猫は犬のように「ハァハァ」と口で深く呼吸する機会も少ないため、口臭に気が付かない場合も多いですが、実は猫も口臭トラブルを抱えている場合があるのです。そして、その口臭トラブルはもしかすると、体の異常によるものかもしれません。今回は猫の口臭と、口臭の原因・予防について解説していきたいと思います。
猫の口臭の原因とは?
意外と気が付かない猫の口臭。人間でも歯磨きを行わないと、口が臭くなってきたり、病気をしていたり体調が悪かったりすると、口臭が強くなってくる場合がありますが、それは猫も同じこと。口臭が臭いと感じる時には、すでに何かしらのトラブルが発生している可能性があるのです。
猫の口臭がきつくなってきている原因には、「口腔内のトラブル」に加え、「病気によるもの」や「体調不良」といった要因が考えられます。
必ずしも口腔内のトラブルだけが口臭を臭くしているわけではなく、体の異常が口臭となって現れる場合もあるのです。体の不調が口臭に関係してくるとは意外かもしれませんが、病気や体調不良によっても口臭は臭くなるため、口臭は「不調のサイン」と考えても良いかもしれません。
猫の口臭は病気のせい?
猫の口臭を臭くしている体内のトラブルには、主に「肝臓」や「腎臓」の働きが弱っている事が考えられます。肝臓や腎臓は、体の老廃物を分解したり排泄させたりといった働きをします。しかし、これらの臓器が正常に機能していないと、体内に老廃物が蓄積されていってしまい、口臭などに悪影響を及ぼし始めるのです。
口臭を引き起こしている病気には、腎臓や肝臓に関係する病気が考えられ、「糖尿病」や「腎不全」「尿毒症」といった病気が疑われます。
猫の口臭が臭いからと言って、「歯周病」等の口腔トラブルとすぐに考えず、まずはこうした病気のサインであるかどうかを判断する必要があるのです。とはいえ、必ずしも病気であるかどうかはわかりませんので、これらの病気の初期症状について理解していってみましょう。
口臭に影響する病気の初期症状
「糖尿病」は人間にも見られる病気でもありますが、猫にも糖尿病は存在します。糖尿病は、血中の糖濃度が高くなってしまう病気で、その原因となるのが、インスリンと呼ばれるホルモンが正常に働かなくなってしまうことです。
猫の糖尿病に関しては主に成猫〜老齢猫に多く見られ、初期症状としては水を大量に飲むようになり、尿の排泄回数や量が増加するようになります。また、ご飯をたくさん食べているのに体重が減少したり、腹部が膨れてくると言った症状も見られる場合があります。
猫が糖尿病を引き起こしていると、肝臓の働きが弱まってしまい、上記に挙げた初期症状に加えて口臭が臭くなるといった症状も見られる場合があるのです。まずは、水を飲む量が極端に増えていないか、食欲と体重のバランスは変わっていないかなどを確認してみましょう。
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口臭に影響する腎不全と尿毒症の症状
「腎不全」は高齢の猫に多く見られる病気で、死因の一つにもあげられる病気です。腎不全の特徴としては、目立った症状がわかりにくく、じわじわと進行する病気であることです。初期症状としては水を多く飲み、薄い色の尿を多量にするという点です。
こうした症状が悪化してくると、次第に食欲が無くなり、元気もなくなってくるようになります。この段階に来ると、すでに老廃物が体内に蓄積されていっている状態になり、腎不全をきっかけに「尿毒症」を引き起こしている状態へと変わっていきます。
尿毒症は体内に老廃物が蓄積され、血中の老廃物の濃度が上昇してしまう病気で、老廃物を尿などで排泄できず、どんどん体の中に蓄積されていってしまっている状態になります。重症化してくると「心不全」などの病気を引き起こします。
こちらの病気も糖尿病と同じく、水の飲む量が極端に増加していないか、日頃の様子は元気かどうかなどを確認するようにしましょう。
愛猫の口腔内をチェックしてみましょう
猫の口臭が口腔内のトラブルだけではないという事がお分かりいただけたでしょうか。前述のような様子が見られないのに口臭が臭い場合には、やはり口腔内にトラブルを抱えていることを考えたほうが良いでしょう。
