「気管虚脱」とは、呼吸をするのに必要な気管が、何らかが原因で押し潰されてしまい、うまく呼吸ができなくなるという病気です。今回は、あなたの愛犬も他人事ではない、「気管虚脱」について、症状や治療法、予防や対策などを調べてみましょう。

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気管虚脱とは

気管虚脱とは、何らかが原因によって、喉と肺を結ぶ気管が押しつぶされて変形してしまったことにより、呼吸がしづらくなり、咳や呼吸困難を引き起こすという犬特有の呼吸器系の病気です。

犬の気管の周りには、40個前後のC字形をした軟骨が外側を囲んでおり、首の動きに合わせて柔軟に変形するようにできています。しかし、気管虚脱になると、この軟骨が本来の形状を保つことができなるため、気管内の空気の通りを狭めてしまうのです。

この病気は、症状が落ち着いても再発することが多く、ただの咳だと思って放置していると、病状は徐々に進行していきます。

気管虚脱の症状

気管虚脱を発症すると、「ハーハー」や「ゼーゼー」というような苦しそうな呼吸に始まり、「ガーガー」とガチョウが鳴くような乾いた咳をしたり、吐き気を伴う場合もあります。

悪化すると、呼吸困難になり、舌の色が青紫色になるチアノーゼという症状が出て、苦しそうにヨダレを垂らしたり、酸欠や失神などを引き起こし、最悪の場合、窒息死などで死に至ることがあります。もし、救命できたとしても、脳や肺に後遺症を残すこともあるのです。

気管虚脱は、興奮した時や、散歩で首輪を引っ張ることで頚部が圧迫された時や、寒暖の差に反応して咳がでやすくなります。また、高温多湿である夏場にも注意が必要です。

チアノーゼとは

チアノーゼとは、血液中の酸素が極端に不足することで、犬の舌や唇が青くなったり、青紫色になる症状を言います。
原因は、心臓に送り出す血液の量が減少したり、大ケガをして大量出血をしたり、熱中症、低体温症、中毒、異物を飲み込んだなどの理由からチアノーゼを発症します。

犬がチアノーゼになって、こうした症状が出始めたら、呼吸器系や循環器系の病気を患っているということが考えられるため、かなり危険な状態だと言えるでしょう。

気管虚脱の好発犬種とは

基本的に気管虚脱は、全ての犬が発症する可能性がありますが、遺伝的に「チワワ」「ヨークシャ・テリア」「トイ・プードル」「ポメラニアン」「ミニチュア・シュナウザー」のような小型犬や、「フレンチ・ブルドッグ」「ペキニーズ」のような鼻の短い短吻犬種、「柴犬」「秋田犬」のような日本犬、「ゴールデン・レトリバー」「ラブラドール・レトリバー」のような大型犬も発症することがあります。

気管虚脱の原因

気管虚脱の原因は、未だ明らかにされていませんが、好発犬種がいることから、遺伝的に気管を支えている軟骨が弱いことが要因だと考えられています。また、鼻が短い短吻犬種も、構造的に鼻や口から空気が通りづらくなっているため、気管に負担がかかって、気管虚脱を引き起こしやすいと言われています。

そして、肥満が原因で気管虚脱を発症することも多く、気管の周りに脂肪が付くことで、気管を圧迫し、変形させてしまいます。その他にも、老化によって気管の周辺の筋肉が衰えてしまうことで、気管虚脱が発症しやすくなるとも考えられています。

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気管虚脱の治療について

【内科的治療】
抗炎症剤や気管拡張剤を投与します。症状が軽い時は、比較的治る場合もありますが、再発を繰り返すこともあります。基本的に、潰れてしまった気管は元に戻すことができないので、一時的に症状を抑えるために使用される場合が多いようです。

【外科的治療】
ステントという金属のメッシュでできた筒を、気管内に入れて気管を広げる方法があります。手術自体は簡単で時間もかからないのですが、術後経過で体が拒否反応を起こし、気管に入れた筒を外に出そうと咳が出続けてしまうという難点があります。

また、気管切開という方法もあり、頚部気管に穴を開け、そこから直接呼吸ができるようにする手術です。頚部に穴が開くので、術後は感染症を起こしやすいため投薬は止められません。痰が絡むことで窒息死する危険性がありますので、数時間置きに気管の痰を取り除いてあげる必要があり、四六時中付きっきりになってしまいます。

一番有効な外科的治療方法は「PLLP」と言って、潰れた気管を広げるために、気管の外側に光ファイバーで作った型(プロテーゼ)を縫い付ける方法です。この手術方法は術後経過も良いのですが、手術費用が高額になるようです。

気管虚脱の予防と対策

散歩で使用する首輪は、気管を直接圧迫してしまい、気管虚脱を引き起こしてしまうことがありますので、気管に負担をかけるような首輪をやめて、胴輪やハーネスに変えると良いでしょう。

また、肥満は気管虚脱を発症しやすいと考えられていますので、適度な運動をして、適正体重を維持させましょう。適度な運動は必要ですが、激しい運動や興奮させると咳が出やすくなりますので注意が必要です。

そして、高温多湿である夏場には、適度な温度と湿度を保つように心掛けましょう。また、散歩は暑い時間を避け、涼しい時間帯に行動しましょう。

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