今もなお続いている紛争や、一般市民を巻き込む戦場の跡。そこには「地雷」が埋め込まれており、この地雷を捜索するために、優れた能力を持つ「地雷探知犬」の存在が欠かせない現状となっています。地雷探知犬の仕事や内容について見てみましょう。

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優れた能力をもつ地雷探知犬の嗅覚

犬が人とともに働く仕事には様々なものがありますが、中には命にかかわるような、非常に危険な仕事も存在します。軍用犬等がそれにあたりますが、今回取り上げる「地雷探知犬」も非常に危険の伴う、まさに命がけの仕事となります。

ご存知の通り、犬の嗅覚は人間よりも優れており、人間の数百倍〜もの嗅覚を持ち、刺激臭であれば人間の1億倍もの嗅覚で感知することができます。こうした能力を使った犬の仕事には地雷探知犬の他にも、捜査・追跡と言った仕事や、一見すると似ているような「爆発物探知犬」という仕事が存在します。

「地雷探知犬」と「爆発物探知犬」について

同じく「爆発物」を発見するために訓練される地雷探知犬と爆発物探知犬。探すものは同じようであっても、この2つの仕事は似て非なるものです。2つの仕事に共通する「爆発物を発見する」ための訓練では、「爆発物マーカー」と呼ばれる物質を嗅ぎ分ける訓練が行われ、爆薬に混入している爆発物マーカーの臭いを頼りに爆薬を発見します。

この爆発物マーカーとは爆薬の製造時に、定められた物質を爆薬に混入させることを条約で定めたもので、混入させる事で探知機などによって探知しやすくするためのものです。探知機と同様、探知犬もこの爆発物マーカーの臭いを頼りに爆発物を発見しているのです。

そして、両者が大きく異なるのは、出動する仕事先です。爆発物探知犬は、車両や荷物など「特定の場所」からの捜索が基本となりますが、地雷探知犬が捜索する場所は「不特定多数の場所の地面」からの捜索が基本となります。また、活動地域も戦闘エリアとなっていた(なっている)極寒の地や、灼熱の地での捜索活動となるのです。

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探知機では捜索できない地雷の存在

探知機があるのだから、犬を使わなくてもと思うかもしれませんが、探知機だけでは捜索できない爆発物も存在します。その理由には地雷だけではなく、「I.E.D」と呼ばれる手製地雷も存在しているためです。この手製地雷に関しては、探知機で探知できる鉄の成分が使用されておらず、犬の嗅覚で火薬の臭いを感知して捜索するほか、今の技術ではできないためです。

地雷は他の兵器に比べると殺傷能力が低い代わりに、非常に安価な兵器であるため、第2次世界大戦時では3億個もの地雷が使用されていたそうです。また、被害を受けた兵士を看病するために、戦場に赴く人員が減るといった理由や、地雷原での生活を困難にさせるため、地雷は多くの戦地で多用されてきました。

不発弾も含めたこうした地雷は、特に被害が深刻なカンボジアだけでも400〜600万個も残されたままになっており、約19,000人もの人が地雷や不発弾によって命を落とし、約47,000人は手や足を失うと言った被害をうけているのです。また、こうして犠牲になるのは、一般市民がほとんどという現状です。

カンボジアを含め、世界全体でも8,000万個〜1億個の地雷が残されたままになっていると言われており、1年に撤去される地雷の数は約10万個であると言われています。このペースでいくと、地雷が無くなるのは1000年以上かかる計算に。そして、今もなお続く戦地では、新たな地雷が埋められているのです。

地雷探知犬と共に行動するハンドラー

このように、もはや犬の力を借りなければ地雷を捜索することは困難になっているため、世界的に見ても地雷探知犬の存在は、非常に重要なものとなっているのです。そして、実際に地雷を捜索する時には、地中に染み出た火薬の臭いや鉄の臭いを嗅ぎ分けて捜索していますが、必ず地雷探知犬と行動を共にするハンドラーの存在も欠かせません。

ハンドラーは地雷探知犬と共に地雷原を歩き、捜索しています。地雷探知機で捜索を行っていても、小さな鉄くずや釘などでも探知機は反応してしまう反面、地雷探知犬の探査率は98%にも及びます。ハンドラーは地雷探知犬と固い絆で結ばれており、地雷探知犬の能力を信頼しているからこそ、こうして地雷原を歩くことが出来るのです。

しかし、中には不幸な結果となる事も。地雷探知犬の死亡率は3〜4%と言われています。これは、地雷探知機を使用して捜索している人間が死亡する率よりも低いものですが、いくら探知率が高いとは言え、犠牲になってしまう地雷探知犬とハンドラーは存在するのです。

まとめ

地雷探知犬は約1年半に及ぶ厳しい訓練を経ても、実際に地雷探知犬として活躍できるのはその内の85%。日本国内では80頭の地雷探知犬がおり、カンボジアで活躍しています。こうした訓練にもお金はかかり、さらには現地に派遣するお金や、派遣先での衣食住にもお金がかかるため、コスト的には高くつくのも地雷探知犬です。

しかし、こうして命がけで一般市民の命を守る活動をこなし、またハンドラーも同じく危険な環境で作業を行っているという現状を、一人でも多くの人に知ってもらう事も大事な事です。まだまだ地雷が無くなるという事はありませんが、地雷探知犬の支援や寄付を募っている団体もありますので、地雷探知犬を応援したい!という方はぜひ支援に参加してみてください。

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