子犬は成犬に比べ、体力や免疫力も低く、あらゆる病気にかかりやすい時期でもあります。ワクチンが終わっていない生後3~4ヶ月の子犬は、特に注意が必要です。
今回は子犬がかかりやすい病気について、知っておいて欲しいことを幾つか挙げてみようと思います。

パルボウィルス感染症

犬の病気の中でも致死率の高い病気として知られる「パルボウイルス感染症」。主に、子犬や老犬といった、免疫力の低下・低い状態の犬が犠牲になる場合が多いのが特徴です。

このパルボウイルス感染症は、「パルボウイルス」と呼ばれるウイルスに感染することで発症する感染症で、下痢や嘔吐、血便などの症状に加え、脱水症状も引き起こし、ショック状態に陥ることで命を落としてしまう事も多い、恐ろしい病気です。

パルボウイルスは、ワクチンの摂取で予防することも出来ますが、ワクチンを未摂取の場合、特に子犬たちが集まるような場所でパルボウイルスが蔓延してしまうと、最悪の場合、子犬達が全滅してしまう恐れもあるほど恐ろしい感染症です。

ジステンパーウィルス

犬ジステンパーウイルス感染症とは、「犬ジステンパーウイルス」というウイルスに感染してしまうことで発症する病気です。
ジステンパーウイルスに感染すると、初期症状では食欲の減退や元気の減退、発熱、咳といった症状が現れます。また、下痢や嘔吐といった症状も見られるでしょう。こうした症状は感染後、約1週間程度で現れはじめます。

こうした症状が重篤化していくと、やがては神経系へと進行し、麻痺や痙攣といった症状を引き起こします。また、てんかんの症状も現れはじめ、こうした症状が現れている際に2次感染を引き起こし、肺炎などの病気も併発してしまいます。また、状態によっては死に至る場合もあるでしょう。

ジステンパーウイルスの致死率は50%〜90%ほどとも言われており、特に免疫力のない犬においては、犠牲になってしまう場合が多いようです。
また、ジステンパーウイルスの感染から完治しても、そのほとんどに後遺症が残る結果となり、歯のエナメル質形成不全によって歯がボロボロになってしまう、ジステンパーウイルス特有の後遺症が見られるようになります。

ジステンパーウイルスは、ワクチンを接種することでほぼ予防することができます。しかし、予防していても免疫力が極端に下がっている場合や、ワクチン未摂取の場合には、ジステンパーウイルスに感染する可能性が高いです。免疫力の低い子犬や老犬、病中の犬においては、特に注意が必要です。

ケンネルコフ

「ケンネルコフ」という病名、犬の病気の中でも、聞いたことがあるのではないでしょうか。別名「伝染性気管支炎」とも呼ばれるケンネルコフは、この別名の通り、ウイルスに感染することで気管に障害が起こり、最悪の場合には肺炎を引き起こしてしまい、命の危険にさらされる可能性もある、非常に怖い感染症です。

中でも子犬が感染することが多い病気で、成犬に比べて免疫力の低い子犬が「犬アデノウイルス」や「犬パラインフルエンザ」「マイコプラズマ」「犬ヘルペスウイルス」といったウイルスに複合感染してしまうことで「ケンネルコフ」を引き起こしてしまいます。
咳などの症状があることから「犬風邪」とも呼ばれ、こうした感染症を併発することでケンネルコフを引き起こす、いわば犬風邪の重症化した状態の総称とも言えるのが、このケンネルコフなのです。

寄生虫

「寄生虫」とは、犬の世界でももちろん、人間界でも存在するもので、寄生虫が体のどこかを住処にするわけですが、そこは寄生虫にとっては食料の宝庫でもあり、繁殖の場でもあります。この寄生虫が増えていくことによって、やがて犬の体も衰弱していき、最悪の場合は命の危険も及ぼす影響を持ちます。

【コクシジウム】
コクシジウム症とは、コクシジウムという原虫が腸に寄生することにより発症する寄生虫感染症です。
免疫力の安定している成犬が感染した場合には、特に症状が見られないことも多く、万が一発症しても、ちょっとした下痢程度の症状で収まります。

