目に見えない脅威となる「ウイルス」や「感染症」による病気。人間の世界でも脅威になる病気ですが、猫の世界でも感染症は重大な病気になる場合が多く、注意が必要です。今回は、細菌のひとつ「猫カリシウイルス感染症」について学んでみましょう。

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子猫は特に注意が必要な「猫風邪」

時として猛威を振るう伝染病や感染症。人間の世界でも時折、猛威をふるい多くの方が亡くなったりもしますが、犬や猫の世界でも同じく生命が脅かされる病気のひとつでもあります。

特に抵抗力の低い子猫の時期や、体力も衰え始めている老猫にとって感染症の存在は非常に危険なもので、ウイルスや細菌に対しては細心の注意が必要になります。

猫も人間と同じように風邪をひくことがありますが、猫が風邪をひいた時には「猫風邪」や「猫インフルエンザ」ともよばれます。その猫風邪の代表とも言える病気が、今回紹介する「猫カリシウイルス感染症」と呼ばれる感染症です。

猫風邪と呼ばれる病気には猫カリシウイルス感染症の他にも、「猫ヘルペス感染症」なども有名です。

子猫が死亡してしまうケースも


猫カリシウイルス感染症は、前述の通り「猫のインフルエンザ」とも呼ばれる感染力を持ち、体外での生存期間も約1ヶ月程と言われています。

特に注意が必要なのは、免疫力・抵抗力もまだ乏しい子猫の頃です。ある程度成長し免疫力がつくことで、感染しても軽症状である場合が多いですが、子猫に限らず、成猫に関しても免疫力が下がっている時には注意が必要となります。

一言で伝染病・感染症といっても様々な病気や症状がありますが、いずれの伝染病もワクチンによる予防や、飼育環境を良くし清潔にすることで事前に防ぐことができるものが多いです。

その反面、感染してしまうと非常に危険な状態になり、子猫などが感染してしまうとわずか数日で命を落としてしまう場合もあります。

猫ヘルペス感染症とは

猫風邪と言うと前述の通り「猫カリシウイルス感染症」「猫ヘルペス感染症」の病名が挙げられますが、同じ猫風邪と言われる感染症でも症状はまた別のものとなります。

猫ヘルペス感染症の症状に挙げられるのは「めやに」や「くしゃみ」といった症状で、「結膜炎」や「角膜炎」「鼻炎」といった症状を引き起こします。そのため、猫ヘルペス感染症は別称で「猫ウイルス性鼻気管炎」と呼ばれる場合もあります。

口腔内や鼻腔内、結膜などから出る分泌物には、猫ヘルペス感染症の原因となるウイルス「猫ヘルペスウイルス」が含まれたものが出てきます。

この猫ヘルペスウイルスを含んだ分泌物に非感染の猫が触れたり、咳やくしゃみなどでウイルスが飛沫することで、他の非感染の猫も猫ヘルペス感染症を引き起こしてしまうのです。

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猫カリシウイルス感染症とは

猫ヘルペス感染症の特徴となる症状が結膜炎や角膜炎、鼻炎といった症状なのに対し、「猫カリシウイルス感染症」の特徴的な症状は、口腔内や舌部に発生する炎症です。

猫カリシウイルス感染症を引き起こすと、口腔内に違和感を感じてしまうため、ヨダレを多く垂らしてしまい、また風邪の症状であるくしゃみや鼻水、高熱が出る、食欲の減退といった症状が現れます。

症状が似ていることから、しばしば、猫カリシウイルス感染症は「口内炎」や「舌炎」と診断されてしまうケースも多いようです。

猫カリシウイルス感染症も、猫ヘルペス感染症も同じことがいえますが、免疫力が低い子猫が感染してしまうケースが多く、母猫からの移行抗体が弱まってくる8週齢あたりが、最も危険な時期で、感染リスクが高くなっています。

猫カリシウイルスのキャリアになってしまう


人間も風邪をひくことがありますが、猫が風邪をひく場合も同じです。猫風邪を発症している猫がくしゃみや咳をすることで、唾液中にある猫カリシウイルスが飛沫し、猫カリシウイルス感染症を発症してしまいます。

