合もあると言うことを十分に理解しておき、予防接種を受けさせる際には万全の体調で望む事が大切なのです。
気を付けたいポイントは、愛犬の体調です。予防接種にアレルギー反応を示す場合もありますが、愛犬の体調が優れていないときに予防接種を受けてしまうと、普段では起こらない事態になりかねません。
副作用には、嘔吐や下痢、湿疹、発熱などの症状が見られますが、場合によっては重篤な症状が現れる場合もあります。
狂犬病予防接種とアナフィラキシー
愛犬の体質によっては、狂犬病の予防注射の成分に対してアレルギーがあり、予防接種を受けることで重篤な副作用であるアナフィラキシー症状が見られる場合もあります。
アナフィラキシーとは、強いアレルギー反応の症状のことを指しますが、呼吸困難を引き起こし、命を落とす場合もある恐ろしいものです。人間でもスズメバチ等に刺されることでアナフィラキシーショックを引き起こし、命を落とすこともありますが、犬にもアナフィラキシーは存在するのです。
アナフィラキシーの症状はおおよそ30分以内に現れるのが目安となります。念のため、狂犬病の予防接種を初めて受けた際には、すぐに病院に駆けつけられるよう、病院付近で様子を見守ることが大事です。
狂犬病は恐ろしい伝染病!【症状や感染しないためには?】のまとめ
厚生労働省のサイトでも確認ができますが、犬の「登録」と「狂犬病予防接種」は、飼い主の義務とされています。
長い間、日本に狂犬病の感染が見られないのは、狂犬病に対しての国の措置と、我々ペットユーザーが行う、狂犬病予防接種による予防策が功をなしている結果です。
近隣諸国から、万が一狂犬病のウイルスが持ち込まれたとしても、万全の対策をもって蔓延を防げるようにしたいものですね。
ひとりひとりの飼い主さんが、こうした予防接種を受けることでも、それぞれの飼い主さんの意識も変わるように思います。
愛する愛犬のためにも、毎年の狂犬病予防接種は忘れずに接種するようにしましょう。
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