猫の甲状腺機能亢進症は健康な体を維持するのに欠かせないホルモンのバランスの乱れによって起こる病気です。このホルモンのバランスが崩れることで、猫の体に異常をきたしてしまうのがホルモンの病気ですが、その中のひとつ、「甲状腺機能亢進症」の特徴と症状、予防策について見てみましょう。

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ホルモンバランスが原因で発症する甲状腺機能亢進症とは


ホルモンバランスが崩れていることによって引き起こされる病気に「甲状腺機能亢進症」という病気があります。この甲状腺機能亢進症は、新陳代謝を促すために必要な「甲状腺ホルモン(サイロキシン)」の分泌が異常に活発になる、または持続的に過剰分泌されることで引き起こされます。

この甲状腺機能亢進症と呼ばれる病気は比較的、高齢の猫が発症すると考えられている病気で、特に8歳前後の年齢の猫に多く見られます。また、甲状腺機能亢進症を発症することで甲状腺中毒が引き起こされてしまい、結果として体に様々な悪影響を及ぼしてしまいます。

こうしたことで、甲状腺機能亢進症は心臓や臓器への影響も大きい病気と言えます。

「ホルモン」とは?

甲状腺機能亢進症はホルモンバランスが崩れることで引き起こされてしまう病気ですが、この「ホルモン」と呼ばれる物質は「内分泌器官」という場所で作られている「内分泌」のことを指します。

「膵臓」や「甲状腺」、「卵巣」「精巣」など、内分泌器官は体の様々な部分にあり、内分泌の分泌量が崩れる=ホルモンバランスが崩れることによって、猫の体に様々な影響を及ぼします。

ホルモンバランスが崩れると、ホルモンが過剰に分泌されている、もしくは分泌が過剰に減るといった状態になりますが、症状が進行すると「脱毛」や「太る・痩せる」、「水を多く飲む」「おしっこの量が多い」といった症状が見られます。

特に高齢期の猫ともなると、年齢のせいかと思われるように、一見して非常にわかりにくいのが、このホルモンバランスの状態なのです。

甲状腺機能亢進症の症状

甲状腺機能亢進症の症状は「食欲の増加」が見られるのに「体重が減少」していく事や、「水を異常に飲む」「おしっこの量が多い」などの症状、さらには「嘔吐」「下痢」といった症状も現れます。

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また、特徴的なのは「活動的になる」ことや「落ち着きがなくなる」といった行動も見られ、時には「攻撃的になる」こともあります。こうした症状を発症し、病気が進行していくと「食欲不振」「活動の低下」へと症状が変化していきます。

心筋症なども併発する可能性もあり、場合によっては生命に危険が及ぶ病気でもあります。

甲状腺機能亢進症の原因


甲状腺機能亢進症の原因となるのが、腺腫様過形成や良性腫瘍・悪性腫瘍が甲状腺に出来てしまうことで、甲状腺ホルモンが過剰分泌されることで引き起こされることが原因となります。

腫瘍と聞くと「癌」がイメージされますが、こうした腫瘍が癌腫瘍である確率は低く、良性腫瘍である場合の方が多いようです。

残念ながらこうした腫瘍を発症する主な原因はわかっていませんが、高齢なのに、最近やけに活発だなと感じた時や、体重が急激に減っているなと感じた場合は、早めに診断を受けたほうがよいでしょう。病院での診察は、血液検査で甲状腺ホルモンの数値を確認する内容となります。

甲状腺機能亢進症の治療方法

甲状腺機能亢進症を治療するには、内科療法もしくは外科療法による治療となります。外科療法の場合、甲状腺機能亢進症の原因となる甲状腺の切除を行う事になりますが、左右にある甲状腺の両方を切除する事になってしまうと、一生ホルモン投与による生活をしいられてしまいます。