しかし、免疫力のない子犬が感染すると、下痢や血便、粘膜便といった糞便を排出するようになり、臭いも強烈になってきます。また、嘔吐や食欲の低下、元気減退といった症状も見られるようになり、脱水症状も伴います。こうした状態を放って置くと、脱水症状がひどくなり命の危険にさらされることがあります。

【ジアルジア症】
ジアルジア症とは、ジアルジア属の原虫によって引き起こされる寄生虫疾患で、成犬の場合無症状が多いため、気が付かないことがほとんどです。

子犬が発症した場合、軟便やひどい下痢を発症してしまうため、あまりに症状が長引いてしまうことで発育不良や体重が増えないなどの弊害が発生してきます。新しく子犬を迎え入れる際には、こうした感染症を発症していないかどうかを確認する必要があります。

【回虫症】
犬の回虫症は線虫の一種であるイヌ回虫によって引き起こされる病気で、健康な成犬の体に寄生しても、特に症状が見られない場合が多いのですが、免疫のない子犬が感染した場合、イヌ回虫は体内で活発に成長します。

回虫に寄生された子犬は、体内に寄生した回虫に栄養を横取りされ、成長期なのになかなか体重が増えないなど、発育不良に陥ってしまいます。その他にも、下痢や嘔吐、咳、貧血といったように様々な症状を引き起こし、さらに症状が進行していくと、お腹が膨れてくるといった症状も出はじめるでしょう。

臍ヘルニア

臍ヘルニアとは、簡単にいえばデベソのことで、子犬に多くこの症状が見られます。このデベソが小さければ問題ないのですが、デベソが大きい場合や、デベソを押しても引っ込まないような時は、手術が必要になります。

臍ヘルニアを放置すると、ヘルニア部分に脂肪や大網(だいもう)、腸管の一部が入り込み、腸が閉塞したり、腸の血行が滞り、最悪の場合、ショック状態に陥ります。
嘔吐や腹痛、食欲不振、元気消失といった症状が見られる場合は要注意です。

子犬の「誤飲」にも注意しましょう

子犬は人間の赤ちゃんと同様に、何でも口に入れてしまう傾向があり、間違って飲み込むことがあります。それを「誤飲」といい、飲み込んでしまった物は、そのまま消化できるものなら良いのですが、食道や胃、腸で詰まると、呼吸困難になったり、嘔吐を繰り返したり、最悪の場合は命の危険にさらされることがあります。

子犬の誤飲は飼い主さんの注意で防ぐことができるものです。子犬から目を離す時は、子犬の手の届くところには何も置かず、万が一、誤飲した場合は、すぐ病院へ連れて行きましょう。

子犬を飼育する上で気を付けるべきこと

子犬を迎え入れた際、「低血糖」にも気を付けなければいけません。低血糖とは、激しい運動や体力低下により、血液中の糖分の濃度が極端に低下することで、体がぐったりしたり、痙攣を起こしたり、意識を失うというような症状があります。
特に、「食の細い子犬」や「超小型の子犬」は要注意で、食べ物を長時間口にしなかったり、体の割に運動させすぎたりすると、低血糖になり、最悪の場合は死に至ります。

子犬の体は自分でうまく消化ができないため、食事の回数を増やし、空腹時間を作らないことが必要です。子犬の食事は、カロリーの高い子犬用フードにして、生後4ヶ月くらいまでは、食事の回数を1日3回以上で与えましょう。

もし万が一、低血糖を引き起こした際、塩分やミネラル、ブドウ糖が含まれている「ポカリスエット」が有効だと言われており、熱中症にも効果があります。ポカリスエットを飲ませる時は、少し水で薄めてから飲ませて下さい。子犬がいる間は常備しておくのも良いでしょう。

子犬は免疫力も少なく、抵抗力もありません。
「下痢してるだけだし・・・。」
「ご飯食べないのは、今お腹が空いてないだけよね。」
なんて、飼い主さんの勝手な判断で子犬を放置してしまうと、後で取り返しのつかないことになります。子犬がかかりやすい病気や症状を知っておくことで、いざとなった時に正しい判断ができるでしょう。

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