甲状腺ホルモンの分泌量が減少することで発症する「甲状腺機能低下症」。健康な体を維持するのに欠かせない「甲状腺ホルモン」ですが、このホルモンバランスが崩れると猫の体に異常をきたすことがあります。今回は「甲状腺機能低下症」について考えましょう。

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ホルモンの働き


そもそもホルモンとは化学物質のひとつ。ホルモンの働きは猫の血圧を一定に保つ働きをしたりすることで、愛猫の体の状態を常に一定に保つために欠かせないものです。

去勢手術を受けると太りやすくなると言われる所以には、このホルモンのバランスを変えることになるため、体の状態を一定にすることができなくなったためという事も理解できるでしょう。

そして、ホルモンは甲状腺や副腎、下垂体、卵巣・精巣、膵臓などにある内分泌器官から分泌されますが、分泌量のバランスが崩れる事をホルモンバランスの乱れといいます。

ホルモンバランスの乱れる原因は、この内分泌器官に何かしらのトラブルが生じてしまし、分泌量が変わってしまうために起きるわけです。

ホルモンバランスの乱れとは

ホルモンのバランスが崩れると、「脱毛」「太る・痩せる」といった症状の他、「水を多く飲む」「尿の量が多い」など、普段から注意して観察していると、気付くことができそうな症状が見られるようになります。

また、去勢手術や避妊手術をしたことによって、「前より太りやすくなった」「少し性格が変わった」など、術後の猫には様々な症状が出ることがありますが、これは猫の「ホルモン」の分泌量のバランスが変わった為に起きる症状の一つと言えます。

ホルモンの乱れはこのように、体の変調をきたす様々な悪影響を猫の体に及ぼしてしまいます。日頃から愛猫の健康管理はもちろん、愛猫の様子も注意深く確認しておかなければなりません。

「甲状腺機能低下症」の特徴とは

そんなホルモンの病気の一つ、「甲状腺機能低下症」とは、気管の両脇にある甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンが減少することで発症する病気です。

人間で言えば喉仏のあたりにあるのが猫の甲状腺。この甲状腺から分泌される「甲状腺ホルモン」は、猫の代謝を活発にしたり、体温や血圧、心拍数など、猫の体を正常に保つために重要な役割を担っています。

そのため、この甲状腺ホルモンの分泌量が減少してしまうことで、様々な異常を引き起こしてしまいます。因みに、甲状腺の分泌量が減少すると「甲状腺機能低下症」に、甲状腺の分泌量が増加すると「甲状腺機能亢進症」と、それぞれ別の病気に分けられます。

分泌量が低下することで発症する甲状腺機能低下症の症状について見てみましょう。

甲状腺機能低下症の症状とは


甲状腺機能低下症の症状で特徴的なのは「元気がなくなる」「胴体左右対称の脱毛」などの症状が特に挙げられます。

他にも、今まで活発に走り回っていたはずなのに、甲状腺機能低下症を発症してしまうことで、あまり走り回らなくなったり、動きが鈍い・遅くなる、常に疲れている様子が見られるなどの症状が現れます。

この他にも、夏場なのに寒がる様子が見られたり、脈拍が正常値以下に減少してしまう症状、血圧の低下のほか、神経症状が見られることで麻痺してしまったり動きがおかしくなると言った症状も見られるようになります。

基本的には、今まで元気だったのに極端に元気がなくなったり、極端に動かなくなるといった様子が見られることで飼い主さんも気がつく場合が多そうですね。

「甲状腺機能亢進症」とは

前述の通り、逆に甲状腺ホルモンの分泌量が増加してしまうと「甲状腺機能亢進症」を発症してしまいます。

甲状腺機能亢進症の症状には、「体温の上昇」「心拍数と血圧が増加する」「食欲はあるのに痩せていく」などの症状からも分かる通り、甲状腺機能低下症とは真逆と言っていい症状が見られるようになります。