内科療法の場合は、抗甲状腺薬剤の投与による治療になりますが、投薬によって甲状腺ホルモンが低下しすぎるのを防ぐため、定期的なホルモン数値の測定が必要になります。

基本的には抗甲状腺薬による治療となりますが、抗甲状腺薬剤治療による副作用が出た場合には外科療法での治療となる場合があるようです。

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高齢猫の割合が高い甲状腺機能亢進症

前述でも説明したとおり、甲状腺機能亢進症は高齢の猫に多く見られる病気です。イギリスで行われた約10万頭の猫を対象とした調査では、実に2.4%もの猫が甲状腺機能亢進症を患っていたという調査結果もあり、さらに10歳以上の猫で統計を取ると8.7%の猫が甲状腺機能亢進症を患っていたという結果も出ているようです。

この数値を見るからに、やはり高齢である場合には甲状腺機能亢進症を引き起こしやすくなっているということが伺えます。

とはいえ、必ずしも高齢猫が発症するわけでもありませんし、若い猫が全く発症しないというわけではありません。あくまでも割合が高齢猫に集中しているため、高齢猫は気をつけなければなりませんが、若年の猫でも発症するケースはあります。

子猫や若年猫も注意は必要!

高齢猫ではなく、子猫〜若年猫が甲状腺機能亢進症を発症してしまった場合、上記のような甲状腺切除の外科手術が行われる確率が高いでしょう。若年の猫であれば全身麻酔のリスクも低く、外科手術を行うことが優先されるかもしれません。

ただし、高齢猫であれば全身麻酔のリスクも高く、体力的にも外科手術に耐えられるかわからないため、外科手術は勧められない方法となるでしょう。

甲状腺機能亢進症を完治させる可能性も高くなりますので外科手術は有効な方法ではありますが、高齢猫に多く見られる甲状腺機能亢進症ですので、こうした部分も病気に対してのデメリットに挙げられます。

いずれの治療もメリット・デメリットはありますが、年齢によっては選択肢も狭まるということを理解しておくようにしましょう。

甲状腺機能亢進症のアイソトープ治療とは?


甲状腺機能亢進症の治療方法の一つとしてアイソトープ治療と呼ばれる方法があります。残念ながら日本では認可の関係で行うことの出来ない治療法となりますが、直に日本でも認可が下りることでしょう。

アイソトープ治療とは、体内で甲状腺ホルモンの原料となるヨウ素(ヨード)を摂取させる治療法ですが、治療に使用されるのは「放射性ヨード」。実際にはカプセルに入った放射性ヨードを口から摂取させる事となりますが、この放射性物質が甲状腺の細胞を減らし、治療を行うというもの。

猫への負担も少なく、副作用のリスクも低いことから注目される治療法ですが、デメリットに挙げられるのが、3日〜4週間程度のあいだ隔離する必要があるという点です。

早期発見がカギとなる

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甲状腺機能亢進症の場合、腫瘍となる「しこり」ができる事で発症する病気なので、他のホルモン系の病気と違い、毎日注意深く観察することやスキンシップをすることで、発見は比較的容易になるかもしれません。

また、甲状腺機能亢進症は、早期発見・早期治療を施すことができれば、症状を未然に防ぐことだけでなく、症状の悪化を抑えることもできる病気で、治療後もホルモン数値を測定するなどといった検査も必要ありません。

ホルモンの病気の代表格で知られる「糖尿病」のような、一生涯付き合っていかなければいけない病気とは違い、甲状腺機能亢進症は腫瘍となるしこりを除去することで、通常の生活に戻ることができるため、早期発見・早期治療が重要なポイントとなります。

まとめ

甲状腺機能亢進症を始めとしたホルモンバランスの異常で発症してしまう病気を未然に防ぐには、日頃の健康管理はもちろんのこと、ちょっとした異常に気がつけるように愛猫の観察も欠かせません。

高齢であるにもかかわらず、最近やたらと活発だなと感じた時にはしこりが無いかを確認し、こまめに体型や体重を計測するようにすると、ささいな変化にも気がつけるようになれます。

また、毎日の観察や食事量を注意深く確認する事や、排泄量の確認や臭い・色などの排泄物の状態も把握出来るようにしましょう。たまに見る程度では変化に気がつくことは出来ませんので、毎日確認する癖を付けることが大切です。

こうした観察のなか、ちょっとした異変を感じた場合は早めに診察してみると良いかもしれません。

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