「心室中隔欠損症」とは、心臓の右心室と左心室にある壁に穴が開いているという先天的な心臓の病気です。今回は、あなたの愛犬も他人事ではない、「心室中隔欠損症」について、症状や治療法、予防や対策などを調べてみましょう。

心室中隔欠損症とは

心室中隔欠損症とは、心臓の右心室と左心室にある壁に穴が開いている状態のことを言い、先天的な心臓の奇形の病気です。この病気は、心臓の病気の中でも最も発症率が高く、心臓の他に、肺などにも影響を及ぼすことがあります。

では、心室中隔欠損症の症状や予防、対策などを解説していきましょう。

心室中隔欠損症の原因

心臓には4つの部屋があり、上の2つが右心房と左心房、下の2つが右心室と左心室と言います。
心室中隔欠損症は、心室中隔と呼ばれる心臓の右心室と左心室の間にある壁が十分に発達せず、欠損孔(穴)が開いたままになっているという先天的な心臓の奇形の病気です。

心室中隔は、通常は胎児期や出生後すぐは穴が開いている状態になっていますが、成長するにしたがって壁ができて穴を塞ぎます。しかし、何らかが原因によって、壁が十分に発達しないまま成長してしまうと、心臓や肺に負担をかけて、様々な症状を引き起こしてしまいます。

心室中隔欠損症の好発犬種とは

心室中隔欠損症は、「ブルドッグ」「バセット・ハウンド」「秋田犬」「ウェスト・ハイランド・ホワイト・テリア」「レイクランド・テリア」「柴犬」「イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル」「オールド・イングリッシュ・シープドッグ」「ドーベルマン」「ボクサー」「サモエド」などが発症しやすいと言われています。

心室中隔欠損症の症状

心室中隔欠損症の症状は、生後半年前くらいで症状が出始めますが、乾いた咳や、走ったりなどの運動後に軽い呼吸困難、疲れやすくなるというような症状が現れます。

悪化すると、元気消失、食欲低下、発達障害、呼吸困難から、舌の色が青紫色になるチアノーゼという症状が出てきます。また、右心室から左心室へ流れるはずの血液が逆流して、左心室から右心室に流れ込むようになるため、肺に大きな負担がかかり、肺水腫を引き起こしたり、心不全で命を落とすこともあります。

そして、心室中隔の穴が小さい場合は、はっきりとした症状がなく、特に治療の必要はありませんが、万が一、心臓に寄生するフィラリア症を併発していると、早い段階で重症化することがありますので、徹底したフィラリア予防を心掛ける必要があります。

チアノーゼとは

チアノーゼとは、血液中の酸素が極端に不足することで、犬の舌や唇が青くなったり、青紫色になる症状を言います。
原因は、心臓に送り出す血液の量が減少したり、大ケガをして大量出血をしたり、熱中症、低体温症、中毒、異物を飲み込んだなどの理由からチアノーゼを発症します。

犬がチアノーゼになって、こうした症状が出始めたら、呼吸器系や循環器系の病気を患っているということが考えられるため、かなり危険な状態だと言えるでしょう。

肺水腫とは

肺は本来、血液中へと酸素を送り、また、二酸化炭素を排出させる役割を果たしています。この酸素と二酸化炭素を交換する働きをしているのが、肺の中にある「肺胞」と呼ばれる部分ですが、肺水腫はこの肺胞などに水が溜まってしまい、本来持つ肺の機能が果たせなくなってしまうのです。

肺水腫が引き起こされると、咳が出てきたり、息が荒くなったりと言った症状が現れ始めます。ゼーゼーとした息をしたり、常に呼吸をすることが苦しそうになり、こうした状態が酷くなると、呼吸困難などの症状も見られます。さらには、酸欠状態になっていくため、口腔内にチアノーゼの症状が見られるようになったり、泡状の鼻水が出てきたりもします。吐き気をもよおしたり、ヨダレの量も増えてくるでしょう。

こうして肺が正常に働かなくなってしまい、結果として命を落としてしまう結果を引き起こしてしまうため、肺水腫は、早期に発見・治療を行わければ、最悪の事態にもなりかねない結果を招いてしまいます。

心不全とは

心臓は、体に必要な栄養分や酸素を含んだ血液を全身へ送るポンプのような役割を果たしますが、心臓に障害を抱えたり、老化やストレスなど、何らかが原因で心臓が正常に機能しなくなると、全身に血液を送り込むことができなくなり、体のあらゆる部分で、様々な症状を引き起こすようになることを「心不全」と言います。

心不全の症状は、疲れやすくなる、呼吸が乱れる、寝ている時間が増えるなどから始まり、尿の量が減ったり、食欲の低下、肺に水が溜まる、運動をしなくなるというような症状が現れます。さらに悪化すると、動くことを嫌がったり、呼吸困難やチアノーゼを引き起こし、失神することがあります。こうなると、心臓はいつ止まってもおかしくない状態になります。

心室中隔欠損症の治療について

【外科的治療】
人工的に心室中隔に壁を作り、欠損孔を塞ぐ手術を行います。早期発見によって、早期治療で手術を行えば、健康な犬と変わらない寿命を全うする可能性が高くなります。また、ごく稀に自然に欠損孔が閉鎖することもありますが、基本的に自然治癒することはありませんので、外科手術を行うことが最も有効的な方法になります。

【内科的治療】
何らかが原因で外科手術ができない場合は、薬を使って病気の進行を遅らせたり、症状を緩和することができます。また、すでに心不全を引き起こしている場合も、外科的治療が難しくなるため、血管拡張剤や利尿剤を使って症状を落ち着かせます。

心室中隔欠損症の予防と対策

心室中隔の穴が小さい場合や、外科手術を行わない場合は、心臓に負担がかかるような激しい運動は避けましょう。また、肥満になると心臓に負担がかかりますので、塩分の低い食事を与えるなど、食事管理にも気を付ける必要があります。

心室中隔欠損症は先天性の病気なので、予防することができません。飼い主さんの細やかな健康チェックが、愛犬の早期発見・早期治療に繋がります。愛犬が、生後半年くらいの成長期の割に成長が遅い、子犬なのに疲れやすい、散歩に行きたがらないなどといった症状が現れたら、一度獣医さんに診察してもらうことをお勧めします。

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