まずチェックしたいのが、猫の口腔内・歯の状態です。最初の難関になるのが、愛猫の歯を見ることです。中には歯や口の中を見られるのを嫌がる猫もいます。ここで無理をして歯を見たりすることは避けましょう。
いきなり歯磨きを行おうとすると、愛猫にとっては何をされるのかわからず恐怖だけを感じてしまいます。無理に行おうとすると、愛猫もトラウマを抱えてしまい、今後のデンタルケアが困難になってしまいます。
あくまでも愛猫が嫌がらずに見せてくれるようであれば、手前の歯から奥の歯までを確認してみましょう。もし愛猫が嫌がるようであれば、動物病院などに行って確認してもらうようにしましょう。
猫の歯と永久歯
ところで猫の歯の本数をご存知でしょうか。子猫の場合、乳歯は26本で、成猫になると30本の永久歯が生えています。まじまじと愛猫の歯の本数を数えることもないと思いますが、虫歯や怪我等で永久歯が抜けてしまうなんて事もあります。
歯が抜け落ちてしまっているのを発見した場合には、すぐに動物病院に行って原因を突き止め、その後の処置を聞く必要があります。これは病気や感染症などの影響で抜け落ちているのであれば、すぐに対処する必要があるためです。
猫は虫歯にはなりにくいと言われる動物なのですが、まったく虫歯にならないわけではありません。歯が抜け落ちた原因が虫歯によるものであれば、それはかなり症状が進行し、何かしらのサインが出ていたはずです。
歯周病の原因となる歯垢と歯石
愛猫の歯をチェックできるようであれば、愛猫の歯の状態を確認してみましょう。
猫の歯は白いでしょうか、黄色いものが付着しているでしょうか。歯に黄色いものや茶色っぽいもの、もしくは灰色の物質が付着しているようであれば、それは「歯石」と呼ばれるものです。
食べ物を食べることによって歯には「歯垢」が付着してしまいますが、この歯垢を放おっておくと数日後には石灰化してしまいます。これが歯石と呼ばれるものですが、歯石になってしまうと歯磨き等で容易には除去できなくなってしまいます。
自宅でも除去できることはできますが、愛猫が怪我をしてしまう恐れもあるため、難易度はかなり高め。動物病院に行って麻酔をかけ、安全に削ってもらうのがベストでしょう。
猫の口臭を予防するために
歯周病や歯石を予防するためには、歯垢を常に除去しておくことです。しかし、歯垢はキャットフードやおやつを食べることによって必然的に付着してしまうもの。そのため、歯垢を除去するには毎日のデンタルケアが大事になってくるということです。
そのためには、まずは愛猫に歯磨きを慣れさせる必要があります。初めに口の中を見せてくれないようであれば、まずは口の周りを触れることから慣れさせていきます。それから徐々にステップアップし、手前の歯に触れる、口の中に手をいれる、奥歯に触れるといったように、日数や時間をかけて慣れさせていきましょう。
理想的なのは幼猫の頃から歯磨きの習慣を付けることですが、口臭が臭いと感じてくるのは成猫〜老猫になってからがほとんど。始めは念のため、厚手の手袋をはめて行い、飼い主さんも怪我をしないような工夫が必要になります。
猫の口臭対策
猫の口臭対策を行うためには、毎日の歯磨きが効果的ですが、なかなか歯磨きができないという場合もあるでしょう。そうした場合の対策としては、まずは水を常に飲める状態に、新鮮な水を常に飲めるような状態にしておくことが大事になります。
また、猫用のデンタルグッズにも色々なものがあります。歯磨き以外にも、液状歯磨きになっていて、水に溶いて与えるものや、奥歯に垂らすだけのデンタルグッズもありますで、愛猫の好みによって使い分けるようにしましょう。
今では様々な猫用のデンタルグッズも登場していますが、必ずしもすべての猫に使いやすいというわけではありません。飼い主さんが愛猫の性格を把握し、ベストなデンタルグッズを選べるようにする必要があります。
おやつで歯磨き効果
最も簡単にデンタルケアを行えるのがおやつタイプのデンタルグッズです。
