犬の種類には様々な特徴や性質、気をつけなければいけない事などがあり、犬を飼う上では犬種別に特徴を理解することが必要になります。今回は「甲斐犬」について、飼っている方もこれから飼いたいと思っている方もチェックしてみましょう。

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甲斐犬とは

甲斐犬とは、「日本犬保存会」によって定められた「日本犬標準」に名前が挙がる、「秋田犬」「甲斐犬」「紀州犬」「柴犬」「四国犬」「北海道犬」の6犬種のうちの1犬種で、1934年に天然記念物に指定されています。

虎模様の特徴的な被毛色を持つことから、別名「虎毛犬(とらげいぬ)」とも呼ばれています。また、甲斐犬は、集団意識が強く、他犬種に近づくことがなかったお陰で、今現在も純血が保たれていると考えられています。

甲斐犬は、山梨県(甲斐の国)の南アルプス山岳地帯のような、寒暖の差がある厳しい気候の「山岳犬」や「狩猟犬」として飼育されていた歴史が長いため、かなり頑丈な犬種です。また、甲斐犬は平均寿命も比較的他の犬種よりも長い方で、甲斐犬の最長寿記録は、昭和13年生まれのメスで、28歳7ヶ月という大往生を遂げたとも言われています。

甲斐犬のルーツ


甲斐犬は、古くから山梨県(甲斐の国)の南アルプス山岳地帯で、鹿やイノシシなどを狩る狩猟犬として飼育されていた犬種です。由来は定かではありませんが、縄文時代の遺跡から、甲斐犬と思われる犬の骨が発見されたと言われています。

1929年、甲府市地検に赴任した安達太助によって甲斐犬の存在が発見され、1931年には「甲斐日本犬愛護会」を創立し、1932年に日本犬保存会の初代会である長斉藤弘吉や、獣医師の小林承吉らによって甲斐の国である山梨県付近で、虎毛で立ち耳の地犬を収集調査しました。その後、それらの犬は、発見した地方にちなんで「甲斐犬」と命名され、1934年には天然記念物に指定されました。

甲斐犬の性格

甲斐犬は、日本犬特有の性質を持ち、飼い主さんへの忠誠心が強く、他の人に心を開くことがないことから、「一代一主の犬」と言われています。また、とても知性が高い甲斐犬は、一説では戦争時代に軍犬としての飼育を試みたところ、ジャーマンシェパードの半分の時間で、全ての課程を習得したと伝えられています。

甲斐犬は警戒心が強く、集団意識や防衛本能が高いため、飼い主さんや家族以外の人や動物に対して友好的ではないと言われています。しかし、幼少期から信頼関係を築いた上で、他の人や動物と触れ合う機会を作ってあげると、落ち着いて接することができるようになるでしょう。また、甲斐犬は権力意識が強い犬種なので、徹底した服従訓練が必要になります。

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甲斐犬の大きさ

中型犬の甲斐犬の大きさは、体高がメスで42cm〜48cm、オスが47cm〜53cmです。体重に関しては、オス・メス共に14kg〜18kgほどとなっています。

甲斐犬には「鹿犬型」と「猪犬型」と呼ばれる2つの体型があります。しかし、残念ながら「元来の」猪犬型の甲斐犬はすでに絶滅してしまいました。

猪犬型の甲斐犬の本来の特徴は、「拝み尾」と呼ばれる大きな尻尾でしたが、現存する猪犬型の甲斐犬は、虎毛の雑種犬との交配によって作出された猪犬型の甲斐犬であり、「拝み尾」を持つ猪犬型の甲斐犬は存在しないのです。

そのため、古来からの姿を変えていないのは、鹿犬型の甲斐犬のみとなっており、現存する猪犬型の甲斐犬は、他の犬種の血が加わった甲斐犬となっているのです。

甲斐犬の運動量


甲斐犬は、本来イノシシや鹿を追っかけていた狩猟犬としての資質から、かなりの運動量が必要と言えるでしょう。

1日2回、1回につき1時間程度の散歩は必要となり、散歩以外にも自転車の引き運動などもお勧めです。運動量が少ないと、ストレスが溜まり、吠える、噛む、物を壊すなど、犬特有の問題行動を引き起こすことがありますので注意が必要です。

ペットとして飼育する事も可能な犬種ではありますが、本来は狩猟犬として活躍してきた甲斐犬の運動量を考えると、自宅内だけで飼育できる犬種ではないことがお分かりいただけるかと思います。

とはいえ、散歩の必要がない犬種はほんの一握り。多くの犬は散歩や運動を必ず必要としますので、甲斐犬だけが大変というわけではありません。

甲斐犬の被毛

甲斐犬は、硬くて直毛の「オーバーコート(上毛)」と、柔らかく密生した「「アンダーコート(下毛)」の二層構造の「ダブルコート」という被毛で覆われております。

もともと抜け毛が多い甲斐犬の被毛は、年に二回の換毛期があり、春と秋になると、さらに抜け毛が多くなります。甲斐犬は皮膚病になりやすい犬種なので、こまめにブラッシングをして、常に清潔な体を維持させるようにしましょう。