当然、猫にマスクをするわけにはいきませんので、人間のように未然に防ぐ措置をとることもできずに、猫風邪を発症してしまうのです。

また、後述しますが猫カリシウイルスは完全に死滅させることが難しいため、一度感染すると完治させたと思っても、症状が見られないだけで猫カリシウイルスのキャリアとなってしまいます。

そして何らかのきっかけで免疫力が低下してしまった場合、潜伏していた猫カリシウイルスは再度活発に動き出し、キャリア猫はもちろん、他の猫にも感染を拡大させていくのです。

多頭飼いの場合は一気に感染も加速

猫カリシウイルス感染症を始めとした猫風邪と呼ばれる感染症は、特に多頭飼いをしている家庭では、一気に感染が広まってしまいます。

前述の通り、猫カリシウイルス感染症は一度完治させたとしても、実は猫カリシウイルスは神経細胞へと感染し、症状は表さないものの、一度感染してしまうとキャリア状態となるためです。

10匹の猫がいれば、必ず全員が同じ健康状態、同じ免疫力とは言えません。2〜3匹でも10匹でも、1匹でも猫カリシウイルスに感染し、キャリア状態が疑われるのであれば、高い確率で他の猫も猫カリシウイルスに感染してしまうでしょう。

そのため、同居猫が一度に免疫力が下がってしまうような要因が起きると、猫カリシウイルス感染症の発症も爆発的な勢いで拡がってしまうのです。

猫カリシウイルス感染症の治療法

猫カリシウイルス感染症を直接的に治す薬は存在しません。そのため、口内炎や舌炎などの症状を緩和させるため、発症した症状に対しての対症療法が基本となります。

そして、こうした対症療法を行いながら、クラミジア感染症などの二次感染を防ぐために抗生物質を投与していきます。こうした治療を行い、自然治癒による回復を促し、必要であれば栄養剤の投与等も行われます。

およそ2週間もあれば症状も落ち着き、もとの免疫力に戻す事ができますが、先ほども触れた通り、治療を施した後に猫風邪が完治したと思っても、猫カリシウイルスは体内に潜伏し続けるため、油断はできません。

また、残念ながら一度感染してしまった猫カリシウイルスを死滅させる薬も存在しないため、猫カリシウイルス感染症を未然に防ぐことが、重要になっているのです。

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猫カリシウイルス感染症の予防はワクチン接種で

こうした猫風邪に感染しないためにも、今回取り上げた「猫カリシウイルス感染症」をはじめとした細菌感染を未然に防ぐために有効な「混合ワクチンの接種」が必須となるわけです。

ワクチンでは3種混合や5種混合といった種類がありますが、猫カリシウイルスに対しては3種混合ワクチンに含まれます。感染症に感染しない・させない為には、毎年行われる予防接種が特に重要なほか、飼育環境をよりよくする等の措置が大事なのです。

また、飼い主さん自身も外で他の猫に触れた時や外猫に触れるような機会があれば、しっかりと手洗いなどを行い、自宅にウイルスを持ち込まないように気を付けましょう。このように、感染症への警戒心を常に持つようにして、安全で快適な生活が送れるような飼い方をしてあげるようにしましょう。

猫カリシウイルス感染症を拡大させないために


最近ではあまり見かけなくなりましたが、猫の外飼いは猫風邪を引き起こすようなウイルスや、危険なウイルスに感染するリスクが非常に高くなります。

外飼いで飼育していると、自由気ままに外に行けるため猫にとってはよい生活環境かもしれませんが、本当の意味で猫のためにはなっていないのではないでしょうか。

外ではどんな猫と接触しているかはわかりません。もしかすると外飼いをしている愛猫も既にキャリアになっている可能性も少なくないので、こういった飼い方は病気になるリスクが高いと言えます。

こうした感染症のリスクを最大限に減らすためにも、清潔な環境下での飼育を心がけてほしい事と、どういった経路で感染してしまうかという知識を身につける事が大事です。

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