「猫用グリニーズ」を始めとしたデンタルケア用品は、おやつとして食べながらも、歯垢を除去できるという商品で、なかなか口を触らせてくれない愛猫にも簡単にデンタルケアを行える商品となっています。
また、グリニーズ以外にもねじねじの構造になったおやつタイプのデンタルグッズや、細かい繊維質をもったデンタルおやつなども販売されています。まだまだ犬用のデンタルおやつと比較すると少ない印象ですが、猫用のデンタルおやつも増えてきていますので、好みのフレーバーを発見できれば、非常に楽にデンタルケアが可能となります。
ただし、おやつの場合は噛みやすい噛み方で食べるため、全ての歯をまんべんなくケアできるかと言うと、なかなか難しいのが実情です。
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餌でも歯磨き効果
デンタルケアを行えるキャットフードも販売されています。ロイヤルカナンの「オーラルケア」に代表されるキャットフードは、粒を大きくすることで、食事の際によく噛むようにさせ、ブラッシング効果を高めるというものです。
このほか、キャットフードには「ポリリン酸ナトリウム」と呼ばれる、歯の健康ケアに適した成分も配合されているので、虫歯や歯石・歯垢のケアにも期待ができるものとなっています。
ただし、猫もグルメな動物ですので、愛猫がしっかりと食べてくれなければ意味はありません。また、ようやく食べるキャットフードに出会えたという場合にも、またフードを切り替える勇気が必要になりますね。こうした部分も、猫のデンタルケアの難しさが出ているのです。
液体歯磨きの使いやすさ
食事をすることでデンタルケアを行えるのは理想的ですが、最終的には飼い主さんが日々、デンタルケアを行なうのにはかなわないでしょう。そこで利用したいのが液体タイプの歯磨きケアグッズです。
液体タイプのデンタルケアは、飲水に垂らして使用するものや、歯に直接垂らしてブラッシングを行なったりというものもありますが、愛猫が好きなおもちゃがあれば、おもちゃに垂らして遊ばせることでも、デンタルケアが行えるのです。
特にお気に入りのおもちゃがなければ、飼い主さんの登場となりますが、液体タイプのデンタルグッズは考え方次第で色々な方法に使用することも可能なのです。
ただし、おもちゃなどに使用する際には定期的に洗うことも大事ですし、水に垂らす場合には、水を飲まなくなるのを防ぐために、いつもの容器と別の水飲み容器で行なうようにしましょう。
口が臭くない場合もチェックはしましょう
これまでは猫の口が臭いという前提で解説してきましたが、中には口臭を伴わずに病気の症状が進行してしまう場合もあります。病気すると必ずしも口臭が臭くなるわけでないのは、人間も同じこと。口臭がするのは何かしらのサインと捉えるのがベストでしょう。
逆に口臭というサインが出されずに症状が進むほうが恐ろしいので、できるだけこまめに、口の中までも定期的にチェックしておくのが理想的な健康管理と癒えるでしょう。
口臭もないので異変に気が付きにくいものではありますが、日頃からチェックしていれば、ちょっとした変化にも気がつくことが出来るでしょう。また、日頃から口腔内のチェックをしていれば、いざという時にも口腔内のケアがしやすいのもメリットと言えます。
まとめ
猫の歯磨きは犬などに比べると、比較的難しいと言われています。そのため、前述のようなデンタルケアおやつが、簡単に猫の口腔ケアを行える物となっていますが、均等に全ての歯でデンタルガムを噛むわけではありませんので、どうしても汚れがちな歯がでてきてしまいます。
デンタルガムでも効果が期待できますが、やはり徐々に慣れさせ、歯磨きを飼い主さんが行えるようになるのがベストな方法と言えるでしょう。もしくは、健康診断も兼ねて、動物病院でチェック・治療してもらうのもおすすめです。
猫の口臭は、単に年齢によるものだけではなく、体の不調を訴えているサイン。こうしたサインを見逃さないよう、日頃から愛猫の世話だけではなく、愛猫とスキンシップをはかったり、愛猫の口臭をチェックするようにしましょう。
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