また、こうした抜け毛を放おっておくと、夏場は特に皮膚病のリスクが高まるだけでなく、熱中症などのリスクも高まります。抜け毛がたまり、皮膚が呼吸できない状態になると熱中症を引き起こす恐れも出てきますので、定期的にブラッシングを行うようにしましょう。

甲斐犬の被毛の色


甲斐犬の被毛のカラーは、「黒虎毛」「赤虎毛」「中虎毛」があります。子犬のうちは単色で生まれますが、成長するにしたがって黒虎毛や赤虎毛、中虎毛に変化します。

この甲斐犬の特徴的な虎模様は、猟犬時代では山林に入った時に保護色となり、自分の身を守るために役立ったと言われています。そんな甲斐犬は「虎毛犬」と呼ばれる犬種でもあります。

しかし、近年は「単色」の甲斐犬は、甲斐犬として公認されない団体が多いようですが、これに関しては甲斐犬の近親交配によるものが要因と考えられています。

甲斐犬の本来の姿を維持するためには、こうした判断も必要になってくるのかもしれません。また、近親交配による交配は毛色だけでなく、様々なリスクも伴うものなので、種の保存のためには、しっかりとした交配や、血統の維持が大切になってきます。

甲斐犬がかかりやすい病気

甲斐犬は、本来集団意識が強く、他の動物を寄せ付けないということや、猟犬としての性質を上げるために近親交配を避け、慎重に交配が行われてきたということから、比較的遺伝性の疾患が少ない犬種と言われていますが、日本犬に多い皮膚病には気を付けた方が良いでしょう。

【アトピー性皮膚炎】
アトピー性皮膚炎とは、アレルギーの原因であるアレルゲンが、何らかの要因で体内に入ることで、皮膚のバリア機能を低下させ、皮膚炎を引き起こす病気です。
アトピー性皮膚炎は一度発症すると完治が難しく、一生付き合わなければならない事がほとんどです。

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甲斐犬のブリーダー

甲斐犬はペットショップで見かける機会のない犬種の一つです。というのも、甲斐犬はペットショップ向きの犬種ではないということが理由の一つでしょう。

甲斐犬は前述の通り、飼い主に対して絶対な信頼を置く犬種ではありますが、そのためにはしっかりとした服従訓練を行わなければなりません。初めて犬を飼うという方も多く訪れるペットショップでは、こうした躾の仕方も難しいため、甲斐犬を迎え入れる際にはブリーダーからの直販という形が一般的となりそうです。

なお、甲斐犬の相場としては、おおよそ12万円ほど。高くとも20万円を越えることは稀でしょう。ただし、月齢によっても価格の上下はありますので、あくまでも参考価格として考えておきましょう。

甲斐犬に関しては生体代金のほか、しつけ教室に通うことも視野に入れ、予算を考えておくのがポイントとなります。

甲斐犬愛護会

天然記念物としても指定されている甲斐犬。そんな甲斐犬ですが、日本全国に愛好家も多い犬種で、甲斐犬の愛護会も存在しています。

「甲斐犬源友会」や「甲斐犬愛護会展覧会」がそれにあたりますが、こうした愛護会から甲斐犬を迎え入れるのも良い選択でしょう。何よりも、甲斐犬独特の気質をしっかりと理解されている愛護会の方々から迎え入れることができるため、色々な相談や困った場合の対処法など、多くのメリットもあります。

甲斐犬を飼育している方も少ないため、相談相手もなかなか見つけにくい犬種ではありますので、こうした甲斐犬を飼育している方とのパイプは安心感も違います。

また、ちょっと甲斐犬を飼育しようか迷っているという方は、甲斐犬愛護会展覧会が、4月と10月の年に2回、甲斐犬の展覧会を開催していますので、実際に甲斐犬を見て、色々な相談にものってもらうのもよいかもしれません。

甲斐犬と暮らすために

虎毛は特に格好の良い毛色ですので、安易に虎毛の犬が欲しいといった衝動で甲斐犬を迎え入れると、大変なことになるでしょう。ペットとしては飼育できますが、それなりの躾や訓練が必要だということをしっかりと理解した上で、甲斐犬を迎え入れましょう。

とはいえ、甲斐犬はワイルドな見た目とは違って、飼い主さんにしか見せない甘えん坊な一面も持っているんですよ。また、猟犬としての資質から、並外れた脚力や持久力を持ち合わせており、どんな山道でも軽々と登り降りできますので、家族みんなで登山やハイキングに連れて行ってあげるのも良いですね。

甲斐犬は説明してきたように、古くからの歴史を持つ日本を代表する犬種です。飼い主さんもこうした自覚を持ちながら飼育するようにし、種を守るために自慢の甲斐犬を大切に飼育するようにしましょう。

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