このほか、極端に動きが活発になると言った様子や、落ち着かなくなる様子も見られるでしょう。場合によっては攻撃的な性格になってしまうケースも有るようです。

こうした症状を経て、今度は徐々に嘔吐や下痢といった症状が見られるようになり、次第にこれまで元気だった症状から一変して、元気がなくなっていく様子が見られるようになります。

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猫に多いのは甲状腺機能亢進症

甲状腺機能亢進症の症状は活発になったり、極端に動き回る症状が特徴ですが、進行するに連れて活動力の低下が見られる病気です。また、ダメージを受けるのはホルモンだけでなく、心肺機能などにも悪影響が見られるようになるでしょう。

甲状腺機能低下症は、主に犬に発症することが多く、猫が発症することは珍しい病気ですが、反対に、甲状腺機能亢進症は犬よりも猫が発症することが多いと言われています。

また、年齢も高齢猫が発症する確率が高くなり、免疫力や体力も減少傾向になってくる高齢猫の、様々な部位にダメージを加えてしまう病気でもあります。

甲状腺の分泌量が多いのか、少ないのかによっても、このように全く別の病気、別の症状が見られるわけです。

甲状腺機能低下症の原因とは

甲状腺機能低下症を引き起こす原因は、「先天性」のもと「後天性」のものがありますが、猫の場合、ほとんどが後天的に発症すると言われています。また、後天的に発症する場合は、高齢の猫に多く、先天的に発症する場合は幼猫に多いです。

先天的に発症する場合、ヨウ素の有機化が障害となって甲状腺ホルモンの合成を妨げたり、先天的に甲状腺の形成不全が原因となって発症します。ちなみに、アビシニアンは遺伝的にヨウ素有機化障害があると報告もあるようです。

後天的に発症する場合は、甲状腺組織細胞が体内の甲状腺抗体に攻撃され、甲状腺の機能が低下してしまうことで、甲状腺機能低下症を引き起こしてしまうものです。また、両側の甲状腺の摘出手術や抗甲状腺薬の過剰投薬など、「医原性」によって発症することもあります。

甲状腺機能低下症の治療方法とは

甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの減少によって発症しているため、甲状腺ホルモン薬を投薬することで正常値へと戻し、回復させていきますが、他のホルモンの病気と同じように、自分の体で甲状腺ホルモンを作ることができなくなっているため、一生涯に渡って投薬治療を行う必要があります。

しかし、薬を与える量が多すぎると、甲状腺機能亢進症を引き起こし、代謝が上がりすぎて、心拍数や血圧が増加したり、体温が急激に上昇することがありますので、定期的に検診や甲状腺ホルモン濃度の測定が必要です。

発見が遅れがちなホルモンの病気


今回ご紹介した甲状腺機能低下症など、ホルモンバランスの異常で発症してしまう病気を未然に防ぐには、日頃の健康管理はもちろんのこと、ちょっとした異常に気がつけるように愛猫の観察も欠かせません。

しかし、日頃からしっかりと愛猫を観察している飼い主さんでも、発見が遅れてしまう場合も少なくないのがこのホルモンの病気の見極めの難しさでもあり、甲状腺機能低下症に関しては血液検査をしても見逃してしまうという場合も多いようです。

定期的な検査が最も重要な予防策と言えますが、やはり飼い主さんが愛猫の変化に気がつくことができるかどうかが大切なポイントとなってきそうです。食事の量、性格、運動量など、小さなサインも見逃さないように気をつけましょう。

まとめ

先述したように、甲状腺機能低下症は高齢の猫が発症することが多く、「年を取ってきてから、食欲がなくなってきた」「年のせいで痩せてきた」と、愛猫が高齢になったせいだと思い込んで、このような病気に気付くのが遅れてしまうこともあるのです。

ホルモンの病気を未然に防ぐためにも、日頃の食生活の管理はとても大事な要素で、栄養バランスの取れた食生活を送り、ストレスの少ない環境を作る事を第一に考えましょう。

また、定期的に病院で健康チェックを行うのも効果的です。万が一の事態に備え、行きつけの病院を作るようにしましょう。高齢になると様々な病気の心配も増えてきますので、変化に敏感になり、ちょっとしたことでも疑問を持って飼育するようにしましょう。

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